システム計画研究所ら、AIで土壌病害の可能性を診断する「HeSo+」を開発

農研機構と株式会社システム計画研究所は、土壌病害が発生する可能性を診断できるAIアプリ「HeSo+(ヘソプラス)」を開発。2022年4月から提供を開始している。

圃場の発病ポテンシャルを3段階で表示


出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/154107.html

現在日本の農業現場では、根こぶ病や黒腐菌核病などの土壌病害による被害を防ぐため、土壌消毒剤を使用した防除が行われている。

しかし、これらの土壌病害が栽培期間中に一度でも発生してしまうとその後の対策が困難になるため、土壌病害が発生する可能性が低い場所にも使用されることが多く、過剰な労力や費用を負担してしまっているケースが報告されている。

「HeSo+(ヘソプラス)」は、農研機構とシステム計画研究所が16の公設試験研究機関、大学、民間企業と共同で実施した農林水産省の委託プロジェクト研究「AIを活用した土壌病害診断技術の開発」で生まれた土壌病害予防専用のAIアプリ。

人間の健康診断の発想に基づく病害管理法である「ヘソディム(HeSoDiM)」をベースにしているのが特長で、対象となる作物病害に応じた対策法や生産者が目指すゴール(収量確保・増収増益・高付加価値化・圃場の持続的利用)に合わせた対策法が提示されるように設計されている。

ヘソディムの概念図
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/154107.html

ヘソディムによる土壌病害管理の効果
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/154107.html

「HeSo+」で診断できる作物病害の種類
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/154107.html

圃場の発病ポテンシャルを診断する予測器(AI)は、栽培地域や栽培方法が異なる多くの圃場から収集した土壌の理化学性および生物性データ、肥培管理や栽培管理に関するデータ、対象病害の発生状況データなどを基に開発。正確度を検証する実証実験では、正確度73.6~86.5%の範囲と実用可能なレベルであることが確認された。

予測器の正確度
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/154107.html

診断手順は以下の通り。

1.診断したい圃場をアプリのマップ上で選定して提示された診断項目の情報を入力。
※入力する情報は、各種土壌理化学性情報や前作、周辺圃場での対象病害の発生程度など診断対象とする病害や圃場の場所によって異なる。

出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/154107.html


2.圃場の発病ポテンシャル(レベル1:青・レベル2:黄・レベル3:赤)と診断結果の自信度(星マークの数)を3段階で表示。

出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nipp/154107.html



両者は、「HeSo+(ヘソプラス)」の提供を通じ、土壌消毒剤の要否の判断をサポートしていくことで、農業生産に係わる労力や費用を軽減したい考えだ。


農研機構
https://www.naro.go.jp/index.html
株式会社システム計画研究所
https://www.isp.co.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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