株式会社丸山製作所は、刈払機をはじめとする園芸・農業・林業などで用いられる小型作業機（OPE）製品に搭載可能な、100％水素燃料の小型2ストロークエンジンの安定運転に成功した。

これにより、排出ガスのクリーン化を実現し、環境保全とプロユースの作業性の両立、カーボンニュートラルに向けた水素利用研究に取り組んでいくという。




農業において、小さな圃場の耕運機や除草機などには、小排気量のガソリンエンジンが用いられてきた。近年になって、カーボンニュートラル社会の実現や、燃料費の高騰やメンテナンスの容易さなどもあり、CO2を排出するエンジンからモーターへの電動化が進んできている。

ただ、高負荷で長時間の作業が必要なプロ向け作業機においては、稼働時間や発揮できるパワーの問題など、過酷な使用条件が求められ、安定したパワーを維持しやすいエンジンが必要な場面は多く、すべてを電動化することは困難と言われてきた。

今回、丸山製作所が安定運転を成功させた「小型2ストローク水素エンジン」は、エンジンの性能を発揮しつつ、環境にもやさしいといういいとこ取りなエンジンだ。

水素を燃料とすることで、排出するガスはほぼ水（H2O）となり、作業機のクリーン化を実現。基本的な構造などはガソリンエンジンと同様で、水素燃料に最適化させることで開発できることから、低コストで開発できるとして自動車業界などでも究が進められている。

また、エンジンを真横にしたり逆さにしても問題がないため、作業機への搭載場所や方向などの自由度も格段に向上すると見込まれる。

作業機における2ストローク水素エンジンの特長

2ストロークエンジンは、自動車などに使用される4ストロークエンジンに比べシンプルな構造のため、人が手に持ったり背負ったりするための小型軽量化が可能になるというメリットがある。また、ガソリンエンジンと異なり、排気弁や吸気弁といった動弁系を持たないため、メンテナンス性にも優れる。

2ストローク水素エンジンの課題としては、燃焼室内の残留ガスが火種となる自着火現象が発生する「プレイグニッション」があった。丸山製作所は、水素燃料をエンジンに導入する場所とタイミングを見直し、圧縮前の低温環境の燃焼室へ燃料を導入。また、オフセットシリンダーを採用することで、高温の燃焼済みガスの残留を低減し、さらに低温の空気のみで掃気工程を行うことによって燃焼室内の温度低減を実現した。これにより自着火現象による不具合を防ぎ、水素燃料での安定運転が可能になったという。

また、エンジンをスムーズに作動させるための潤滑オイルは、クランクケースの別通路からクランクシャフトへ供給し、コンロッドのクランクシャフト側のベアリングに直接オイルを供給する構造とした。これにより、現行のガソリンエンジンと同等の8000rpm以上の高速運転も可能となっている。

2ストローク水素エンジン燃焼のしくみ

今後は水素燃料のカセットボンベ化も

テストでは、量産タイプの排気量80cm3の単気筒2ストロークガソリンエンジンをベースに試作機を作成。水素燃料による安定運転を実現した。

2023年11月現在は、試験ベンチ上のエンジンで、水素は外部供給設備での運転だが、今後はカセットボンベ方式の水素燃料の採用、部品の小型化を図り、屋外作業が可能な試作機を作成予定だという。


株式会社丸山製作所
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