ナガセケムテックスと⼤阪環農⽔研、微生物農業資材を用いた「難波葱」の減肥料栽培で共同研究開始

ナガセケムテックス株式会社と地方独立行政法人大阪府立環境農林水産研究所(以下、大阪環農水研)は、純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材を、⼤阪府に“なにわの伝統野菜”として認証された野菜「難波葱」に適⽤する共同研究を開始した。

減肥料栽培による環境配慮型農業の実現、高温下での安定生産、地産地消野菜による地域貢献および地域活性化を目指すという。


気候変動下で安定生産を実現する栽培方法を構築・確立


ナガセケムテックスは、化学合成・配合設計・バイオの技術を持ったNAGASEグループ4社が融合した化学メーカー。植物の根と共⽣することで、リンなどの無機栄養素と⽔分を供給し⽣育を促進する土壌微生物「アーバスキュラー菌根菌」を使用した農業資材の開発を進めている。

大阪環農水研は、1919年7月に設立された大阪府立農事試験場などの流れを汲む組織で、2007年4月に環境情報センター・食とみどりの総合技術センター・水産試験場を統合し発足。地域に根差した試験研究機関としてさまざまな取り組みを行っている。

かつて⽇本の農地では、植物の⽣育に不可⽋であるリン酸が少なかったため、国内の畑地ではリン酸肥料が多く⽤いられてきた。しかし、リン酸肥料を投⼊し続けたことで、現在ではリン酸が過剰に蓄積し、⽔系の富栄養化などを引き起こしているという。

また、日本ではリン酸肥料の原料となるリン鉱⽯をほぼ輸⼊に頼っているため、価格が国際動向の影響を受けやすいほか、リン鉱⽯の加⼯と輸送には多くの化⽯燃料を使⽤することから、気候変動への影響が懸念されている。

これらの問題の対応策の⼀つとして、アーバスキュラー菌根菌を利⽤したリン酸減肥技術が古くから注⽬されているが、アーバスキュラー菌根菌を圃場で複数年に渡って施⽤した例は少なく、多くの農家は経営上のリスクを考慮して、従来の栽培⽅法を切り替えにくいという課題があるという。

これらの課題を解決するため、ナガセケムテックスは2023年度に⼤阪環農⽔研に委託して圃場栽培研究をスタートした。

現在、⼟壌改良資材として市販されている多くのアーバスキュラー菌根菌資材は、植物との共⽣培養で⽣産されているものが⼀般的となっている。しかし、⽣産効率が良くなかったことから、同社はアーバスキュラー菌根菌の純粋培養技術を用いて⼤量に安価に製造する開発を進めている。

2023年度の圃場試験では、開発を進めている純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材を適⽤した難波葱を⼤阪環農⽔研の試験圃場で栽培し、慣⾏栽培との比較を行った。その結果、リン酸施肥を低減しても収量は低下しないことが確認された。

試験栽培中は、例年になく気温が⾼い状況が続いたが、⾼温下の環境でも平年の慣⾏栽培と⽐較して⼀定の増収効果を得ることができた。

そこで、2024年度からは、先⾏の委託研究の再現性並びに年次変動の確認や実証を⾏うため、研究形態を単年度の受委託から、両者による共同研究へと切り替え、本格的に進めていくことを決定した。

具体的には、両者の研究担当者が知⾒を持ち寄り、純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材を施⽤した難波葱を、露地の⾼温下で、リン酸施肥を段階的に減らした圃場に定植し、収量や品質を調査する。

また、⼤阪環農⽔研が栽培前後の⼟壌中のリン酸を含む各栄養素を測定し、ナガセケムテックスがアーバスキュラー菌根菌の定着を評価することで、難波葱栽培における純粋培養アーバスキュラー菌根菌資材の有⽤性と⼟壌中の養分の蓄積・減少を評価していく。

これらのデータを複数年に渡って取得した後、慣⾏栽培と⽐較することで、リン酸施肥を何割削減できるか、そして投⼊した資材の効果が何年継続するのかを評価する。

両者は、⾼温下における純粋培養アーバスキュラー菌根菌を利⽤した減肥栽培の安定⽣産を実現する栽培⽅法を構築・確⽴するほか、この栽培技術を難波葱という⼤阪の特産品に適応することで、地産地消を促進し、地域貢献及び地域活性化を目指すとしている。


ナガセケムテックス株式会社
https://group.nagase.com/nagasechemtex/
地方独立行政法人大阪府立環境農林水産研究所
https://www.knsk-osaka.jp
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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