岡山大学発ベンチャーのビジュアルサーボ、「果物・野菜収穫用AI空間センサー」の屋外実証実験に成功

岡山大学発ベンチャーの株式会社ビジュアルサーボは、果物・野菜収穫用AI空間センサーを用いて、果実の位置や寸法をリモート計測する屋外での実証実験に成功した。


果樹園での空間計測の有効性を確認


株式会社ビジュアルサーボは、国立大学法人岡山大学発のベンチャーで、ステレオビジョンを用いた空間計測について研究している企業。これまでに動く任意対象物の3次元位置姿勢のリアルタイム計測に成功し、泳ぐ魚の寸法計測などを行ってきた。

今回、公益社団法人岡山市公園協会岡山市半田山植物園の協力のもと、2024年9月に果物・野菜収穫用AI空間センサーを用いた園内の果樹(ナツメ・ザクロ・ヘビウリ・ナタマメ・カリン・キンカン・ボケ)の果実計測実験を行い、果樹園での空間計測の有効性を確認した。

ある時刻の複眼カメラ画像情報の比較のみに基づく画像処理は、時々刻々変化する時変光環境外乱(※1)の影響を受けないという特徴がある。これは、撮影時の光環境は左右カメラの入力画像に同時かつ同等に反映され、過去の光環境状態から影響を受けることがないからだ。

今回の実証実験で使用された空間計測システムは、この「複眼光環境耐性」を利用しているため、時変光環境外乱に耐性を持つ。この画像計測方法は、左右複眼カメラに同じ対象物が写っていれば、その位置・姿勢・寸法の計測が行える。

実証実験では、自動収穫ロボット用空間センサーとしての能力を確認するため、植物園内の立木果樹の木陰に見え隠れする果実の非接触計測実験を行った。その結果、遠方写真より接近写真での寸法計測はより誤差が少なくなっていた。また、ナツメ・ザクロ・キンカンの計測結果では、小さい果実の場合でも計測可能なことが確認された。


今回の実験により、屋外立木果樹に実る果実を対象とした位置・寸法の非接触空間計測が可能なこと、カメラ果実間の検出距離の補正後、近距離での果実寸法の平均誤差は約5mm以下であることがわかった。

このことから、ロボットハンドが接近後、採取時には正確な計測が可能であり、収穫ロボット用空間センサーとして望ましい機能を備えていることがわかる。また、果物・野菜収穫用AI空間センサーは、収穫する果実の写真を現場の果樹園で撮影するだけで対象果実のコンピュータへの指定が完了し、操作が簡単だという。

ビジュアルサーボは、果物・野菜収穫ロボット用空間センサーを「全天候型空間センサーAWSS」(All-Weather Space Sensor)と命名して発売している。今後は、他社と連携して果物・野菜収穫用ロボットを開発する予定で、収穫時に果物の熟度などの判定も考慮した仕分け作業も可能な多機能収穫ロボットの共同開発を検討しているとのこと。


※1:時変光環境外乱
光の入射角度や照度などの光環境の時間的変化は、画像処理装置への入力画像を変化させる。この入力画像の変化は、コンピュータ内にあらかじめ記憶された基準画像と入力画像の差を乖離させるため画像処理結果に誤差を生じさせる。また基準画像と同程度の光環境で画像が撮像されることを前提とした画像処理プログラムの正常動作に悪影響を与え、外乱として作用する。このような光環境の時間的変化を、時変光環境外乱と呼ぶ。


株式会社ビジュアルサーボ
https://visual-servo.com/index.html
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
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    北島芙有子
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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