国際農研ら、西アフリカの重要作物「ササゲ」に対する気候変動の影響を収量予測モデルにより推定
国際農研、農研機構、国立環境研究所、東京大学、ブルキナファソ農業環境研究所(INERA)らの共同研究グループは、西アフリカの重要なタンパク質源であるマメ科作物のササゲについて、圃場栽培データに基づき乾燥や過湿条件での収量予測精度を改善した。
気候変動により西アフリカ半乾燥地域では降雨頻度が増すと予測され、過湿になりやすい土壌では多雨年にササゲ収量が低下すると推定した。これにより、干ばつだけでなく、過湿への対策も必要になることが示唆された。
サハラ砂漠の南に位置するアフリカ西部には、スーダン・サバンナと呼ばれる年間降水量が600~1000ミリ程度の半乾燥地域が広がっており、最貧国とされるブルキナファソ、マリ、ニジェールなどが含まれる。これらの地域は特に雨が少なく栽培可能な作物が限られているため、乾燥に強いマメ科の作物であるササゲが広く栽培されている。
しかし、土壌が貧栄養であるため収量が極めて低く、気候変動による豪雨や干ばつなど極端気象の影響が顕在化することが懸念されていることから、将来の生産変動の予測やその要因の特定など、気候変動への対策が急務となっている。
また、従来の収量予測モデルは、環境ストレスの影響が少ない地域での栽培試験データに基づくものが多く、その利用は先進国に限られていた。
今回の研究で用いた作物収量予測モデルは、国際農研がこれまでにブルキナファソで蓄積したササゲの栽培データを農研機構が開発した収量予測モデルに適用することで、干ばつや過湿条件での予測精度を改善。
さらに、国立環境研究所や東京大学などが開発に貢献してきた第6期結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)および地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)を使用して、今世紀半ばまでのササゲ収量に対する気候変動の影響を推定した。
結果、西アフリカの半乾燥地域では、今後も引き続き干ばつは生じるものの、その被害は軽減する一方、降雨日数が増加し、土壌の過湿による被害が深刻化するとの予測が示された。
この結果は、気候変動がアフリカ貧困地域の食料生産に及ぼす影響について新たな知見をもたらすとともに、干ばつだけでなく湿害にも強い品種開発など、湿害対策の必要性を喚起するきっかけになると期待される。
なお、本研究成果は、国際科学専門誌「Agricultural and Forest Meteorology」(日本時間2023年11月20日)に掲載された。
論文情報
雑誌名:Agricultural and Forest Meteorology
論文タイトル:Increasing heavy rainfall events and associated excessive soil water threaten a protein-source legume in dry environments of West Africa
著者:Iizumi, T., Iseki, K., Ikazaki, K., Sakai, T., Shiogama, H., Imada, Y., Batieno, B.J.
国際農研
https://www.jircas.go.jp/ja
農研機構
https://www.naro.go.jp/
国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/
東京大学
https://www.u-tokyo.ac.jp/
気候変動により西アフリカ半乾燥地域では降雨頻度が増すと予測され、過湿になりやすい土壌では多雨年にササゲ収量が低下すると推定した。これにより、干ばつだけでなく、過湿への対策も必要になることが示唆された。
アフリカにおける気候変動リスクに新たな知見をもたらす
サハラ砂漠の南に位置するアフリカ西部には、スーダン・サバンナと呼ばれる年間降水量が600~1000ミリ程度の半乾燥地域が広がっており、最貧国とされるブルキナファソ、マリ、ニジェールなどが含まれる。これらの地域は特に雨が少なく栽培可能な作物が限られているため、乾燥に強いマメ科の作物であるササゲが広く栽培されている。
しかし、土壌が貧栄養であるため収量が極めて低く、気候変動による豪雨や干ばつなど極端気象の影響が顕在化することが懸念されていることから、将来の生産変動の予測やその要因の特定など、気候変動への対策が急務となっている。
また、従来の収量予測モデルは、環境ストレスの影響が少ない地域での栽培試験データに基づくものが多く、その利用は先進国に限られていた。
今回の研究で用いた作物収量予測モデルは、国際農研がこれまでにブルキナファソで蓄積したササゲの栽培データを農研機構が開発した収量予測モデルに適用することで、干ばつや過湿条件での予測精度を改善。
さらに、国立環境研究所や東京大学などが開発に貢献してきた第6期結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)および地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)を使用して、今世紀半ばまでのササゲ収量に対する気候変動の影響を推定した。
結果、西アフリカの半乾燥地域では、今後も引き続き干ばつは生じるものの、その被害は軽減する一方、降雨日数が増加し、土壌の過湿による被害が深刻化するとの予測が示された。
この結果は、気候変動がアフリカ貧困地域の食料生産に及ぼす影響について新たな知見をもたらすとともに、干ばつだけでなく湿害にも強い品種開発など、湿害対策の必要性を喚起するきっかけになると期待される。
なお、本研究成果は、国際科学専門誌「Agricultural and Forest Meteorology」(日本時間2023年11月20日)に掲載された。
論文情報
雑誌名:Agricultural and Forest Meteorology
論文タイトル:Increasing heavy rainfall events and associated excessive soil water threaten a protein-source legume in dry environments of West Africa
著者:Iizumi, T., Iseki, K., Ikazaki, K., Sakai, T., Shiogama, H., Imada, Y., Batieno, B.J.
国際農研
https://www.jircas.go.jp/ja
農研機構
https://www.naro.go.jp/
国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/
東京大学
https://www.u-tokyo.ac.jp/
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