アメリカでも購入できる日本米(短粒種)を食べ比べてみました【海外コラム・よないつかさのシカゴ 食&農レポート 第2回】

こんにちは。アメリカ(シカゴ)在住のよないつかさです。

前回は、アメリカのインフレと日本食についてお話ししましたが、今回は、アメリカで購入できる日本米(本記事では短粒種の日本の品種を「日本米」と呼びます)について深堀りしていきたいと思います。

シカゴで実感したアメリカのインフレと日本食【海外コラム・よないつかさのシカゴ 食&農レポート】


前回もお話ししたように、アメリカでもたくさんの種類のお米が手に入ります。大きく分けて3種類のお米が販売されています。

  • 長粒種(バスマティライス・ジャスミンライスなどのインディカ米)
  • 中粒種(アルボリオ米・カルローズ米など)
  • 短粒種(日本米など)

日本人は、口に合い食べ慣れている日本米(短粒種)でさまざまな料理を作ることが多いと思いますが、アメリカでは料理によってお米を使い分けているように感じます。

例えば長粒種は、炊きあがりもパラパラしていて軽い食感のため、ピラフやジャンバラヤなどに使われます。中粒種は、しっとりと少し柔らかいですが歯ごたえがあるため、リゾットやパエリアなど。そして短粒種は、いわゆる日本米であり、もっちり柔らかく粘り気があるため、寿司などに使われます。

このように、アメリカでは料理によって使うお米が変わり、身近な料理に合うお米の需要が高くなっています。


アメリカにおける米のシェア


アメリカで最も生産されているお米は、長粒種です。お米生産量全体の75%を占めています。続いて中粒種は24%、日本米と言われる短粒種は残りのわずか1%です(※1)。日本では生産量のほとんどを短粒種が占めていますから、ここでも気候や土地、そして文化の違いを感じます。

また、アメリカが輸入しているお米は、タイやインドからの長粒種が大きな割合を占めています(※1)。ここからも、アメリカにおける長粒種の需要がうかがえますね。

個人的なイメージとしては、いわゆる日本米(短粒種)は日本料理店や駐在日本人、富裕層のアメリカ人が食べているイメージがあります。これは、一般的に売られている長粒種に比べて、日本米(短粒種)の値段が高いことも理由の1つに挙げられます。


アメリカにおける日本米(短粒種)が高額な理由


私の住むシカゴ南部ではアジア人が少ないためか、普通のスーパーでは日本米(短粒種)は販売されていませんが、アジアンスーパーなどに行くと何種類か販売されています。

日本米の平均価格はだいたい約2kgで2720円(20ドル。1ドル=136円換算。以下同)です。安価に購入できる長粒種の白米は約2kgで488円(3.5ドル)ですから、一般的なお米(長粒種)に比べて日本米(短粒種)は約5倍以上値段が高いことになります。

一方、日本で一般的なお米を購入するとき、2kgで2720円を超えていることはあまりないと思います。だいたい5kgで3000円程度だったと記憶しています。


アメリカで購入できる日本米(5種類)を食べ比べてみた


ここまでアメリカにおけるお米事情を調べてみましたが、私自身はやはり日本の米を食べたい。そこで今回は、そんなアメリカで購入できる日本米(短粒種)について食べ比べをしていきたいと思います。


今回食べ比べをしたのは、

  • ななつぼし(日本産 ひとめぼれ品種×国宝ローズ品種×あきほ品種)
  • 田牧米(アメリカ産 こしひかり品種)
  • 玉錦(アメリカ産 こしひかり品種+夢ごこち品種)
  • こしひかり(アメリカ産 こしひかり品種)
  • 雪花(アメリカ産 中粒種)

の5種類になります。すべてAmazon USAで購入しました。

評価項目は「外観・香り・味・粘り・硬さ」「総合評価」の6つになり、評価は星1~3つの3段階とし、ランキング形式にさせていただきました。評価については私の主観が入っておりますので、その点はご理解いただければと思います。


お米食べ比べ評価



1位 田牧米



最も高く評価したお米は、「SMART AGRI」でもご執筆されている田牧一郎さんがオリジナルブランドを創設し、世界でも展開されている「田牧米」です。値段は約2kgで3339円(24.55ドル)でした。


