学生マンションで「屋上菜園×幼児教室」 農業で共有スペースに付加価値を提供

学生マンションの企画から開発、運営管理までを手がける株式会社ジェイ・エス・ビーは2019年より、マンション施設内の空きスペースを活用したシェアプロジェクトを始動。地域住民などを交えながら、シェアリングスペースで収穫体験イベントや就活支援セミナーを開催するなど、独自性のある価値提供を行っている。


「創造」と「共生」を目指すシェアプロジェクト事例

「屋上菜園×幼児教室」野菜の収穫体験

2019年3月、同社は農体験を通した入居学生間の交流や食育の推進を目的に、屋上庭園付きの学生マンション「学生会館 Uni E’meal 京都高野」を開設。屋上庭園の有効活用や同社による新たなシェアプロジェクトへの取り組みを兼ねて、京都市内の幼児教室「UniOVOこどもの森」の子どもたちとともに野菜の収穫体験イベントを実施した。

UniOVOこどもの森は、2018年に同社がオープンした1歳から2歳を対象とする幼児教室で、「本物の体験」を通して学ぶ感覚教育の重要性を提唱している。今回のイベントでは、子どもたちが五感で学ぶ体験型の食育として、いろいろな素材にふれて楽しむ野菜の収穫から調理、食事までを体験した。


学生マンション「ユニエミール京都高野」屋上菜園での収穫の様子

「食事付き学生マンション×企業」服育セミナー

同社によると、学生マンションの空きスペースを活用した学生の就活支援に関する取り組みも、入居者からの好評を得ているという。

2019年4月、東京都内の食事付き学生マンションにて、オーダースーツブランドを運営する株式会社オンワードパーソナルスタイルとともに、スーツの着こなしや知識を伝える服育セミナー「就活”STYLE UP”プロジェクト」を開催。企業担当者からの紳士服着用の身だしなみや就活マナーについての詳しい解説を通じ、学生や企業間の接点拡大にも繋がったとのことだ。

同社は今後も、施設のアイドルタイムを生かした就活相談会などを企画し、学生への支援の機会を増やすとしている。


「就活”STYLE UP”セミナー」開催風景

「高齢者向け住宅×地域住民」健康セミナー

2019年6月、同社運営の高齢者向け住宅にて、地域住民を交えた健康セミナーイベント「いきいきフェスタ」を開催した。イベントは、「ほっとけないをほっとかない」をテーマに、参加者が介護と医療を身近に考えるためのきっかけづくりや、一人暮らしの「高齢者見守り」についての意識づけ、地域住民同士の絆づくりを目的としたものだ。

当日は、医師や栄養士、ヨガインストラクターを招いた講演会やヨガ体験、生花体験を通した健康療法、健康カラオケ、骨密度測定、相続相談会を実施し、多くの地域住民が参加した。

同社は、こうした高齢者向け住宅を「地域の公民館」と位置づけることで、地域間の活性化を促すとともに、入居者へのサポートをいっそう充実させる考えだ。



生花体験

骨密度測定体験ブース

「学生マンション」から社会貢献事業へ

学生マンションを出発点として

ジェイ・エス・ビーは1976年の創業以来、学生マンションの企画開発から運営管理、入居者サポートまでを一手に引き受ける不動産企業だ。2019年4月時点で、全国に展開している学生向け賃貸仲介店舗「UniLife 」は78 店舗に及び、およそ6万7000室を管理している。

もともとは、社宅や学生寮のような特殊な間取りと構造のため、一般の賃貸物件として使用するには不向きな物件を開発し、建物の価値を生かしながら、さらなる付加価値を付けた学生マンションとしてリノベーションしているとのこと。

これらの学生マンションには、館内で手作りした管理栄養士監修メニューを朝夕に提供する「食事付き学生マンション」や「家具家電付き学生マンション」、シェアハウスなどの取り扱いがある。また2019年3月には、「屋上菜園付き学生マンション」を開設するなど、住まいに新たな体験や付加価値を求める学生向けにバリエーション展開を行っている。

学生マンション「ユニエミール京都高野」の屋上菜園

外国人留学生向けの賃貸ブランド「UniLifeGlobal」

近年、日本に数多くの外国人留学生や観光客が訪れていることにより国際化が加速する中、2008年に推進した政府主導の「留学生30万人計画」も手伝い、2018年には外国人留学生が約30万人にまで増加。その一方で、日本国内での保証人の確保が難しく、家主と留学生間の相互理解が不足しがちな要因から、住居の供給がいまだ追い付いていない現状がある。

これらの問題を解消するため、同社は外国人留学生専門の賃貸住居を斡旋するブランド「UniLifeGlobal」を立ち上げた。2019年現在にかけて、学生マンションの運営管理で得たノウハウと不動産資産を生かし、外国人留学生に適した住宅紹介サービスを展開している。

また2018年11月には、中国人留学生の住宅紹介事業を行う中国企業「Uhomes」と業務提携を結んだことで、同社が運営する全国の学生マンションの情報提供が可能となり、よりスムーズな留学生向けの案内・管理ができるようになったという。

高齢者向け住宅を地域の「憩いの場」へ

学生マンション事業とともに、同社の中核を担うサービスへと発展してきたのが、2011年より参入した高齢者住宅事業だ。超高齢社会の到来により、供給不足が予想される高齢者向け住居の企画開発、運営及び紹介事業に着手し、2019年現在では京都、大阪、滋賀、函館、仙台、福岡にて全14棟を運営している。

個々の住宅内においては高齢者の取り巻く環境を踏まえ、レストラン形式の食堂では常食以外にも、カロリー制限食や刻み食、ムース食などを提供するとともに、入居者と地域住民の関係がより密となるよう、無料イベントの開催を行っているとのこと。

そのほか一部の住宅では、24時間オンライン脈拍モニタリングシステム「iAide」の実証実験を行い、今後は入居者の脈拍を24時間測定するとともに、非常時の早期対応と事前の予測に繋げたいとしている。


地域住民を招いた健康運動教室


リストバンド型脈拍測定器とデータ通信装置


<参考URL> 
株式会社ジェイ・エス・ビー
学生マンション検索サイト「UniLife」

外国人留学生専門の賃貸サイト「UniLifeGlobal」
グランメゾン&グランヴィルシリーズ
UniOVOこどもの森
日本学生支援機構「平成30年度外国人留学生在籍状況調査」
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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