サステナブルフードとは? 大豆ミートや認証コーヒーなど業界別に紹介

近年見聞きすることの多くなったサステナブルという言葉。持続可能な社会に向けた取り組みの重要性が世界的に高まってきている中で、農業や食品産業にもそれが求められさまざまな動きが見られるようになってきています。

そこで今回は持続可能な食品、つまり「サステナブルフード」とはどういったものなのか、業界が抱える課題とそれらを解決するための取り組みを紹介します。


食品産業が抱える問題


食品産業で起こっている代表的な問題として、フードロス問題が挙げられます。年間に廃棄されている食品は日本国内だけで600万トンと言われていて、それらは食べられる状態であるのに捨てられてしまっているというのが現状です。食品の生産時はもちろん、捨ててしまえば焼却時にも二酸化炭素などの温室効果ガスを排出することになるため、エネルギーの無駄遣いになるだけでなく、地球温暖化を引き起こす原因のひとつにもなります。

食品産業が抱える問題はフードロスだけではありません。現在日本では少子高齢化が問題視されている一方で、世界的に見るとまだまだ人口増加が止まる気配はなく2050年には90億人を超えるとも言われています。今後も食糧やエネルギーの需要は増大していく見込みの中、気候変動による農作物の生産可能地域の変化や異常気象による大規模な不作等、このままでは食糧の安定供給が難しくなるということも考えられます。

また、生産者の労働環境や貧困問題等、自然資源に対してだけでなく食品産業に関わる人々に対しての配慮が不可欠になってきています。

サステナブルフードの取り組み例


食品産業と言っても生産している物によって課題は様々です。それぞれの業界で抱えている問題点と解決に導くサステナブルフードを紹介します。

コーヒー業界「認証コーヒー」


コーヒーは嗜好品として世界中で親しまれていますが、生産や流通過程においていくつもの問題と直面している作物でもあります。


コーヒーノキは元々熱帯雨林の日陰で育つ植物でしたが、1960年代以降から日向での栽培に適した品種が開発され、広大な土地でのプランテーション栽培が可能になることでコーヒー栽培が拡大していきました。それにより森林伐採が加速し、熱帯雨林の減少に伴う生態系破壊の原因のひとつとなっているだけでなく、単一栽培を同じ土地で繰り返し行うことで土壌が枯渇したり、病害虫発生のリスクも高まるためその土地でのコーヒー栽培が困難になることも。

コーヒー問題を語るうえでもうひとつ欠かせないのが流通過程における中間業者の多さです。生産者に支払われる金額は消費者が支払った代金の1%とも言われ、残り99%は加工業者や小売業者などに支払われています。また、コーヒーの生産地域のほとんどが発展途上国であり、児童労働や劣悪な環境での労働など人権が無視され生産者が非常に厳しい生活をしているという現状があります。

こうした問題を改善するため、さまざまな認証機関や団体による認証コーヒーの開発が行われ、コンビニやコーヒーチェーンなどでも見かけるようになってきています。

コーヒーにかかわる代表的な認証制度
・レインフォレスト・アライアンス(森林破壊防止・再森林化の促進)
・国際フェアトレード認証(生産者や労働者の生活改善・自立の支援)
・バードフレンドリーコーヒー認証(生産者支援・森林伐採防止による渡り鳥の保護)
・グッドインサイド認証(社会や環境に対し責任を持った生産の促進)
・コンサベーションコーヒー(自然環境の保全・生物多様性ホットスポットにおける住民の生活支援)
これらの制度の認証基準はそれぞれ異なりますが、コーヒーの生産地の森林破壊の防止、再森林化の促進、生態系保全など環境改善のほか、最低価格の補償を掲げるなど、生産者や労働者の生活改善にも繋がります。

畜産業「代替肉」


環境問題への意識の高まりと共に畜産業が環境に与える影響が問題視されるようになりました。主に家畜の排泄物の処理方法が適切でないために発生するメタンや一酸化二窒素の排出、家畜の消化管内発酵いわゆるゲップ由来のメタンが原因とされています。

2018年度に排出された農林水産業全体(5001万トン)での温室効果ガスのうち、1/3弱(約1370万トン)が畜産業由来となっていて、地球温暖化の原因になるだけでなく、硝酸性窒素による地下水汚濁やクリプトスポリジウムという原虫による水道水源の汚染など人の健康への影響が懸念されるようになってきました。

家畜の排泄物は環境問題の原因となる一方で、肥料や土壌改良としての価値が大きく、堆肥の利用拡大やエネルギーとして活用していくことが推進されています。また、排泄物からの温室効果ガスを低減させるアミノ酸バランス改善飼料の給餌をはじめ、抑制技術の研究開発も行われています。


