ヤマハ発動機、ドローンを活用した「中山間地スモールスマート農業実証プロジェクト」レポート紹介

ヤマハ発動機株式会社は、農業向けの産業用マルチローターYMR-08を活用した「中山間地スモールスマート農業実証プロジェクト」に参画する農業者をニュースレターで紹介した。

「中山間地スモールスマート農業実証プロジェクト」は、栽培品目を静岡県で露地栽培されるダイコンと定め、笑顔畑の山ちゃんファームや浜松市、静岡県、JA遠州中央、ヤマハ発動機らが参画する実証プロジェクトだ。

実証課題名は、「東海地域の中山間地小規模野菜産地におけるスモールスマート農業による持続可能な地域振興のビジネスモデルの確立」とされている。

出典:ヤマハ発動機ニュースレター
中山間地とは、農業地域の類型において中間農業地と山間農業地を合わせた区分を指す。国土の約7割を山地が占める日本農業は、田畑の移動や斜面での作業など平地と比較して労働負荷が大きいといわれている。

ニュースレターでは、プロジェクトに参画する笑顔畑の山ちゃんファームの代表者・山下光之氏の視点を通じて、プロジェクトの具体的な取り組みを紹介。記事では産業用ドローンYMR-08を用いて過疎や高齢化、後継者不足など地域の農業課題の解決に取り組む山下氏のコメントを掲載している。

「山間地の小規模農家こそロボット技術や情報通信技術の導入が必要」


笑顔畑の山ちゃんファームは、静岡県北西部の山間地に位置する春野町の農業法人だ。代表者の山下氏はこの地で農業を営む4代目で、ダイコン栽培を中心とした農業経営をしている。

笑顔畑の山ちゃんファームの代表者である山下光之氏|出典:ヤマハ発動機ニュースレター
東京からのUターンで家業を継いだという山下氏は、これまで春野町が抱える地域課題の解決に取り組んできた。山下氏が生産から加工までを手がける切干大根「山のするめ大根」は、春野町の特産品としても知られ、同社のホームページでは「山のするめ大根」を使用したおすすめのレシピが紹介されている。

現在は「中山間地スモールスマート農業実証プロジェクト」の一環である、ドローンによる液体肥料の散布やセンシングによる生育管理に挑戦している。「山間地の小規模農家こそロボット技術や情報通信技術の導入が必要」として、産業用マルチローターのオペレーター資格も取得したという。

山間地の耕作放棄地を再生したダイコン畑|出典:ヤマハ発動機ニュースレター
プロジェクトは順調に進行している状況で、「これまでのところ生育状況も順調で、労働負荷の軽減や生産性の向上が実証できれば、同じ畑で冬はダイコン、夏はトウモロコシということも実現できる」と、スマート農業の導入に期待するコメントも寄せている。

今後は、地域の同世代の仲間とスマート農業機材を共同で購入しシェアリングを検討するそうだ。

山下氏のコメント
「実は毎年育てているダイコンでも、最適な追肥の方法が明らかにはなっていません。ただ、ドローンを使えば、畑をいくつかに区切って効率的に生育状況を検証することも可能になります。スモールスマート農業は省力化のためだけでなく、品質向上にもつながるはずです」


笑顔畑の山ちゃんファーム
http://www.yamanosurume.com/
中山間地スモールスマート農業実証プロジェクト
https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/kankyo/smart/project2020-7.html
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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