クボタ、稲わらからバイオ燃料などを製造する実証実験を秋田県でスタート

株式会社クボタは、秋田県南秋田郡大潟村に、稲わらからバイオ燃料などを製造する実証実験施設を建設し、メタン発酵設備が本格稼働したことを発表した。

この実証実験は、京都大学や早稲田大学と連携し、環境省の「地域資源循環を通じた脱炭素化に向けた革新的触媒技術の開発・実証事業」の一環として行われるもので、期間は2029年度までを予定している。


稲わらの有効活用で環境負荷軽減へ


日本国内では、年間約800万トンの稲わらが発生しており、その多くは農地にすき込まれている。すき込まれた稲わらは肥料になるが、温室効果がCO2の28倍ともいわれるメタンガスを大量に発生させてしまうのが問題だ。

稲作由来のメタンガスは、日本の温室効果ガス排出量の約1.2%を占めており(2022年度)、脱炭素化に向けた大きな課題となっているという。

今回行われる実証では、クボタのメタン発酵技術や京都大学と早稲田大学が保有する触媒に関する技術を活用し、稲わらからバイオガスやグリーン水素、グリーンLPGなどのバイオ燃料を製造し、地域の農業や家庭で利用する仕組みの構築に取り組む。

また、稲わらからバイオ燃料と同時に製造されるバイオ液肥を農業に利用することで、地域資源の循環システムを構築し、稲わらの地産地消型エネルギー資源としての有効活用を目指すという。


稲わらの収集やバイオ燃料・バイオ液肥の地域利用に向けた仕組みづくりのための課題抽出や検証を行うには、地域に根差したフィールド実証が重要とされている。

日本有数のコメの生産地として知られる大潟村は、大量の稲わらが発生することに加え、同村の「バイオマス産業都市構想」には稲わらをメタン発酵させて製造するバイオガスや液肥の活用が含まれている。そのためクボタは、同実証事業との親和性が高いと判断し、大潟村でフィールド実証を行うことにした。

今回の実証実験における3者の役割は以下の通りだ。

株式会社クボタ
・稲わら収集からバイオ燃料、バイオ液肥の地域利用までの仕組み作り
・稲わら由来のバイオ燃料、バイオ液肥の製造および利用方法に関する技術開発
京都大学
・多元素ナノ合金触媒の開発
早稲田大学
・触媒の潜在能力を最大限に引き出す反応プロセスの開発
・稲わら由来物からグリーン水素、グリーンLPGへの変換技術の開発

今後は、稼働中のメタン発酵設備に加え、グリーン水素やグリーンLPGの製造設備を追加で設置する計画を進め、大潟村で収集された稲わらを原料とするバイオ燃料の製造実験が行われる。

また、秋田県立大学および大潟村との共同研究も並行して進めており、稲わら収集による温室効果ガスの削減効果やバイオ液肥の肥料効果の確認も行うとしている。


株式会社クボタ
https://www.kubota.co.jp/
京都大学
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja
早稲田大学
https://www.waseda.jp/top/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
パックごはん定期便