低炭素農業とは? 日本の取り組みや世界規模の活動「4パーミルイニシアチブ」を紹介

2021年8月9日、気候変動に関する国際的な専門家たちで構成されるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による最新の報告書が発表されました。その報告書では人々の活動によって地球の平均気温が上昇していることが断定され、今後0.5度単位の気温上昇に応じて異常気象などによる影響が激化するということが示されています。

温室効果ガスの排出を削減し気温上昇を抑えることが急務となっている中、二酸化炭素の排出を抑えた低炭素農業が注目されています。

そこで今回は、低炭素農業とは一体どういったものなのか、また日本で行われている取り組みを紹介します。


農業分野の温室効果ガス排出状況

 
日本の温室効果ガス排出量のうち農業分野で排出されている二酸化炭素の量は約0.4%とそれほど多くはないですが、メタンでは約76%、一酸化二窒素では約45%を農業が占めていることがわかっています。

メタンは畜産における家畜のゲップや稲作、一酸化二窒素は畜産における家畜の排泄物や農地土壌・施肥管理などが主な発生源となっていることから、日本でも地球温暖化の緩和策としてさまざまな取り組みが行われています。

日本で行われている低炭素農業とは?

 
平均気温の上昇による果樹の品質低下など、農業ではすでに気候変動の影響が出始めていると考えられています。農業は特に影響を受けやすい分野であるため、気候変動への適応とともに農業の低炭素化が推進されています。

ここでは低炭素農業を実現するために日本が行っている3つの取り組みを紹介します。

堆肥の施用や中干し期間の延長


中干し期間の延長や、収穫後の稲わらを畑へのすき込みから堆肥へ転換することで水田由来のメタンの排出削減に有効です。

中干しとは、生育のために水田の水を一時的に抜く管理方法のことで通常は7~10日間行いますが、さらに1週間延長することによりメタンの発生が3割程度抑えられます。

アミノ酸バランス改善飼料の普及


畜産の温室効果ガス排出削減対策では、家畜に与える飼料をアミノ酸バランス改善飼料にすることで一酸化二窒素の削減になるということがわかっています。

農地土壌炭素吸収源対策


堆肥などの有機物を施用することで土壌中に炭素を貯留し地球温暖化に貢献できることから、日本では環境保全型農業の活動のひとつとして推進されています。

国際的な取り組み「4パーミルイニシアチブ」



二酸化炭素の濃度を低減することで、地球温暖化の抑制につながる「4パーミルイニシアチブ(4/1000イニシアチブ)」という取り組みも世界規模で広がっています。

4パーミルイニシアチブとは、2015年に行われた気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の際にフランス政府主導で始まり、「もしも全世界の土壌中に存在する炭素の量を毎年4パーミル(4/1000)ずつ増やすことができたら、大気CO2の増加量をゼロに抑えることができる」という計算に基づき、土壌への炭素貯留を増やす活動を推進しようとする国際的な取り組みのことを言います。

2020年12月現在では日本を含む566の国と国際機関が参加し、日本の地方自治体では山梨県が初めての4パーミルイニシアチブに取り組む県となっています。

山梨県での取り組み


山梨県では全国に先駆けて推進している4パーミルイニシアチブの取り組みとして、堆肥や省耕起など従来からある土壌炭素貯留の方法に加えて、山梨県の主要農作物である果樹栽培の際に発生する選定枝を炭化させたものを土壌に貯留することや、草生栽培による炭素の蓄積に着目し研究や現地実証を行っています。

炭はほとんど分解せず、炭素を閉じ込めておくことができるため、炭化することで大気への二酸化炭素放出を防ぐことができます。さらに土壌への炭素貯留は、地球温暖化の抑制だけでなく、農地の質を高め、持続的な食糧生産にもつながると考えられています。

実践圃場で生産された農産物には、山梨県が新たに制定した「やまなし4パーミルイニシアチブ農産物等認証制度」の基準をクリアすることでロゴマークが付与されます。環境に配慮した農産物としてブランド化し、付加価値を向上させ、山梨県内に広く導入していくことを目指しています。


今回は低炭素社会を実現するために農業分野で行われている取り組みを紹介しました。

昨今の猛暑や豪雨などで異常気象を実際に体感し始めている方も多いと思いますが、私たちの活動が地球環境に影響を与えていることを改めて認識し、農業においてもあらゆる可能性を模索していくことが重要です。

今後の持続的な食糧生産のためにも農業の低炭素化への取り組みに注目していきたいと思います。


農林水産省「農林業における気候変動の影響と低炭素化の取組について」
https://www.jst.go.jp/lcs/sympo20171212/item/20171212shiryo_bessho.pdf
WWF JAPAN「最新の地球温暖化の科学の報告書:IPCC第6次評価報告書 「自然科学的根拠(第1作業部会)」発表」
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4685.html
山梨県「山梨県における4パーミルイニシアチブの取り組み」
https://www.pref.yamanashi.jp/nou-han/documents/4pergaiyou.pdf

農研機構「土壌への炭素貯留で世界を救う~4/1000イニシアチブ」
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/no112_4.pdf
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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