ドローン・ジャパン、「農業用搬送ローバーの複数台同時自律走行の実証実験」の成果を発表

ドローン・ジャパン株式会社は、高性能ドローンに搭載される自律制御機能と高精度測位機能を陸上向けに転用する、準天頂衛星システムサービス株式会社の委託事業「農業用搬送ローバーの複数台同時自律走行の実証実験」の成果を発表した。

この実証実験は、オープンソースソフトウェア「ArduPilot」を活用したドローンの自律制御技術と、「準天頂衛星システム(みちびき)」による高精度測位技術を、陸上で自律走行する運搬機に転用した内容という。同社は今回の成果を参考に「普及価格での製品開発および販売を目指す」としている。


ドローン・ジャパンは、農業分野を中心にドローンを活用した企画立案や関連サービスを展開する企業。2015年の創業以来、多様な農地や農作物を対象にドローンによるリモートセンシングを実施してデータの収集や解析を進めてきた。

日本の農業生産現場は、農業者の高齢化等を原因に深刻な人手不足が顕在化している。
農業者は、特に多くの人手が必要とされる農作物等の運搬作業について、専用の農業機械を用いて省力化を進めてはいるが、用途や目的が限られる等の理由から規格や性能が異なる複数台を保有せざるを得ない状況という。

しかし、導入コスト面等の課題から農業者が複数台を購入・調達することは難しく、特に大きな負担が強いられる重量作物の運搬については、汎用性に優れた安価な製品の開発が急がれてきた。

新たに設計・開発した3種類の自律走行ローバーを用いて農業現場での使用状況を検証


今回の実証実験では、新たに設計開発された特性が異なる3種類の自律走行ローバーを用いて、農業現場での使用状況が検証された。

1.両輪の回転差で走行制御する自作自律ローバー

2.エンジン式市販クローラーの自律化

3.4輪走行車でステアリング走行制御する市販ローバーの自律化

圃場でのテストでは、単車動作の確認、 環境地図の作成、複数動作の確認ほか、畑作露地作物における複数台の自動搬送による検証が実施されたとのこと。

検証の詳細は下記の通りである。

1.空中ドローン用フライトコントローラーの陸上への適用時の課題の整理
・開発の容易性
・操作の簡素化
・総コストの低減

2.陸上における複数機体での精緻な走行検証
・設定コースの正確なトレースの検証
・衝突防止・誤差範囲と搬送への影響の整理

3.既存のGNSS/GPSとみちびき(SLAS/CLAS)の比較検証
・測位精度と実走行への課題整理
・開発の容易性、 操作の簡素化
・エラー事例の抽出と解決のための課題整理
・コスト

4.複数機体の運用に関する技術検証
・複数台同時自律走行
・各役割に関する動作など

実証実験に使用された農業用搬送ローバーの特徴


1.ドローンおよびローバーリモートセンシングデータ解析に基づく搬送設定
2016年から2020年の5か年・55000Ha・25作物分のデータをセンシング解析。各々の収穫適期・収穫量・収穫場所を事前予測し搬送ローバーの稼働時期・走行場所を特定しながら搬送設定。

2.搬送ローバーを制御するオープンソースソフトウェア「ArduPilot」を搭載
ドローン・ジャパンの農業事業とドローン技術者育成事業が連動。農業シーンにおける搬送用ローバー以外の活用・応用も期待されている。

3.高精度測位技術および農業機械工学研究の第一人者・海津准教授との精度実証
東京大学院農学生命科学研究科生物機械工学研究室 海津准教授(ドローン・ジャパン技術顧問)との5年にわたる田畑での実証。

より中小農家が導入しやすい製品へ、2022年度の出荷を目指す


実証実験の結果では、農地を自律走行する農業用搬送ローバーの実現性が確認されたほか、販売価格についても「中小農家が導入しやすいレベルまで抑えられる」とした。また、安全対策についても障害物への対策や振動への対応など製品化へ向けた課題が明確化されたそうだ。

同社は今後、「農業機械メーカーと共同で製品化に向けた開発に取り組む」としており、2021年度中には協力農家と共同で実施するテスト稼働を完了させたい意向を示している。2022年度には製品の出荷を開始したい考えだ。


ドローン・ジャパン株式会社
https://www.drone-j.com/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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