農研機構、APEC加盟国と共同で収穫前の穀物収量予測技術を開発

農研機構は、APEC気候センター(APCC)と共同で、世界の穀物収量を予測する新たな手法を開発した。

気象予測データを基に穀物の収量を予測


両者が開発した手法は、APEC加盟国の気象機関から提供されるデータを基に作成した気象予測データを農研機構が開発した統計収量モデルに入力して、トウモロコシ、コムギ、コメ、ダイズの収量を120kmメッシュ単位で予測するもの。

出典:農研機構|https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/niaes/143383.html
栽培時期や灌漑面積の割合、気温と降水量に対する収量応答等の作物間差や地域間差を考慮して、前年との収量の差を既存の予測方法よりも1~6カ月月早い、収穫3~6カ月前に予測する。

研究では、米国農務省(USDA)と欧州委員会共同研究センター(JRC)協力の下、米国のトウモロコシ生産州(32州)、欧州のコムギ生産国(12ヶ国)を対象に、この手法を導入。2019年の収量を参考に、従来予測との対比を行ったところ、予測値と実績値の一致が確認できたそうだ。

出典:農研機構|https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/niaes/143383.html
出典:農研機構|https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/niaes/143383.html

近年、世界では食料の輸入割合が増加している国が増えており、主要輸出国の不作や需要の変化、それに伴う国際市場価格の上昇等を理由に食料を安定的に確保することが難しくなりつつあるという。

しかし、食料のサプライチェーンのグローバル化や気候変動に伴う極端気象に起因する主要輸出国の生産影響を予測してサプライチェーンの各所で予め対策を講じることができれば、食料価格の高騰を抑制することができるそうだ。

両者は、今後もこの研究を継続して、2023年までに、この手法を活用した収量予測サービスを提供する世界初のWEBページを開設予定。「国際市場における食料の投機的な価格高騰を抑制すると同時に、気候変動がもたらす食料生産ショックへの対応をサポートする公的な役目を果たしたい」としている


農研機構
https://www.naro.go.jp/index.html
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
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    北島芙有子
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    川島礼二郎
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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