舞鶴市がブランド産品「万願寺甘とう」のスマート農業事業を展開

舞鶴市(京都府)とKDDI株式会社は、IoTを活用した万願寺甘とうのスマート農業事業を2020年3月30日から開始。この事業は、舞鶴市の特産品である万願寺甘とうの安定生産の実現を目指し、農業経営の安定化と効率化を図るものだという。

舞鶴市とKDDIは、「2020年度内に日照量や温度などの栽培状況の見える化を実現し、翌年の2021年度には収集した情報と生育状況の相関を分析して、高収量生産者の好事例を生産者間で共有したい」とコメントしている。

舞鶴市で生産される万願寺甘とう
舞鶴市は、京都府北東部に位置する万願寺甘とうの生産地だ。
若狭湾に面した舞鶴港は、波静かな天然の良港であることから「京都の海の玄関口」といわれており、内陸部は豊かな自然にも恵まれていることから、主に農林水産業や観光関連のサービスを中心に産業が栄えているという。

舞鶴市の位置
万願寺甘とうは、大正末期に舞鶴市万願寺地区で栽培が開始されたとされるトウガラシの一種。さわやかな甘い香りと、トウガラシの香りがほのかなに匂う風味が特徴で、ピーマンのような肉厚な果肉も有する。

万願寺甘とうの栽培は、発祥地である舞鶴市ほか綾部市と福知山市の一部を加えた地域のみに限られるというが、1989年には「京のブランド産品」の第1号にも認証されるなど、伝統ある京野菜として幅広い年齢層に食されているそうだ。

生産者グループの検品場では、細かく定めた選別基準に沿った選果作業が行われている。秀品・優品・良品の3ランクのうち、秀品のみが「京のブランド産品」として出荷されるそうだ。

万願寺甘とうの栽培の様子
京のブランド産品マーク※登録商標
舞鶴市の人口は、1985年をピークに減少を続けており、中でも農林漁業者の高齢化による第一次産業の担い手不足や後継者不足は深刻な地域課題とされている。

舞鶴市では、この課題を解決するために、先端技術を活用した生産技術の高度化と農林水産物のブランド化・販路拡大に取り組んでいるが、同市のブランド産品である万願寺甘とうは栽培が非常に難しい品種のため、生産者によって収量にばらつきが生じているという。

万願寺甘とうの安定生産に向けた課題をスマート農業で解決


今回の事業は、2018年12月に舞鶴市とKDDIが地域活性化を目的に交わした連携協定によるもの。事業では万願寺甘とうの安定生産に向け、ICTを活用したスマート技術を用いて解決を試みるという。

ビニールハウス内に設置されたIoTセンサー
内容は、「農業IoTセンサー設置したハウス内で、万願寺甘とうの生育に関係するとされる温度や湿度、日照、土壌EC(電気伝導度)、土壌温度、土壌水分量、土壌pH(酸性度)を10分ごとに収集して状況を把握する」というものだ。

この農業IoTセンサーは、クラウド上に蓄積されたデータがグラフ化された後アプリケーションへ転送され、パソコンやスマートフォン等のデバイスから確認できる仕組みになっている。温度や湿度などの上限値の設定も可能で、設定値を超えた場合はアラート通知されるという。

ハウス内の潅水に使用される散水量は、流量計センサーを用いて計測したデータを基にオフラインで蓄積。パソコンやスマートフォン等に転送すれば、IoTセンサーの情報と合わせた総合的なデータが確認できるとのこと。



舞鶴市とKDDIは、事業を通じて「万願寺甘とうの高収量生産者の栽培データを解析・共有して、栽培知見を市内全域に広げたい」としている。スマート技術を活用した栽培法を確立することで生産者の経営安定化を図りたい考えだ。


舞鶴市(京都府)
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/
KDDI株式会社
https://www.kddi.com/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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