「スマート米栽培」を初めて実施した農家に聞くAI×ドローンのメリット

11月15日、福岡市でお披露目された株式会社オプティムの「スマート米」。会場には、福岡、大分、佐賀の3県で、ピンポイント農薬散布テクノロジーを駆使して行う「スマート米栽培」により、実際にお米を栽培した3人の生産者の姿がありました。

お米のプロがIT企業とタッグを組んで挑戦した初の試み。それぞれのコメの特徴と、実際に「スマート米栽培」を実施してみた感想、今後の抱負をおうかがいしました。

■福岡、大分、佐賀の栽培農家も来場した、スマート米試食会の模様はこちら
AI×ドローンで栽培した「スマート米」に見るオプティムの未来戦略



病害虫の早期発見を可能に──大分県・酒井勝洋さん

大分県宇佐市で、大規模な米、麦、大豆の栽培に取り組んでいる若手生産者の酒井勝洋さん。ドローンを使ったコメ作りの話を初めて耳にした時、「病害虫の早期発見に役立てたい」と考えました。

九州地方の米農家は、毎年夏になるとウンカの被害に悩まされます。それは体長5ミリほどの昆虫で、中国大陸方面から気流に乗って飛来し、田んぼで大量発生。大きな被害をもたらします。

ウンカは稲の株元に寄生して、中から汁を吸い出し枯らしてしまいます。9月になると田んぼの一部が丸く枯れ出すのを「つぼ枯れ」と呼び、そこから徐々に広がっていきます。その被害は甚大で、2013年のウンカによる被害金額は105億円にものぼりました。

これを食い止めるには、ウンカの居場所をいかに早く突き止めるかがカギになります。でも、30ヘクタールもの圃場を管理している酒井さんには、すべての田んぼを隈なくチェックすることはできません。

「人間が田んぼを地上から見て観察するには、限界があります」

今、全国の米農家では、高齢化と担い手不足が続いていて、酒井さんのように若くてやる気のある作り手に、作業が集中する傾向があります。機械化、省力化……あらゆる手立てを使って大型化を進めていますが、きめ細やかに田んぼを観察するのはどうしても難しくなりがち。

そんな時、ドローンが酒井さんの「目」となって、いち早くウンカの食害の跡を発見してくれるのです。

酒井勝洋さんと「にこまる」

酒井さんは今年、初の「スマート米」として、「にこまる」を栽培しました。2002年に誕生したこの品種は「笑みがこぼれるほどおいしく、丸々とした粒張りのよさ」があることから「にこまる」と命名されました。

九州でずっと栽培されてきた「ヒノヒカリ」に代わる、暑さに強い品種として期待されています。食べやすく、甘みもあり、炊きたてはピン! と粒が立つ。そんな特長があります。

酒井さんは今年、80アールの田んぼでにこまるの試験栽培を行いました。その結果は?

「今年はウンカが来なくて、ほとんど被害はありませんでした。最初の除草剤以外は、農薬を散布せずに収穫することができたんです」

ウンカの食害によるつぼ枯れは見られず、ほぼ無農薬で栽培できたことはうれしい反面、ピンポイント農薬散布テクノロジーの効果を期待していただけに、ちょっとフクザツな心境でもあります。

それでもこの夏、大分県では「防除奨励時期」が設定され、多くの農家が農薬の全面散布を行いました。オプティムのドローンによる圃場の解析は、「どこに散布すべきか」を知らせるだけでなく、「ここは散布の必要がない」ことも教えてくれるので、結果的に散布量を大幅に減らすことができるのです。

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環境保全型農業の実現に──福岡県大木町・真辺栄一さん

ベテランの真辺栄一さんが暮らす、福岡県三潴(みずま)郡の大木町は、昔から米づくりがさかんな地域。真辺さんの父は、県の改良普及員として活躍。戦後、日本の食糧増産に貢献されたそうです。

その後、減反政策が始まり、日本の米をめぐる状況はめまぐるしく変わりました。父の遺志と農地を受け継いだ真辺さんが今、目指しているのは、環境保全型の農業。田んぼに暮らすカエルやメダカ、水生昆虫など、さまざまな動植物と共存しながら、環境を守り、米を作り続けるやり方です。

