旭化成とイオンアグリ創造、バイオマスを活用したトマト養液栽培の実証実験を開始

旭化成株式会社とイオンアグリ創造株式会社は共同で、「プロバイオポニックス技術」を用いたトマトの養液栽培の実証実験を2023年3月より開始した。

「プロバイオポニックス技術」のイメージ図

現在、日本の農業分野では、食品残渣や生物由来の有機物を利用したバイオマス肥料の活用が進められている。

しかし、水中では植物への吸収を促進する「硝酸態窒素に分解する働き」が効率良く行われないことから、バイオマスを活用した養液栽培を実現するのは難しいとされてきた。

このような状況を受け、農研機構では、水中でも硝酸態窒素への分解が進む「プロバイオポニックス技術」を確立することに成功したが、以下を要因にその普及が妨げられてきたという。

  • 液温や溶存酸素量などの状態によって、与えるバイオマスの適量が変わるため、適時・適量を見極めるには、長年の経験が必要になる。
  • 与えるバイオマスの量が多過ぎると植物が育たず、逆に少な過ぎると収穫量が減ってしまう。
  • 一度に大量のバイオマスを与えられないため、多くの労力が必要になる。

「Nature Ponics®」を活用


今回の実証実験では、環境情報などを基にバイオマスの適時・適量を計算し、農作物の成長に必要な養液を自動で製造するシステム「Nature Ponics®」を導入。缶詰工場で魚類を加工する際に生じる煮汁など、国内に存在するバイオマス資源を活用したトマトの養液栽培を実施している。

現在は、店頭での販売を目標に、化学肥料との生育差などの定量評価を行っているとのこと。

「Nature Ponics®」のロゴマーク

「Nature Ponics®」(左)と分解用のタンク(右)

実証実験が行われているイオン埼玉久喜農場

両社の役割と今後のスケジュールは以下の通り。

両社の役割
旭化成:実証のシステム設計、設置、機能性成分評価
イオンアグリ創造:システムの運用、栽培、収穫量評価、販売、市場調査

今後のスケジュール
2023年4月:「プロバイオポニックス技術による養液栽培の農産物」JAS認証取得の準備開始
2023年7月:「プロバイオポニックス技術による養液栽培の農産物」JAS認証取得、店頭販売開始

両社は、今回の実証実験を通じ、環境負荷の低減と安定した収益を確保する養液栽培の確立を目指す構えだ。


旭化成株式会社
https://www.asahi-kasei.com/jp/
イオンアグリ創造株式会社
https://aeonagricreate.jp/
「Nature Ponics®」紹介動画
https://www.youtube.com/watch?v=NqkyB9YmXOg
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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