最近では欧米を中心に環境問題や健康志向、動物愛護の観点からビーガンやベジタリアンなど肉食を控える動きも高まっており、マクドナルドなどの大手外食チェーンも代替肉の使用を開始しました。アメリカではエンドウ豆のタンパク質を主原料に作られる「ビヨンド・ミート」が広がりを見せていて、代替肉企業初の上場・黒字化を達成。

一方日本でも植物を主原料とした代替肉はいくつかあり、大豆をはじめ小麦やエンドウ豆を使用したものが流通しています。プラントベースミートやオルタナティブミートとも呼ばれ、大豆から作られたものを「大豆ミート」、小麦から作られたものは「グルテンミート」として販売されているのが一般的です。これらは動物性たんぱく質が一切含まれていない菜食主義者に対応しているものや、動物性油脂などを添加した一般消費者向けの2種類があります。

その中でも日本においては大豆を加工して作る大豆ミートに注目が集まっています。マクロビオティック食品を販売するオーサワジャパン株式会社が大豆ミートの老舗企業として知られていますが、2015年にはマルコメ株式会社が「ダイズラボ・シリーズ」の販売を開始。2019年以降には大塚食品株式会社や日本ハム株式会社などさまざまな企業から大豆を使用した代替肉が販売されています。日本ではアメリカほど需要の拡大は見られていないものの、肉食以外の選択肢がまだまだ少ないため、ビーガンやハラールなどへの対応という意味でも今後広がっていく可能性はあるのではないでしょうか。

途上国などを中心とした世界的な人口増加における代替タンパク質という点でも大豆ミートなどの代替肉は有効であると考えられます。また、家畜よりも環境負荷の少ないコオロギなどを活用した昆虫食への関心も高まってきています。

水産業「サステナブル・シーフード」


健康志向の高まりや世界的な人口増加により水産物の消費量は年々増加し、今後さらに増えていくと予想されている一方で、水産資源は減少し世界の漁業生産量が頭打ち状態となっています。これは過剰に漁獲を行う乱獲が主な原因とされていて、漁獲量の適切な管理が必要です。

この問題を解決するための手段として養殖が注目され、現在最も利用されている食糧生産システムとも言われていますが、養殖魚の需要が高まるにつれ、養殖場建設による自然破壊、水質汚染、エサとなる天然生物の過剰利用などさまざまな問題が生じています。


漁業を持続可能なものにするため、1997年にイギリスのロンドンにて国際NPOが誕生し、MSC認証制度が設立されました。これは天然水産物の漁獲から消費者の手に渡るまでを管理し、適切な漁獲量であるか、毒物や爆弾を利用した破壊的な漁業を行っていないかなどの基準に基づいた認証制度です。

また、天然水産物だけでなく養殖水産物を対象にしたASC認証という制度も存在しており、生物多様性や生態系保全、適切な労働環境であるかなど、環境や社会に与える影響を軽減することを目的としています。

これらの「MSC認証」や「ASC認証」を取得した水産物を「サステナブル・シーフード」と言います。

食品産業全体「フードバンク」


冒頭で述べたように、これは食品産業全体に言える問題ですが、世界で13億トンの食べられる食品が捨てられているという現状です。フードロス問題は地球温暖化の原因のひとつともされていて、2019年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した「土地関係特別報告書」では、フードロスや廃棄物の削減等の食糧システム政策により、温室効果ガスの排出を抑える可能性が高いことが示されています。

捨てられてしまう食品の中にはパッケージの印字ミスや、賞味期限が近いなど問題なく食べることのできる食品がたくさん存在しています。これらを活用するため通常販売が困難な食品を回収し、福祉施設などで無償配布するフードバンクという取り組みが行われています。

また、農産物や水産物などの規格外品や、新型コロナウィルスの影響により余ってしまった食材を活用し、レストランで提供したり加工品にするなど、廃棄食品のアップサイクル化を行う動きも活発になってきています。


最近ではエシカル消費といって、購入する製品が社会や環境に対して配慮されているかを重視した購買行動が見られるようになってきました。これからは生産者や企業が利益の余剰部分で行う慈善活動ではなく、本業における社会貢献が求められる時代です。

持続可能な社会を築くためにどのような製品やサービスが必要であるか、今回紹介したサステナブルフードを参考に検討してみてください。


農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-180.pdf
農林水産省「畜産環境をめぐる情勢」
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/pdf/210325kmegji.pdf
農林水産省「2.調査結果(2.1代替肉)」
https://www.maff.go.jp/j/jas/attach/pdf/yosan-27.pdf
MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)
https://www.msc.org/jp/
ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)
https://www.asc-aqua.org/ja/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 田中克樹
    田中克樹(たなかかつき)。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  3. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
  4. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  5. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
AI・IOTでDXを推進する企画・セールス・エンジニア大募集