「環境保全」と口で言うのは簡単ですが、実際に取り組むのは本当に大変。除草剤を減らせば雑草が生い茂り、殺菌・殺虫剤を使わなければ害虫がはびこり、米の収量が少なくなってしまいます。

それでも田んぼの生き物たちが暮らし、命を循環させるには、最低限の防除で済ませることが肝心です。そのためには、日々の田んぼの観察と手入れが欠かせません。

「大型機械で全面にバーッと農薬をまけば、散布は一回で終わりますが、農薬を少なく、こまめに散布する環境保全型農業は、とても手がかかります。どこかで区切りをつけないと、我々の体がもちません」

環境を守りたい。でもコメを作り続けるには作り手自身の体と健康も大切。いつもそのジレンマにさいなまれています。「農業は、大型化するほど田んぼに目が届かなくなる」とも。

そんな時、オプティムのピンポイント農薬散布テクノロジーのことを知りました。

「人間と違って、ドローンは鳥瞰的な目で田んぼを見ますからね。まるで鳥のようだ」

真辺さんに成り代わり、鳥の目で田んぼを観察し、こまめに農薬を散布する。これからの農業に「見るドローン」と「撒くドローン」はどっちも必要だと感じています。

真辺農園の真辺栄一さんと「ヒノヒカリ」

そんな真辺さんは「ヒノヒカリ」を栽培。「コシヒカリ」と「黄金晴」の交配種で、宮崎県で誕生した品種です。多くの県で奨励品種に指定されていて、九州、四国、近畿地方で広く栽培されています。

今、日本で栽培されているお米の品種の大部分が、コシヒカリの系統品種。そのせいか、暑さに強いだけでなく、誰にとっても親しみやすく、食べやすい。そんな性質があります。

真辺さんも、「今年ほどウンカが少なかった年はなかった」とホッとした表情。それでもこれからは、手間のかかる環境保全型の農業に「見るドローン」と「撒くドローン」は欠かせない存在になると考えています。

「これから日本の稲作は、ますます大規模化していきます。それでもこうした機械と技術があれば、手と目は行き届くはず。元々日本の農地は小さい。私たち高齢者にもできる小さな農業にも、ITを使った農業は役立つと思います」

■真辺さんがつくった「ヒノヒカリ」のご購入はこちら(スマートアグリフーズ直送便)から。(※福岡県産が真辺さんのお米)

新規就農者のサポートに──佐賀市・池田大志さん

佐賀市で米穀業を営んでいる池田大志さんは、13年前、自ら栽培も手がけようと、農業生産法人を立ち上げました。スタッフはみな経験ゼロの新規就農者。栽培技術を習得するには、いろいろ苦労もありました。

オプティムと一緒にコメを栽培しないかという話が持ち上がった時、池田さんは「大丈夫か、ちゃんとやっていけるのか、とても不安だった」そうです。

池田さんが就農した時に一番苦労したのは、ベテランファーマーとのコミュニケーション。先輩に、なぜ・この時期に・この作業が必要なのかをたずねても、納得できる答えがなかなか返ってこなかったのです。

新人とベテランの大きな違いは、作物や田んぼを見る「目」。ベテランは経験を元に無意識に作業のポイントやタイミングを逃さずとらえ、作業していきますが、新人にはそれができません。

一方、農業用ドローンは、マルチスペクトルカメラで圃場を撮影し、病害虫の発生がポイントや肥料の足りない場所を的確にとらえ、客観的なデータ解析に基づいて、農薬が必要なポイントを割り出します。経験の浅い若者に、有無を言わさず「俺の背中を見ろ」的に指導するのではなく、客観的なデータを元に、「今こうなっているから、ここに散布が必要だ」と伝えれば、本人も納得。スキルや観察眼も上がっていきます。

新規就農者の足りない技術や経験を、ドローンとAIのデータ解析技術が補ってくれる。ITを取り入れた農業には、そんな側面もあることがだんだんわかってきました。最初は不安だった池田さんも、「IT技術を使ってこんなことができるなら、もっといろんなことができるんじゃないか」と考えるようになりました。

「新人ばかりの僕たちにこの取り組みができたのだから、元々経験のある人たちなら、さらに新たな試みができるはず。減農薬、無農薬栽培がさらに広がって、ビジネスとしての魅力もさらに広がっていくはずです」

