かずさDNA研究所、イヌビワのゲノム解読に成功 イチジクの株枯病対策に貢献

かずさDNA研究所、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)果樹茶業研究部門、国立遺伝学研究所、広島県立総合技術研究所、福岡県農林業総合試験場は、イチジクの生産に大きな被害を及ぼす「株枯(かぶがれ)病」に強い抵抗性を示すイチジクの近縁野生種、イヌビワのゲノム解読に成功した。

今回の成果を踏まえ「株枯病に抵抗性をもつイチジク新品種の育成の加速や、イチジク育種に役立つ遺伝子の発見にもつなげたい」と語る。



イチジクとの交雑子孫の比較解析で抵抗性を示す候補遺伝子を同定


株枯(かぶがれ)病は、1981年に愛知県で初報告された土壌微生物による病害である。苗木の移植などで感染が拡大し、発病すると成木の状態でも短期間で枯死してしまう。

イヌビワは株枯病に強い抵抗性を持つことで知られ、これまでもイチジク栽培種への導入は試みられてきたが、耐病性の判定に多大な労力と時間を要するため、ゲノム情報を利用した育種法が求められていた。

研究では、長いDNA配列を一分子レベルで解析できる技術でイヌビワのゲノム配列データを収集し、3億3160万塩基対のゲノム配列を決定。
イヌビワのゲノム配列中に5万1806の遺伝子を見出し、イチジクとイヌビワの戻し交雑第1世代を遺伝地図上のゲノム配列に位置付けた。

イチジクとの交雑子孫の比較解析により株枯病に強い抵抗性を示す候補遺伝子を同定。遺伝子型の判定に用いることができるDNAマーカーの開発に成功したと発表した。

今回の研究は、文部科学省科学研究費助成事業の基盤研究および先進ゲノム支援の助成によるもので、今後はイチジクに近い雌株系統を幼苗段階で早期に選抜できるようになるほか、品種改良の効率化にも期待されている。

イチジク近縁種イヌビワのゲノム配列を解読しました 〜病害に強いイチジクへの品種改良に期待〜|かずさDNA研究所
https://www.kazusa.or.jp/news/20200207/
かずさDNA研究所
https://www.kazusa.or.jp/
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)果樹茶業研究部門
http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/nifts/
国立遺伝学研究所
https://www.nig.ac.jp/nig/ja/
広島県立総合技術研究所
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/hiroshima-soken/
福岡県農林業総合試験場
http://farc.pref.fukuoka.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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