農研機構とバンダイナムコ研究所、「AIとドローンを活用した新しい牧草育種評価法」を開発

農研機構と株式会社バンダイナムコ研究所は、AIによる深層学習とドローンによる画像を活用した、新しい牧草育種評価法を開発した。今回の成果によって、育種家が約1000株当たり2時間以上をかけて行ってきた牧草育種評価を、同等の精度で5分程度の時間に短縮できるという。

研究で使用されたドローンによる育種畑の空撮画像

研究では、AI学習用の「畑空撮画像」と、植物の品種改良を採点した「育種家評点」のセットを準備。学習用画像、検証用画像、試験用画像を8:1:1の比率で無作為に分類し、学習用画像と育種家評点とのセットで学習を行ったという。

AIによる優良個体選抜の概念図:農研機構提供
学習によって作成された複数のAIモデルに、検証用画像の評価を予測させ、AIが導き出した評価とと育種家の評価を比較して正答率を検証。
正答率の高かったAIモデルに試験用画像を評価させたところ90%以上の正答率が得られた。

今回開発されたAIモデルは、8月下旬から9月上旬の生育ステージを評価するものだが、通常は牧草の生育ステージや太陽の明るさ、地面の色など時期や環境が異なると正しい判断ができず、利用場面ごとに学習させる必要があるという。

研究では明るさや地面の色などの影響についても、種々の撮影条件下で撮られた画像を一緒に学習すれば回避できることが確認されている。

AIやICT、ロボット技術の導入で飼料生産の効率化を


日本の畜産物生産は、AIやICTロボット技術の導入による生産性の向上が求められており、実現させるための技術革新の一つとして飼料作物の育種の効率化がある。
農研機構では、飼料生産における生産性の向上を目指し、最新のICT・AI技術による革新的な育種評価法の開発を進めてきた。今後も多様で有益な品種育成を加速化を目的に、育種法の発展に貢献していく考えだ。


農研機構
http://www.naro.affrc.go.jp/
株式会社バンダイナムコ研究所
https://www.bandainamco-mirai.com/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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