クボタら、水田由来のメタン排出削減に向けた共同実証をフィリピンで実施

株式会社クボタ、クレアトゥラ株式会社、東京ガス株式会社の3社は、水田由来のメタン排出削減につながる水管理手法である「Alternate Wetting and Drying(以下、AWD)」の普及と効果検証に向けた実証事業をフィリピンで実施していると発表した。

フィリピン農家へのトレーニングの様子

水田由来メタン削減へ 日本企業の挑戦


3社が行っている実証事業では、農家に対し種子の選定方法や土壌の管理方法、AWD実施方法を含む農業の高度化に資するトレーニングを実施するというもの。これにより、AWDの普及や農家の収益拡大、カーボンクレジット創出に必要なデータ取得に向けた施策の検証を行い、課題やリスクを抽出することが目的だ。

AWDとは、水稲の栽培期間中に水を抜いて水田の地表面を十分乾燥させた後、再度湛水するという灌水制御を複数回にわたって繰り返す水管理手法で、メタンの排出削減につながると期待されている。


実証期間は2023年9月から2024年5月までで、フィリピンのパンガシナン州にある約1300haの水田面積を対象に、約600軒の農家が参加している。

3社の役割は以下の通りだ。

株式会社クボタ
ASEAN地域の水稲栽培に関する豊富な知識とネットワークを提供。
クレアトゥラ株式会社
プロジェクト開発とカーボンクレジットの創出に関する専門知識を提供。
東京ガス株式会社
カーボンクレジット分野での信頼性確保に向けた取り組みを提供。

AWDを実施することで、水田からのメタン排出を約30%、灌漑用水の使用量を6~47%削減することが可能とされている。メタンは二酸化炭素に比べて28倍の温室効果を持ち、特に稲作が盛んなフィリピンでは、全産業で排出される温室効果ガスの約20%が水田由来のメタンであると推定されている。

AWDに適した栽培手法を行うことで、収量増加が見込め、農家の収入向上への貢献も期待できるという。


3社は、同実証の成果に基づき、より実効性と信頼性が担保された方法論を構築し、ASEAN地域での農業分野における初の民間JCMプロジェクト登録および高品質なカーボンクレジットの創出を目指すという。

民間JCMは、民間資金を中心とするJCM(二国間クレジット制度)で、日本の持つ低炭素技術や製品、システム、サービス、インフラを途上国に提供することで、途上国の温室効果ガスの削減など持続可能な開発に貢献し、その成果をクレジット化し、二国間で分けあう制度「Joint Crediting Mechanism(二国間クレジット制度)」のうち、政府資金を前提としない民間資金を中心とする事業者に対してクレジットを付与する仕組みだ。


株式会社クボタ
https://www.kubota.co.jp/

クレアトゥラ株式会社
https://www.creattura.com/
東京ガス株式会社
https://www.tokyo-gas.co.jp/index.html
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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