農研機構とタキイ種苗、ゲノム編集により新興ウイルスに打ち勝つトマトを開発

農研機構は、タキイ種苗株式会社と共同で、新興の病原ウイルス「ToBRFV(Tomato brown rugose fruit virus)」に強い抵抗性を持つトマトの作出方法を開発した。

遺伝子の欠損で起こるウイルスの増加抑制に着目


「ToBRFV」は、2014年に中東で初めて発見された新興の病原ウイルス。トマトやピーマンなどに多く発生する病気で、感染すると実が褐色に変色し表面にシワができ、生育や収量に影響が出るという。

日本国内ではまだ発生していないが、世界中の多くの地域で急拡大しており、被害によっては、収量が30~70%低下するなど、国際的なトマトの安定供給に対する大きな懸念材料となっている。

研究では、ウイルスの増殖を促す働きがある遺伝子「TOM1」の欠損で起こる「ウイルスの増加の抑制」に着目。
トマトから発見された5つのTOM1類似遺伝子の中で、ウイルスの増殖を促す働きがあった4つのTOM1類似遺伝子を対象に、遺伝子の働きを抑えるゲノム編集を実施したところ、「ToBRFV」を含む複数の重要ウイルス病に対し強い抵抗性を示したという。

出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/151916.html

また通常、植物が持つ特定の遺伝子を改変すると、植物の生育に負の影響が表れる場合があるが、今回の研究でゲノム編集したトマトは、ほぼ正常に生育し、野生型トマトと同様に収穫できたそうだ。

出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/151916.html

両者は、今回の研究で得た成果を通じ、「トマトの安定供給を支援すると同時に防除に費やす労力や資源を低減したい」としている。


農研機構
https://www.naro.go.jp/index.html
タキイ種苗株式会社
https://www.takii.co.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    堀口泰子
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