10代の若者が感じた農業の魅力【コラム・沖貴雄の「PDCA農業で稼ぐ!」 第1回】

皆さん初めまして。

広島県北西部に位置する安芸太田町で合同会社穴ファームOKIを経営している沖貴雄と言います。

安芸太田町は中山間地域であり、人口約6000人、高齢化率が50%を超える町です。私は現在30歳で、経営を開始して約7年になります。個人事業主として4年経験し、2018年9月からは法人化しました。

施設18棟(46a)でほうれんそう、露地約200aでとうもろこし、白菜、キャベツなどを生産しており、地元のパートさんを中心に8人の皆さんと楽しく作業を行い、「わくわくを食卓に」をモットーに楽しい農園づくりを目指しています。

就農2年目にパートさんと
昨年度(2021年度)から「ひろしま型スマート農業プロジェクト」(愛称:ひろしまseed box)の実証圃場として、日射比例灌水、ハウスの自動開閉、収穫予測システムなどのスマート農業の導入が始まりました。

スマート農業については、自動灌水システムにより、作業時間の大幅な削減が可能となり大きな効果を実感しているところなのですが、昨年取材していただいたご縁から、このたびこのコラム執筆のお話をいただきました。

▼穴ファームOKIが参画する「ひろしま型スマート農業プロジェクト」実証現場レポート
生産者にとって本当に役立つ自動灌水、自動換気・遮光システムとは【生産者目線でスマート農業を考える 第18回】

まだまだ経験は浅い私ですが、農業で独立してここまで来るまでに最も大切だと感じたのは「PDCA」という業務改善の手法です。その実践により、弱冠30歳の私でも、現在の規模と売上まで成長することができました。

このコラムでは、これから農業に携わりたいと考えている方に向けて、私自身の成功・失敗の事例、節目に出会って私を助けてくれた方々のお話をご紹介していきます。その中から、新規就農や農業に入る人へ微力ながら何かしらのヒントにしていただれば幸いです。

農業普及指導員に憧れた幼少期


さて、私が農業の世界に入った理由は大きく2つあります。

1つ目は母方の祖父が農業に精通していた人で、その話をよく聞く中で憧れを持っていったこと。

2つ目は、生まれ育ったところ(父の実家)が兼業農家であり、農業が身近にあったこと。

小学3年生の頃から祖父と一緒にトラクターに乗り、田んぼで鋤いていました。そういった中で、農業作業が苦ではなく好きになったように思います。

高校卒業後の進路としては、母方の祖父に憧れ農業普及指導員になりたかったのですが、勉強をあまりしてこなかったので大学受験に失敗してしまいます。今後どうするかというところで、浪人しても勉強をしそうになかったので、広島県立農業技術大学校(以下、農大)に進学することにしました。

この頃は「農業でメシを食う」なんてことをイメージできておらず、農業というものを漠然ととらえていたように思います。高校の同級生たちは農業なんて特殊だと思っていたのではないでしょうか(笑)。

栽培から作業まで、基礎を学んだ農業技術大学校


農業技術大学校は各都道府県にある農業経営者を養成する機関です。私が入学した当時は、高卒から60代までの幅広い年齢層の方と共に2年間学んでいきました。

野菜、花卉、果樹、畜産の4コースがあり、私は野菜コースに在学。そこには農業高校卒の同級生もいたのですが、彼らは余裕に見え、そうではない私は負けたくない一心と、好きなことを習う楽しさでいっぱいだったように思います。

農大で仲間たちと一緒に学んでいた頃
まずは農業概論から始まり、上記4コースに加え水稲などの農業を幅広く座学で学び、その後各専門分野をコースや学年で分かれて座学で学んでいきます。

授業の6割は実習で、圃場にて実践的に学びます。この実習での圃場管理はもちろんですが、当番制により朝晩のハウスの管理、土日等の休みの日の管理もあります。農業は生き物相手のため、授業と言えど圃場の管理は欠かせません。

そして、農大の一番のポイントに「プロジェクト学習」というものがあります。簡単に言えば卒業論文ですね。個々に決めた課題を栽培にて検証し、その結果を基に考察していくのです。

私はイチゴ栽培のプロジェクトにしました。自分が決めた課題なのでしっかりと栽培管理に手をかけ、手間をかけた分だけきちんと成果が返って来ました。

農大でのイチゴ栽培の研究時の様子
この時に、栽培データの取り方、読み方を身につけることができました。

特に、担当だった先生は研究畑の人だったのでその辺の指導が鋭く、とても勉強になりました。「農業者も論文を読み解く力が必要だ」と言っておられたことが強く記憶に残っています。

また、農大では日々教わったこと、学んだことを毎日ノートに記録していきます。これが後々クセになって、経営の一助になっていくのですが、これはまた別の機会に書くことにします。

農大での生活は基本的に寮生活であり、そこでの思い出もありますが、同じ釜のメシを食う仲間として深い付き合いができました。今でも頻繁に連絡したりとつながりの深い友人です。

農園バイトで「農業って儲かるんだ!」と気づいたものの……


農大卒業後の進路としては、農家ではなく、祖父に憧れて生産者さんの現場に入るため農協の職員になりたいと思っていました。

しかし、在学中に先輩に誘われたほうれんそうを生産している農園バイトの経験から、将来の進路がガラっと変わりました。

多くのバイトを受け入れていた農園だったので、あくまでも一人の作業者としてだったと思いますが、そこの経営主さんに良い評価をしてもらい、頻繁にバイトに誘われるようになりました。

そこでほうれんそうの出荷作業をしながら、「今日は○万円ぐらいになる」「今日は儲かった!」なんて話を聞いて、「農業って儲かるんだ!」と若い私は簡単に考え、農家に惹かれていきます。

農業の売上は単価×収量という非常に簡単なかけ算のみで計算できます。シンプルだからこそ深く考えず、農産物を生産する側になりたいという思いが強くなっていったのです。今思えば、経費など栽培にかかる手間などは考えていませんでしたが……。

もう少し農業について勉強したいと思いましたが、バイト先の経営者さんの「春からうちに来ればいい」という誘いにより、卒業後はそこで農業研修を受けていくことになりました。

農大には、2年生の9月に1カ月、「農家研修」という農家に派遣される研修があるのですが、その研修で農家の生活というものを肌で感じることにより、農業という職業、「農業でメシを食う」ことへのイメージを持っていったのです。

こういった背景もあり、まだ20歳そこそこの若造だった私は、農家への道を選択します。そしてこの研修の経験から、あれよあれよという間に弱冠23歳にして独立を果たすのです。

(つづく)

合同会社穴ファームOKI
https://anafarm.hp.peraichi.com/oki

【コラム】沖貴雄の「PDCA農業で稼ぐ!」
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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。