今さら聞けない「米粉」の話 種類や使い方を解説!

管理栄養士の大槻万須美です。

最近、より手に入りやすくなってきた「米粉」。米粉パンや米粉ケーキなど、小麦粉とは違った食感や味わいが人気を集めています。

今さら聞けない、米粉の基本情報や用途、小麦粉との違いや使うときの注意点について解説します。


米粉とは? どんな使い方ができる?


米粉には、生のもち米で作られた「白玉粉」や「もち粉」、生のうるち米を製粉した「上新粉」、両方を混ぜた「だんご粉」と、糊化した米粉である「道明寺粉」や「寒梅粉」といったものがあり、柏餅やちまき、お月見団子など、古くから米粉を使った和菓子は親しまれてきました。

最近では、従来の使い方である和菓子だけでなく、上新粉をより微細にした「上用粉」が米粉パンや米粉ケーキなどの洋菓子にも利用されています。

米をより細かく粉砕する製粉方法と、製パン・製菓技術の進歩などにより、米粉や米粉加工品は一層おいしく、身近なものになってきました。

 

また、米粉は、でんぷんのアミロース含有率によってふくらみやすさややわらかさなどの仕上がりに違いが出るため、用途に合わせて米粉の種類を選べるように、「米粉の用途別基準」のガイドラインに沿って「1番」「2番」「3番」などの区分と用途の表示がされるようになっています

各米粉の用途例


  • 1番:菓子・料理用
・ソフトタイプ(アミロース含有率15%未満)
シフォンケーキなどの柔らかいスポンジケーキや、クッキー
・ミドルタイプ(アミロース含有率15%以上20%未満)
スポンジケーキ、クッキー、天ぷら粉、お好み焼き粉、唐揚げ粉、惣菜のとろみ付けなど

  • 2番:パン用(アミロース含有率15%以上25%未満)
・パン全般

  • 3番:麵用(アミロース含有率20%以上)
・麺全般
・ハードタイプ(アミロース含有率20%以上)
強弾力の麺、洋酒に浸すなどの固めのケーキ

※「米粉の用途別基準 ・ 用途表記」、「各米粉の具体的な用途の例及びアミロース含有率に応じた用途詳細」より

2番と3番のグルテン添加率は18~20%とし、グルテンを添加している旨を明記する必要性も盛り込まれています。

このガイドラインでは、生地の質感や焼き上がりのボリュームにも変化を与える「粒子の大きさ」と「デンプン損傷度」についても基準が設けられています。

小麦粉との違いは?



米粉は小麦アレルギーの際の代替品としても使われますが、両者にはさまざまな違いがあります。

性質の違いを知り、上手に使い分けしましょう。

1.デンプン量


小麦粉のデンプン量が45%なのに対して米粉は70~80%となっているため、米粉を使うともっちりとした食感に仕上がります。

2.吸水性・吸油率


米粉は小麦粉よりも吸水性が高く、水分を含みやすい性質があります。

また、油の吸油率が低いため、揚げ物に使うと薄衣になるとともにカラッと揚がります。吸油率が低いためカロリーもおさえることができます。

3.たんぱく質


小麦粉のたんぱく質はグリアジンやグルテニンが含まれ、水を加えてこねることでグルテンを形成しますが、米粉に含まれるたんぱく質はグルテンになりません。

こねすぎるともちのような弾力が生まれるため、粉っぽさがなくなるまで混ぜるのがポイントです。

4.アレルギー


小麦に含まれるたんぱく質はアレルギーの原因物質として知られています。特にグルテンに関するアレルギーでは、セリアック病やグルテン不耐症などがあり、米粉はグルテンフリー食材としても活用されています。

しかし、米粉製品であっても、小麦粉が含まれていたり、グルテンを添加したりしているものもあるため、小麦アレルギーのある人は注意が必要です。

5.消化


米粉の方が小麦粉よりも油分が少ないため、消化に良く、胃もたれしにくいといわれています。

6.粉の扱い


米粉はサラサラとしていて、粉をふるう必要はありません。糊化温度が高いためダマになりにくく、ホワイトソースやカスタードクリームも失敗なく作ることができます。片栗粉のようにとろみづけにも向いています。

また、グルテンが含まれていないため、こねる工程が省略でき、発酵時間も短縮できます。

7.アミノ酸量


米粉は、人に必要とされる必須アミノ酸のバランスがよく、アミノ酸スコアが65(小麦41)となっており、良質なたんぱく質も摂取できます。

8.価格


一般的に出回っている米粉は、小麦粉に比べてやや価格が高めになっていますが、米粉の利用拡大のため、国を挙げて支援策を強化しており、米粉がより活用しやすくなることが期待されます。

米粉はグルテンフリー? 注意点は?


米粉はすべてグルテンフリーと思われがちですが、前述のように、米粉製品であっても小麦粉が含まれていたり、グルテンを添加したりしているものもあり、小麦やグルテンにアレルギーをもっている人は注意が必要です。

「米粉の用途別基準」に沿ってグルテンが含まれているとの表示がされているものや、グルテンが含まれているかどうかチェックできる「ノングルテン米粉」の推奨マークのある製品も増えています。

日本米粉協会は、「ノングルテン米粉の第三者認証制度」により、グルテン含有が1ppm以下となるよう、製造工程が管理されている製品であることや、製造工場において安定した生産・検査・出荷体制が行われているかの検査に適合する米粉や米粉加工品に対して「推奨マーク」を付与しています。

それに加えてグルテン混入防止に関して厳格に管理している製造販売事業者は「ノングルテン米粉の製造工程管理JAS」を取得して、広告やHPなどにJASマークを使用できる仕組み作りを実施しています。

この日本のノングルテン米粉表示は、欧米のグルテンフリー表示に比べて、グルテン含有量の基準がより厳格となっています。

玄米を使用した「玄米粉」ってどんなもの?


米粉には、酒米を磨いて出てくる粉を利用しているものや、うるち米を玄米の状態で粉砕したもの(玄米粉)もあります。

玄米粉は普通の米粉よりも粒子が粗めでざらっとした素朴な食感があります。

低温・低速で製粉したものや、粉砕前に焙煎するものなどさまざまですが、ビタミンB・ビタミンE、ナイアシンなどのビタミン類、ミネラルや食物繊維などの栄養価が高く、抗酸化物質のフェルラ酸やフィチン酸、GABAなどが含まれているなど機能性も備えています。

玄米ではあるものの、粉の状態になっているため酸化がすすみやすいので、開封後は早めに使い切るのがおすすめです。


米粉は小麦粉の代替としての利用だけではなく、米粉独自の性質によって、小麦粉とはまた違ったおいしさを感じられる魅力を持っています。米粉を使ったレシピも多くあるので、米粉料理もどんどん楽しみたいですね。

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・丸山 清明 監修『ゼロから理解するコメの基本』(誠文堂新光社)・多森サクミ『かんたん米粉パン』(立東舎)厚生労働省「カラダにやさしい「米粉」の魅力」農林水産省「米粉をめぐる状況について」日本米粉協会「ノングルテンJAS認証とは」
大槻万須美
管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、離乳食講座などの料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。


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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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