4年間で労力軽減×農薬削減×価格アップを実現できた「スマート米」の理念

株式会社オプティムの「スマート米」は、オプティムのドローンなどのスマート農業ソリューションを活用し、生産者にとっても消費者にとってもプラスになる取り組みとして、当時から話題となった新しい栽培方法だ。

オプティムのスマート農業を用いて栽培した農産物は、オプティムが市場価格で全量買い取り、オプティム自身が販路を持って販売を行う。売れ行きによっては、さらにレベニューシェアで生産者に還元する仕組みもある。

2018年からスタートしたこのプロジェクトも丸4年を経て、当初と比較して収穫量で約5倍もの規模になっている。


今回は、2021年11月30日(火)に開催されたオンラインイベントOPTiM INNOVATION 2021 Agri」のウェビナーの内容をもとに、「スマート米」のこれまでの経過と、スマート米が成長を続けて来られた秘密を探ってみよう。

毎年のように新たなスマート農業技術を投入


スマートアグリフードプロジェクト」がスタートしたのは2018年だが、オプティムが農業事業に携わったのはさらに3年前に遡る。佐賀県、佐賀大学、オプティムによる農業三者連携協定により、スマート農業技術の研究がスタートした。

2016年にはドローンによる「ピンポイント農薬散布」に成功。2017年には農業に関わるソリューションを6サービス発表している。

満を持して2018年から「スマートアグリフードプロジェクト」が始動。最初に作られた米は、AI画像検索により農薬を一切使用する必要がなく、100%栽培中農薬不使用となり話題になった。

その後も、毎年のようにAI画像解析とピンポイント農薬散布、さらにピンポイント施肥などでもドローンを活用。安全・安心をひとつの価値として、それを実現するためにスマート農業を活用したことなどが話題となって、参画農家や栽培地域を拡大し、2021年までの4年間で実に収穫実績は5倍、750tにものぼっている。


ブランド価値の創造と販売チャネルの拡大


「スマート米」がここまで定着した理由のひとつには、毎年収穫した米を直接検査し、残留農薬を確認していることもあるだろう。「特別栽培米」として販売するものもあるが、こうした残留農薬の値によって消費者に対して付加価値をつけていることも、消費者が安心して米を食べられる環境づくりにもなっている。

もうひとつは、販売チャネルの多様性だ。「スマート米」は公式直販サイトである「スマートアグリフーズ」を筆頭に、大手ショッピングモール系ECサイトに登録している。これらの販路を利用する人はネットでものを買うことに抵抗感のない、比較的若い世代となっているが、その年齢層に対して、安全・安心というメッセージや、水質汚染や水の無駄遣いを防げる無洗米玄米といった商品がフィットしているようだ。


この米余りと言われる時代に、ここまで収穫量を増やして問題ないのかと心配にもなるが、オプティムの大澤氏によればむしろ逆で、「製造力、配送の見直しと顧客への供給能力向上を図ることが今の課題です」という。

というのも、一般消費者への販売だけでなく、いよいよまとまった数量を販売するより大きな販路へと拡大しようとしているからだ。

具体的には、すでに飲食店や卸への提供もスタートし始めており、飲食店は10カ所の施設食堂へ、生産地から供給先に産地直送の流通を行っている。

また、卸への供給では、栽培・調達機能と卸売業者の製造機能により、オプティムとしてもより多くの米の流通が可能になってきた。実際に、製造工場の拡大も行っているという。


ちなみに、「スマート米」の出荷割合を見ると、7:3で玄米を選ぶ比率が高い。そこには、「スマート米玄米」が、普通の米とほぼ同じ炊き方で気軽に楽しめる加工を施した玄米ということもプラスに働いている。ぬか層に細かな傷をつけるという手法を用いているため、分付き米とも異なり、なおかつ栄養成分を比較しても玄米とほぼ栄養価は変わらない。


ピンポイント技術あればこその「スマート米」


技術的な裏付けとしては、前述のように「ピンポイント農薬散布テクノロジー」や「ピンポイント施肥」、さらにドローンにより播種する打込条播なども行っている。4年前と比べると、播種、防除、施肥と、テクノロジーを用いた栽培方法も進化し続けている。


そして、こうした技術の担い手も多様になりつつある。2021年には、新潟県新発田市でスマートアグリフードプロジェクトに参画する生産者たちの中から、女性によるドローンパイロットチームが誕生し、ドローン作業で活躍し、話題となった。


2022年からはさらに、ドローンパイロットの育成などにも力を入れていくオプティムだが、その根底にあるのは折に触れていつも表明してきた、日本の一次産業である農業を支えたいという思い。「スマートアグリフードプロジェクト」でスマート農業ソリューションをすべて無償提供していることからも、その使命感と事業への熱い思いが伝わる。


さらに新たなチャレンジ


そしてオプティムは2022年、さらに新しいチャレンジを予定している。それが、新しい流通の形だ。

これまで生産者に対しては、AIやIoT、ドローンなどを活用することで持続可能な農業を実現してきたが、同時にオプティム自身が販売を行う事で、生産者の思いのこもった農産物を直接消費者に届けることができる体制ができた。

そこに新たに加わるのが、卸、中食、外食、小売といったより幅広い販路だ。市場などを経由することなく、生産者の思いを直接販売の時と同様に消費者(実需者)に届け、その価値を落とすことなく、それどころかさらに高めることさえできる可能性がある。


その一例として、北海道の生産者と契約し、山梨県のスーパーなどに年間を通じて米を販売している株式会社米福との協力がスタートする。「需要減よりも生産減の方が加速する」と未来への警鐘を鳴らしつつ、「スマート米」をさらに拡大するオプティムと問題意識が共通している。


いまはまだ、安全・安心や柔らかく食べやすい無洗米玄米などに魅かれる、食への意識が高い人々が多いと思われる「スマート米」だが、オプティムが目指しているのはより大きな次元。持続可能な国内農業生産と、国産農作物の消費に貢献することが最大のミッションだ。

2022年産の「スマート米」も、もうじき全国で動き始める。今年はどんな地域で、どんな銘柄の米を、どんな新技術を用いて栽培してくれるのだろうか。


OPTiMスマート農業の製品・サービス|オプティム
https://www.optim.co.jp/agriculture/services
OPTiM INNOVATION 2021
https://www.optim.co.jp/innovation2021/

【特集】OPTiM INNOVATION 2021 agri レポート
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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。