“DJ農家”が取り組むスマート農業アライアンス 【青森県・大平ファーム(前編)】

株式会社オプティムアグリ・みちのくのスマート農業の実施&収穫物の全量買取を行う「スマート農業アライアンス」参加生産者の声を聞くインタビュー企画。

今回は、青森県黒石市で米、りんご、にんにくを栽培している株式会社大平ファームの大平裕和さんです。

大平ファームのスタッフのみなさん。中央が大平さん

大平ファームは役員4人、社員5人の9人で営む農業法人。20年ほど前はりんごをメインにしていましたが、人材不足などの課題もあり、現在は春から秋にかけて33haの米をメインに、りんごを1ha、にんにくを20a栽培しています。2019年からオプティムのスマート農業アライアンスに参加し、「スマート米」の栽培をスタートさせました。

前編では、本格的なDJと農業を兼業しているという大平さんに、農業への思いや、スマート農業に取り組む理由をうかがいました。


音楽も農業も。好きを実現するDJ農家

ーーまず、「DJ農家」という異色の経歴についてお聞かせください。

実家はもともとりんご農家で、米をメインに栽培するようになったのは約20年前でした。ちょうど自分が高校を卒業して就農するタイミングで、リンゴ栽培における人材確保の難しさを懸念して精米所を建てたのがスタートです。

その頃から、本格的に米農家として米の栽培を始め、当初は3ヘクタールしかなかった圃場を家族で少しずつ拡大していき、現在は米が33ヘクタール以上と、収益の約80%を占めるほどになりました。

同時に、若い頃からDJもしているんですが、いつの間にかそっちが本格的になってしまって(笑)。でも農業は就業時間の調整ができるので、家業を継ぎながらも自分のやりたいことが実現できたんです。あと、トラクターに乗っているときに好きな音楽を聞くことができるところもよかったですね(笑)。現在41歳ですが、農作業の傍ら、変わらずDJを続けています。

ターンテーブルを操る大平さん


スマート米には「つがるロマン」を栽培

ーー音楽と農業、どちらも両立されているのはすごいですね。しかも、大平ファームとして会社を立ち上げたのは昨年とうかがいました。

そうですね、米の栽培を始めてからは約20年ですが、会社を立ち上げたのは2018年からで、まだ2年目です。

育てているのは、「青天の霹靂」「つがるロマン」「まっしぐら」「ムツニシキ」の4銘柄です。割合としては「青天の霹靂」が20%、「つがるロマン」「まっしぐら」がそれぞれ40%ずつ、「ムツニシキ」は50アールほどとなっており、すべて慣行栽培です。

オプティムさんのピンポイント農薬散布テクノロジーを使って栽培しているのは「つがるロマン」。耐冷性やいもち病抵抗性を維持しながら食味と品質を向上させ、青森県産米のグレードアップを担う品種として生まれた、コシヒカリの孫にあたる品種です。

「まっしぐら」の登場から多収量な品種が出てきて、収穫量はだいぶ安定しています。それに合わせて、地域では経営の方向性を考える人も出てきましたね。収量を重視する人もいれば、味で勝負したいという人もいます。うちは「つがるロマン」も「まっしぐら」も、同じくらいの比率で、ある意味どちらも重視しているといえるかもしれません。

販売先は農協のほか、米穀店に卸したり、(個人的に)老人ホームや個人飲食店にも出荷しています。農協は「青天の霹靂」のみ卸しています。


多品種栽培で収穫量と味の両方を重視

ーー今年は台風などで西日本を中心に農作物が大打撃を受けましたが、黒石市はどうですか?

黒石市のいいところは、自然が豊かで空気が美味しいということなんです。食べ物も間違いなく美味しいですよ。近年は稲刈り時期に雨が降ることは多いですが、大きな台風の直撃などもなく、穏やかな地域です。

ただ、5年ほど前に不作に見舞われ、農協への卸し価格で60kgあたり7000円台になったことがありました。県で値段が決められるため仕方ない面はありますが、米屋に卸す際にも価格は足並みをそろえることになります。収量とは別に、取引価格の面で不安になるのは、どの地域の米農家も同じですね。

そんななかで、今年は「つがるロマン」をピンポイント農薬散布テクノロジーで栽培しているので、全量買取によって確実に米を売ることができる点で、スマート農業アライアンスはかなり心強いです。今年の米の価格はまだ正確にはわからないですが、昨年と変わらない水準と思ってみています。売り上げとしては、例年通りに見込めそうです。

ーー「つがるロマン」という品種の特徴は? 

「つがるロマン」は食味が非常に安定しています。作り始めてからもう15年経っているので、クセなども把握してきていると言えます。これから青森で就農を考えている人にはオススメの品種です。

現在は、食味を上げるために、実がなるときと穂がそろったときに液体肥料を散布しています。少しでも食味に変化が出てくれればなぁと。


ーー大平ファームのお米のウリはどんなところでしょうか?

そもそも会社を始めたのが昨年からで、それまではアルバイトさんにお願いしていましたからね。うちの社員は会社に入ってから農業を始めた人が多いので、本格的に農業を始めて2年くらいなんです。基礎ができていない状態で、有機などの高い技術が必要とされる方法を選ぶのは難しいと考えていまして……。

だから、社員全員が一通り農業の流れなどを覚えたタイミングで、各種の認証なども取りたいと思っています。ゆくゆくは、農薬をあまり使っていない米だということを明記できるように、大平ファームとしても品評会などの評価もこれから取っていきたいと思っています。


(後編に続く)

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WRITER LIST

  1. 川島礼二郎
    川島礼二郎(かわしまれいじろう)。1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  2. 蒼井ネコ
    農学系の兼業ライター。某大学農学部、某農業レストラン、某飲料会社商品企画を経て、現在は某マルシェアプリでwebマガジン編集として働きながら、猫様のお世話をしている。
  3. 大坪雅喜
    おおつぼまさのぶ。1973年長崎県佐世保市生まれ。FARM DOI 21代表(農業者)・アグリアーティスト。 早稲田大学第一文学部史学科考古学専修卒業。学生時代に考古学、水中写真、自然農という世界を覗き込む。2006年9月、義父が営む農業の後継者として福岡県大川の地で就農。農業に誇りを持ち、未来には普通となるような農業の仕組みやサービス(カタチ)を創造していくイノベーションを巻き起こしたいと考える。縁のある大切な人たち(家族)と過ごす物心ともに満たされた暮らしの実現こそが農業経営の最終的な目的。現在、佐賀大学大学院 農学研究科 特別の課程 農業版MOT 在籍中。
  4. 柴田真希
    管理栄養士。㈱エミッシュ代表取締役。Love Table Labo.代表。27年間悩み続けた便秘を3日で治した雑穀や米食の素晴らしさを広めるべく、雑穀のブランド「美穀小町」を立ち上げる。現在はお料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メー カーや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。『私は「炭水化物」を食べてキレイにやせました。』(世界文化社)、『はじめての酵素玄米』(キラジェンヌ)など著書多数。
  5. 大城実結
    おおしろ みゆう。フリーランス編集ライター、大城文筆事務所所長。一次産業ほか地域文化、アウトドアなどお天道様系分野を専門に編集・執筆している。自転車で鍛えた脚力を活かし、農家さんのお手伝いをしながらインタビュー取材を積極的に行う。玉掛け免許と床上式操作クレーン免許所持。