株式会社イケマコの池田大志さんと「さがびより」

そんな池田さんは、地元佐賀県で育成された「さがびより」を栽培しました。粒が大きくもっちり。冷めてもおいしくいただけるのが特長です。

これまでは栽培が中心で、コストを削減しながら栽培を続けていると、どうしても営業を担当する人手が足りなくなってしまいます。

「圃場の観察や農薬散布をドローンで自動化することで、自分たちが営業に出かける時間ができる。『スマート米』の食味と収量を上げていけば、さらに付加価値をつけて高く販売できる。魅力あるもっと“稼げる農業”になっていくのだと思います」

■株式会社イケマコ池田氏による「ピンポイント農薬散布テクノロジー」の事例紹介記事はこちら。
「ピンポイント農薬散布テクノロジー」が農家にもたらす3つのメリットとは?

■池田さんがつくった「サガビヨリ」のご購入はこちら(スマートアグリフーズ直送便)から。

環境負荷の少ない循環型農業に向けて

病害虫を早期に発見し、環境負荷の少ない循環型の栽培を実現。そして非農家出身の若者の新規就農をサポートする。「スマート農業」には、さまざまな可能性が秘められていることがわかりました。

そんな三人三様三品種のお米が、オプティムから販売開始。日本の農業に進歩と希望をもたらす、新しい一歩です。



<参考URL>
ピンポイント農薬散布・施肥テクノロジーに関する基本特許を取得|株式会社オプティム
農業生産法人 株式会社イケマコ
スマートアグリフーズ直送便(スマート米販売サイト)

スマートアグリフーズ直送便(スマ直)
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WRITER LIST

  1. 三好かやの
    みよしかやの。しがないかーちゃんライター。「農耕と園芸」「全国農業新聞」等に記事を執筆。八王子市ユギムラ牧場でかぼちゃの「いいたて雪っ娘」栽培中。共著『私、農家になりました。』(誠文堂新光社)、『東北のすごい生産者に会いに行く』(柴田書店)等がある。http://r.goope.jp/mkayanooo
  2. 山口亮子
    やまぐちりょうこ。フリージャーナリスト。京都大学卒、北京大学修士課程修了。時事通信社を経てフリーに。主に農業と地域活性化、中国を取材。
  3. r-lib(アールリブ)
    これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている、をコンセプトにインタビュー記事やコラムなどを発信するメディア。r-lib編集長は奈良の大峯山で修行するために、毎年夏に1週間は精進潔斎で野菜しか食べない生活をしている。
  4. 水尾学
    みずおまなぶ。滋賀県高島市出身。大学卒業後、電子機器関連業務に従事。2016年に自家の柿農園を継ぐと同時に、IoT農業の実現を目指す会社、株式会社パーシテックを設立(京都市)。実家の柿農場を実験場に、ITを駆使した新しい農業にチャレンジしています。
  5. 窪田新之助
    くぼたしんのすけ。農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。 2015年11月に発表される「農業センサス」で明らかになる衝撃の事実! 日本の農地は急速な勢いで大規模化され、生産効率も急上昇……輸出産業となる!! 日本経済団体連合会(経団連)も2015年1月1日、発表した政策提言『「豊かで活力ある日本」の再生』で、農業と食のGDPを合わせて20兆円増やせるとした。これは12兆円の輸送用機械(自動車製造業)よりも大きく、インターネット産業や金融・保険業に肩を並べる規模──日本のGDPは500兆円なので、農業が全体の4%を占める計算になる。「コメ農家は儲けてない振りをしているだけですよ」「本気でやっている専業農家はきちんと儲かっている」など、日本中の農業の現場を取材した渾身のレポートは、我々に勇気を与える。日本の農業は基幹産業だ!日本発「ロボットAI農業」の凄い未来 2020年に激変する国土・GDP・生活自民党農林水産部会長の小泉進次郎氏は語る。「夜間に人工知能が搭載された収穫ロボットが働いて、朝になると収穫された農作物が積み上がっている未来がある」と──。21世紀の農業はAIやビッグデータやIoT、そしてロボットを活用したハイテク産業、すなわち日本の得意分野だ。その途轍もないパワーは、地方都市を変貌させて国土全体を豊かにし、自動車産業以上のGDPを稼ぎ出し、日本人の美味しい生活を進化させる。大好評『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』に続く第2弾!

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