農研機構ら、超音波により農薬に耐性を持つ害虫の防除に成功

農研機構は、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社と行った共同研究で、超音波による振動を照射してタバココナジラミとワタアブラムシを防除することに成功した。

出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/153210.html

タバココナジラミとワタアブラムシは、植物の栄養を直接吸汁して、病原菌が好む栄養素を排泄するなど、農作物に深刻な被害を与える農業害虫として知られている。

しかし、現在販売されている既存の化学農薬に強い抵抗性を示すなど、有効な防除の方法は見つかっておらず、高品質な農作物を生産していく上での重要な課題になっていた。

タバココナジラミの成虫(左:オス・右:メス)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/153210.html

ワタアブラムシの無翅成虫と幼虫
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/153210.html

振動を感知して飛び立つ習性を利用


両者が開発した技術は、世界中の多くの昆虫が持つ「振動を感知して飛び立つ習性」を利用したもの。

研究では、農作物の葉の上に乗せたタバココナジラミとワタアブラムシを対象に、人工授粉用の超音波集束装置を使用して、超音波による振動への反応を観察。

その結果、タバココナジラミ成虫の約60%、ワタアブラムシの有翅成虫の25%、無翅成虫の14%が葉の上から離脱したほか、「超音波による振動を1日4時間与えるとタバココナジラミの産卵数が約54%減少する」ことが判明したという。

研究で使用した超音波集束装置。物体に非接触で振動を与えることができる。
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/153210.html


タバココナジラミ成虫に非接触力を与えた場合の離脱率(%)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/153210.html


ワタアブラムシの有翅成虫または無翅成虫に非接触力を与えた場合の離脱率(%)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/153210.html


タバココナジラミの産卵数(雌雄10匹ずつを放飼してから2日後の合計産卵数)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/153210.html

参考動画:集束超音波で葉裏にいるタバココナジラミを離脱させる様子


回収装置のイメージ

今後は、タバココナジラミやワタアブラムシ以外の害虫に対しても同様の効果が見込めるかの検証を行う予定で、将来的には離脱した害虫を粘着板や吸引機等で回収する装置の開発も検討していくとのこと。

両者はこの研究を通じ、既存の化学農薬に強い抵抗性を持つ農業害虫に有効な新たな防除方法を確立したい考えだ。


農研機構
https://www.naro.go.jp/
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
https://pixiedusttech.com/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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