リクルートと信州大学、農地情報整備に向けたAIモデルを共同開発

株式会社リクルートの研究開発機関であるアドバンスドテクノロジーラボは、国立大学法人信州大学農学部と共同で実施した「水田活用における畦畔(けいはん)管理の効率化に関する取り組み」の研究成果を発表した。

中山間地域が抱える農業課題


畦畔(けいはん)とは、水田の回りを囲む盛土部分のことで、水田の水漏れ防止や区画整理、除草・施肥作業に使用する通路の確保などの役割がある。

日本の農地の約4割を占めるといわれる中山間地域の水田は、平地に比べて畦畔の斜面の面積や角度が大きいため、維持するために必要な草刈り作業等を行うことができず、水田を手放す農業者も少なくない状況という。

このような状況を背景に、近年は農地の集積・集約化が進められているが、畦畔斜面の面積や角度が大きい中山間地域の水田の実質的な畦畔面積を正確に測定することは難しく、維持管理に必要な作業コストの算出できないなど、農業経営の改善に向けた取り組みには課題が残されていた。

中山間地域の水田畦畔(赤い枠内が畦畔)
出典|https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2021/0909_9499.html

3つの農地区分を検出するAIモデルを生成


「水田活用における畦畔(けいはん)管理の効率化に関する取り組み」は、航空写真に写る水田の畦畔をAIが認識・判別して、面積や傾斜角等の情報を可視化する技術の開発を目指したものである。

研究では、信州大学農学部が開発した水田の畦畔の正確な地形情報を計測する地理情報システムと長野県林務部が作成した精密標高データ「航空写真×数値標高モデル(Digital Elevation Model※通称DEM)」に、リクルートが事業を通じて培ってきたディープラーニングを中心としたAI技術および画像処理技術を加えて、「水張領域」、 「畦畔領域」、 「その他領域」の3つの農地区分を検出するAIモデルを生成する技術を確立。

出典|https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2021/0909_9499.html
長野県全域にある水田(約5万ヘクタール)を対象に、農地に占める畦畔の割合や面積、傾斜角を計測した畦畔データ(GIS用座標付ポリゴンデータ)を作成して、エリアや特徴が異なるデータを無作為に抽出してみたところ、すべての農地区分で97.7%の精度評価が得られたそうだ。

出典|https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2021/0909_9499.html
今後は、信州大学農学部が研究の主体となり、作成したデータをベースに水田1枚ごとの畦畔データを作成。
長野県以外の地域でも同様の結果が得られる高い汎用性を目標に精度の向上に努めながら、水田の畦畔を含めた全国の農地のオープンデータの公開を通じて、 県や市町村など地域行政と連携する「農地・畦畔見える化プロジェクト」の発展を目指す方針とのこと。

両者は、日本の中山間地域農業の課題の一つである畦畔管理作業にかかる費用(人件費・機械費・燃料費等)を「見える化」することで、「若手農家や農業法人の新規参入を促したい」としている。


アドバンスドテクノロジーラボ
https://atl.recruit-tech.co.jp
国立大学法人信州大学農学部
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/agriculture/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
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    北島芙有子
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    川島礼二郎
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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