農研機構、農作物の病害虫判断の根拠を可視化できるAIを開発

農研機構は、機械学習の一種である深層学習等を用いた「病害虫判断の根拠となる画像の特徴を可視化するAI」を開発した。

ジャガイモの葉を題材に行われた試験診断では、病気の特徴に基づいて95%以上の高精度で診断。農業分野のみならず判断の根拠を求めるさまざまな分野での活用が期待されている。


「AIによる病害虫判断」の根拠を説明するために


世界の農業における病害虫による潜在的損失額は年間5400億ドルとの試算があり、日本でも農業害虫であるウンカによるイネの坪枯れ等の被害が発生するなど、その損失は100億円を超える年もあるといわれている。

農研機構では2018年10月より農業情報研究センターを開設し「病害虫判断の根拠を説明できるAI」の社会的要請のもと、深層学習等を活用したAIによる病害虫の自動判別システムの開発を進めてきた。

AIによる深層学習は、これまでさまざまな分野で活用されてきたが、そのほとんどは「どのような特徴を学習したか?」を説明できないブラックボックスモデルだったという。

今回開発されたAIは、オートエンコーダという技術を用いて病害虫の特徴を学習する。ジャガイモの葉の診断の例では、元画像から「病気」と「健全」両方の画像を生成し、病気の特徴が正しく学習できていることが確認された。



研究では、健全な葉の画像82万7400枚、病気の葉の画像40万827枚を使用し、植物の葉の画像データから健全/病気/共通部分の特徴を3つの領域に分けて抽出。「健全」の画像には病気の特徴領域を使用せず、「病気」の画像の場合には健全領域を使用せずに、それぞれの特徴が対応する特徴の部分領域へ反映されるように条件付きで学習を行った。

結果、2種類の病気の両方において95%以上の高精度で診断に成功し、ピーマンやトマトについて行った同様の学習でも90%の診断に成功したとのこと。


今後はこのAIをプログラム化し、イネ科の重要害虫であるウンカ類のへの適用や、病気株の検出が特に重要となるジャガイモの原種への導入も検討していく考えだ。


農研機構
http://www.naro.affrc.go.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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