農研機構、農業用水の循環を可視化して河川の渇水を予測するシミュレーションモデルを開発
農研機構は、日本の河川流域における農業用水の循環を可視化して河川の渇水を予測する流域水循環専用のシミュレーションモデルを開発した。
同技術は、農業用水の取水から河川への再流入までを考慮した河川流域専用の計算スケールで、この開発により農研機構は「河川の渇水時における流況計算の精度向上および、気候変動下における水資源利用計画の策定に役立つ」としている。
日本では、ダムや取水堰、用水路など河川から取水される水の約7割を農業用水として利用している。
取水された農業用水は、水田地帯に配分された後、その一部が河川に再流入する仕組みで、渇水時においては上流から下流までの各地点での取水と再流入の繰り返しにより、流量が制御されているそうだ。
農業用水が河川の流量へ与える影響は大きく、持続的な農業生産を続けるためには、ダム放流量の調整や取水制限等の短期的措置に加え、水利施設の整備や改修等といった長期的な適応策の策定が急務と言われている。
近年は水資源や水利用について、地球温暖化による降水・融雪の変動等の自然的条件の変化に加え、農地面積や農家戸数の減少など社会的条件の変化も指摘されている。
2018年6月に公布された気候変動適応法では、現在すでに生じている、もしくは将来予測される河川流域の水害の回避・軽減等について、自治体ごとに方策を策定することが示された。
農研機構が開発した技術は、河川の渇水予測や農業用水の利用に関する適応策の検討に用いられる流域水循環専用のシミュレーションモデルだ。
降水量や気温、蒸発散量、積雪、融雪量など、河川流域で発生する自然的な水の流れとダムや取水堰、用水路による水利用・管理による人為的な水の流れを併せて解析することで、渇水時の河川流量を高い精度で計算できるという。
河川の流量および渇水の発生は、国土交通省大臣または都道府県知事等の河川管理者によって把握されている。
渇水の発生は、ダムに蓄えられた水の量や利水基準地点に流れる水の量などから判断されるが、流域の下流や支流では厳しい渇水が生じていることも多く、農業用水の循環についての全体把握が必要となっている。
開発に至る研究では、自然界の水循環と農業用水の循環を考慮したシミュレーションモデルを作成。「河川の流域について1km四方をメッシュに1日ごとの流量を計算できる」とした。
灌漑期とされる5月~9月のついては、北陸地方の河川のある地点を例に、最も渇水が厳しい時期とされる9月上旬を指定。従来モデル(推定値と観測値の誤差約90%)より高精度な推定(推定値と観測値の誤差5%)を実現した。
渇水の発生とその規模を示す流域内の地点ごとの予測についての可能性も示され、「農業用水の計画主体である地方農政局(土地改良調査管理事務所)、水資源機構、地方自治体等が、流域の水資源量の把握や渇水を予測して取水制限等の対策を講じるにも役立つ」としている。
また、将来の気候変動シナリオに基づく降水量の予測値を入力することで、より長期的な河川流量予測が行えるほか、将来予測される水害の回避や軽減等についても早期の準備が可能になるそうだ。
このシミュレーションモデルは、流域の水資源量の把握や渇水の予測を目的に、北陸農政局(信濃川水系土地改良調査管理事務所)や関東農政局(利根川水系土地改良調査管理事務所)で利用が開始されているという。
農研機構農村工学研究部門が2020年11月6日~24日にオンライン開催する「令和2年度 実用新技術講習会および技術相談会」では、この技術を用いた研究成果の発表も予定されている。
今後は、農業水利施設の整備に役立つ流域ごとの詳細な予測を進めるほか、地球温暖化への影響を軽減する新たな技術の開発にもつなげたい考えだ。
農研機構
https://www.naro.affrc.go.jp/index.html
同技術は、農業用水の取水から河川への再流入までを考慮した河川流域専用の計算スケールで、この開発により農研機構は「河川の渇水時における流況計算の精度向上および、気候変動下における水資源利用計画の策定に役立つ」としている。
日本の河川から取水される水の約7割が農業用水に利用
日本では、ダムや取水堰、用水路など河川から取水される水の約7割を農業用水として利用している。
取水された農業用水は、水田地帯に配分された後、その一部が河川に再流入する仕組みで、渇水時においては上流から下流までの各地点での取水と再流入の繰り返しにより、流量が制御されているそうだ。
農業用水が河川の流量へ与える影響は大きく、持続的な農業生産を続けるためには、ダム放流量の調整や取水制限等の短期的措置に加え、水利施設の整備や改修等といった長期的な適応策の策定が急務と言われている。
近年は水資源や水利用について、地球温暖化による降水・融雪の変動等の自然的条件の変化に加え、農地面積や農家戸数の減少など社会的条件の変化も指摘されている。
2018年6月に公布された気候変動適応法では、現在すでに生じている、もしくは将来予測される河川流域の水害の回避・軽減等について、自治体ごとに方策を策定することが示された。
河川の渇水予測や農業用水に関する流域水循環専用のシミュレーションモデル
農研機構が開発した技術は、河川の渇水予測や農業用水の利用に関する適応策の検討に用いられる流域水循環専用のシミュレーションモデルだ。
降水量や気温、蒸発散量、積雪、融雪量など、河川流域で発生する自然的な水の流れとダムや取水堰、用水路による水利用・管理による人為的な水の流れを併せて解析することで、渇水時の河川流量を高い精度で計算できるという。
河川の流量および渇水の発生は、国土交通省大臣または都道府県知事等の河川管理者によって把握されている。
渇水の発生は、ダムに蓄えられた水の量や利水基準地点に流れる水の量などから判断されるが、流域の下流や支流では厳しい渇水が生じていることも多く、農業用水の循環についての全体把握が必要となっている。
開発に至る研究では、自然界の水循環と農業用水の循環を考慮したシミュレーションモデルを作成。「河川の流域について1km四方をメッシュに1日ごとの流量を計算できる」とした。
灌漑期とされる5月~9月のついては、北陸地方の河川のある地点を例に、最も渇水が厳しい時期とされる9月上旬を指定。従来モデル(推定値と観測値の誤差約90%)より高精度な推定(推定値と観測値の誤差5%)を実現した。
渇水の発生とその規模を示す流域内の地点ごとの予測についての可能性も示され、「農業用水の計画主体である地方農政局(土地改良調査管理事務所)、水資源機構、地方自治体等が、流域の水資源量の把握や渇水を予測して取水制限等の対策を講じるにも役立つ」としている。
また、将来の気候変動シナリオに基づく降水量の予測値を入力することで、より長期的な河川流量予測が行えるほか、将来予測される水害の回避や軽減等についても早期の準備が可能になるそうだ。
このシミュレーションモデルは、流域の水資源量の把握や渇水の予測を目的に、北陸農政局(信濃川水系土地改良調査管理事務所)や関東農政局(利根川水系土地改良調査管理事務所)で利用が開始されているという。
農研機構農村工学研究部門が2020年11月6日~24日にオンライン開催する「令和2年度 実用新技術講習会および技術相談会」では、この技術を用いた研究成果の発表も予定されている。
今後は、農業水利施設の整備に役立つ流域ごとの詳細な予測を進めるほか、地球温暖化への影響を軽減する新たな技術の開発にもつなげたい考えだ。
農研機構
https://www.naro.affrc.go.jp/index.html
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