西菱電機がIoTデバイスにソーラーパネルシステム導入|農業IoTの活用と普及を促進

IT及びIoT事業を手がける三菱グループの西菱電機株式会社は2019年7月31日より、同社の提供するIoTセンサーデバイス「IoTボックス」を、ソーラーパネルシステムに対応させると発表した。電源を必要としないため、設置場所の判断などが難しいIoT活用への課題解決につながる見込みだ。




IoTの汎用性を高めるソーラーパネルシステム

「Seiryo Business Platform」は、同社が提供するIoTサービスとコミュニケーションツールを統合した、業務用アプリケーションプラットフォームだ。同システムを活用したデータの計測または自動化により、業務の数値化や手間の多い作業の効率化を図り、顧客の現場改善と生産性向上を支援する。

具体的には、圃場環境及び社内の屋内環境、産業機械の稼働状況などを可視化するIoTサービスや、日報・業務報告アプリの「Check-in」、IPトランシーバーアプリ「Transceiver」、インカムアプリ「Incom+」などのコミュニケーションサービスから成り立っている。

同社は、これらのプラットフォームに接続して利用できるIoTセンサーデバイス「IoTボックス」が、2019年7月31日よりソーラーパネルシステ厶に対応することを発表。

loTボックスとは、標準センサーである温湿度計センサーと通信機能を備えたデバイスのことで、取替式土壌センサー・CO2センサー・照度センサーなどの農業用センサーがオプションとして含まれている。

IoTボックスには用途と環境に応じて、無線通信方式が異なる3つのモデルがある。WiFiを使用するモデルと、携帯電話と同じ移動体通信の3Gを使用するモデル、そのほかIoTに最適だと評されているLPWA(省電力広域ネットワーク)規格のLoRaWANを使用するモデルの3種類だ。

もともとIoTボックスと土壌センサーは分離型であるため、圃場に設けた複数地点にセンサーを取り付けるなど、用途に応じた柔軟な設置ができることが利点だ。これにより、例えばハウス内の地上温度や土壌湿度を計測し、いくつかに及ぶ環境データの数値化を行うことで、現場対応の判断がつきやすくなる。

その上、IoTボックスにソーラーパネルシステムを搭載することで、屋外における電源を介さないインターネット接続ができるようになった。設置場所の制限がなくなるため、IoTの利用を諦めていたような状況下でも、温度、湿度、土壌温度、土壌湿度、CO2などの環境データの収集が可能となる。

IoTソリューションの一つの鍵として

IoTの本格的な活用に際しては、具体的に以下のようなIoTデバイスが持つ課題への解決策が求められている。

  • 商業施設や工場敷地内などの民間施設において、アナログで計測・記録していた日ごとのデータを自動収集する
  • 職員が現地に出向かうことなく、ダムや河川、山間部などの公共設備周辺のデータを自動的に収集する
  • 果樹園、ハウス栽培などの屋外や電源供給がない作業現場で環境データを収集する
  • 農作物の成長に合わせて、IoTセンサーデバイスの設置場所を変更する
  • メンテナンスに手間がかからない機器の導入

これらの項目に対し、同社が開発したソーラーパネルシステム対応のIoTボックスは、屋外などの電源供給がない場所でも利用できる上に、設置場所の判断や変更が容易となる。また、バッテリーが内蔵式であるため交換の必要がなく、機器のメンテナンスがしやすいことも大きな特長だ。

今後は、IoTの本格的な普及や発展を迎える一方で、いまだ数多くの課題が取り残されている現状において、同社提供のサービスがIoTソリューションを担う一端として、今まさに花開く時を迎えようとしている。


<参考URL>
西菱電機株式会社
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
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    北島芙有子
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    川島礼二郎
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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