値段は少しお高めですが、噛むとお米の甘みと味を強く感じることができて、香りもよいです。他の短粒種と比べてお米の味そのものをしっかり感じることができました。

アメリカでもお米にこだわる人は、こちらの田牧米を食べている印象です。炊いた後は粒が立ちツヤがあります。


2位 こしひかり



続いて、こちらはカリフォルニア州サクラメントで収穫された「こしひかり」です。約2kgで2920円(21.47ドル)と、田牧米に比べると安価ですが、日本でこしひかりを購入するより、うんと高い印象です。


味・香り・硬さなどすべてのバランスが良く、日本のこしひかりと遜色ないように感じました。お米の存在感が強く、慣れ親しんだ味そのものです。


3位 ななつぼし



続いて、「ななつぼし」です。こちらは日本産の日本米であり、アイリスオーヤマが15℃以下の低温工場で保管・精米・包装を行い輸出したもの。新鮮小袋パックに2合ずつ入っており、美味しさは1年間持つそうです。

約1.5kgで2447円(17.99ドル)でした。


炊いた時の香りが一番良かったのはこの「ななつぼし」でした。硬すぎず粘りが強くない、食感がちょうど中間くらいのバランスの良いお米です。

「田牧米」や2位の「こしひかり」と比べると味の濃さは劣りましたが、その分どんな料理にも合うと感じました。


4位 玉錦



4位はカリフォルニア州サクラメントで収穫された「玉錦」です。アメリカではよく見かける短粒種で、約2kgで2182円(15.99ドル)と、今回購入したお米の中では最安値でした。


炊きあがりは粘りが強く、柔らかいです。好みが分かれるお米だと感じました。私は硬めのお米が好きなので今回4位となりましたが、柔らかめが好きな方にとっては上位にランクインすると思います。

粘り気が強いので海苔巻きやおにぎりに合うと感じました。


5位 雪花



最後は、唯一の中粒種である「雪花」です。こちらは、アジアンスーパーでもよく見かける、今回食べ比べをした5種類の中で最も身近で一般的なお米です。

約2kgで2719円(19.99ドル)と、値段は他の短粒種とほとんど変わりませんでした。


中粒種の名の通り、他の短粒種に比べて粒が大きいのが特徴です。噛み応えは良いですが、味は薄く香りも弱いです。日本米に慣れ親しんだ私には物足りなく感じました。


日本米の海外需要を高めるためには


今回紹介したような、日本で食べるお米と遜色ない日本米(短粒種)があるにも関わらず、アメリカにおいてはそこまで需要が高くないことに改めて文化の違いを感じました。

日本人の私はアメリカでこのような日本米(短粒種)を食べられることをうれしく思いますが、これは日本人として日本米の料理の仕方や可能性を知っているからだと思います。

日本産の日本米の美味しさはすでにK点を超えていて、どの国の人が食べても「美味しい」と言わせるほどの素晴らしいものです。それでも日本産の日本米および短粒種が一般化しない原因として、主食がパンという文化もさることながら、日本米の調理の仕方をワンパターンしか知らないことが一因としてあると感じました。

例えば、寿司や日本料理の他に、日本米の独特の粘り気や甘味を使った料理を流行らせることができたら、日本米需要は自ずと高まるのでは? とも考えたりしますが、かなりハードルが高いように思えます。

2022年にアメリカにて、JETRO(日本貿易振興機構)を中心に「おにぎりブーム」を巻き起こすために、米系企業や学校、病院などにおにぎりを配るキャンペーンが行われました。このような活動を通じて、寿司やラーメンに次ぐ人気の日本食となれば、日本米の需要も高まり、海外での可能性がかなり具体性をもって見えてきます。

●米国で日本産食品のプロモーションイベントを開催|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/chiiki/220210.html

このような事例のみならず、アメリカおよび世界中の人たちに、日本米の可能性について「寿司」だけではないということをどのように知ってもらうか、日本人全体で意識していきたいですね。


※1 米国農務省 - コメ部門の概要(usda.gov)
https://www.ers.usda.gov/topics/crops/rice/rice-sector-at-a-glance/

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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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