農研機構と岩手大学、北陸地域における「水稲初冬直播き栽培」を実証

農研機構中日本農業研究センターと岩手大学の研究グループは、北陸地域において水稲初冬直播き栽培の実用性を実証し、留意点を明らかにした。


収量・品質ともに良好な結果に


北陸地域では、耕地の9割が水田であり、高齢化による離農が進行する中で、比較的若い生産者に水田が集まりつつあるが、従来の水稲移植栽培だけでは作付けがままならなくなり、耕作放棄の増加が懸念されている。

この状況を打開するために、農研機構中日本農業研究センターと岩手大学の研究グループは、水稲初冬直播き栽培の実用性を北陸地域で検証し、その結果と注意点を明らかにした。

水稲初冬直播き栽培とは、初冬に田んぼにタネを播き、そのまま雪の下で越冬、春に発芽・苗立ちさせる新しい栽培法で、雪国・北国の短い春に集中する作業を分散できるというメリットがあるという。

試験では、北陸地域で普及している水稲品種「ちほみのり」「つきあかり」「みずほの輝き」「にじのきらめき」を11月中旬に手播きし、翌年には34~68%の出芽率が得られることが確認された(表1)。

また、前年に収穫した種は当年に収穫した種よりも出芽率が低いことや、チウラム水和剤で種をコーティングすることで出芽率を向上させることなど留意点も明らかになった。


当年産種子の準備を早期に行うため、早く収穫できる多収量で味の良い品種「つきあかり」を用い、安定した収量を確保するための機械播種量を検討したところ、耕起同時播種での苗立ち率は概ね25%程度であり、当年産種子約11kg/10aが必要と推定された。

実証試験として「つきあかり」を用いた生産者圃場での初冬直播き(11月中旬~12月上旬)では、肥効調節型窒素肥料を播種時に土中施用することで、全刈り精玄米重が411~530kg/10aとなり、収量500kg/10aを超える実用的な事例が確認された(表2)。

また、玄米の外観品質も移植栽培と比較して遜色なく、玄米タンパク質含有率も早生品種として問題のない数値であった。


これらの知見は、北陸地域における初冬直播き栽培の初めての報告であり、本技術を体系的に確立するための基礎的知見になるという。


農研機構
https://www.naro.go.jp/
岩手大学
https://www.iwate-u.ac.jp/index.html
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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