12秒でアスパラガスを収穫「inaho自動野菜収穫ロボット」がRaaSモデルを展開

自動野菜収穫ロボットを開発するinaho株式会社は、RaaSを活用した従量課金型のサービスを開始した。



inaho株式会社×RaaS(ロボティクス・アズ・ア・サービス)


inaho株式会社は、自動野菜収穫ロボットの開発を軸とした農業のプラットフォームを展開するベンチャー企業だ。

同社は、野菜の収穫作業など人の判断が必要な農作業のAI化やロボティクス化を進めており、人手不足や農業経営の課題など農業に関するさまざまな問題を解決することを目指している。

同社の自動野菜収穫ロボットは、2019年10月9日に千葉県幕張メッセで開催された「次世代農業EXPO」にも展示され、来場した多くの農業関係者から注目を集めた。

RaaSとは、ロボティクス・アズ・ア・サービス(Robotics as a Service)の略で、ロボットの機能を制御するソフトウェアをクラウド経由で提供するビジネスモデルを指す。自動野菜収穫ロボットへのRaaSモデルの活用は、同社のサービスが国内では初となる。

inahoの自動野菜収穫ロボット


同社の自動野菜収穫ロボットは、野菜の収穫作業に必要な一連の動作がすべて自動で行われる。

設定ルートの自動走行やビニールハウス間の移動のほか、AIによる収穫適期の判別などが可能だ。

操作はスマートフォンから行われ、ロボットアームが作物を傷つけることなく優しく収納。カゴがいっぱいになると利用者に通知される仕組みとなっている。
全長は125cmで重さは約65kg、1回2時間の充電で最大6時間の連続使用ができる。充電は家庭用のコンセントから行い、収穫1本当たりの所要時間は約12秒という。

初期費用やメンテナンス費用はすべて無料で、市場の取引価格から算出した収穫量の一部を利用料としてinahoに支払う仕組みだ。


RaaSを活用したサービスは、高額な初期費用を必要とされる自動野菜収穫ロボットを安価に利用できるメリットのほか、データ収集による生産性の向上など農業経営の最適化にも期待されている。

現在の対応作物はアスパラガスのみだが、今後はトマトやイチゴ、キュウリなど、人の目による判断が必要な選択収穫野菜にも広く対応していく予定だ。

国内外の課題解決を目指し


農林水産省の農業構造動態調査報告書によると、2010年には205万人いたとされる基幹的農業従業者数だが、2020年には152万人まで減少し、さらに2030年には100万人台まで減少するとされている。さらに、同省の「農林業センサス」によれば、施設園芸の農家数、面積も過去15年で約25%の減少がみられ、1戸当たりの規模拡大も進んでいないのが現状だという。

農業労働力に関する統計では、現在の農業就業人口及び基幹的農業従事者の平均年齢は約67歳で、2017年に行われた農業構造動態調査では、農業従事者年齢構成比率における49歳以下の割合がわずか約10%という数字に留まった。

今後同社では、人手不足など日本農業が抱えるさまざまな課題の解決を目指し、九州を中心に国内拠点の充足化を図る考えで、世界的な農業課題への挑戦も表明しており、2020年にはオランダに拠点を開設しグローバルな展開も目指したいとしている。

<参考リンク>
inaho株式会社
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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