「地球にいながら月を耕す」未来にスマート農業は必須【青森県黒石市・株式会社アグリーンハート<後編>】

株式会社オプティムアグリ・みちのくが、スマート農業の実施&収穫物の全量買取を行う「スマート農業アライアンス」参加生産者の声を聞くインタビュー企画。

今回は、青森県黒石市で農業法人を営む株式会社アグリーンハート代表取締役の佐藤拓郎さんです。

後編では、株式会社オプティムの「スマート農業アライアンス」をはじめとする、実際に導入しているスマート農業ソリューションを実際に使ってみた感想、そして、未来の農業のあり方についてうかがいました。佐藤さんの夢はいつしか「宇宙」へ……?

代表取締役の佐藤さん(写真左)と竹谷さん(写真右)

「地球にいながら月を耕す」未来に向けて

ーーここからはアグリーンハートで実施されているスマート農業についてうかがっていきます。まず、オプティムさんのスマート農業アライアンスに参加することになったきっかけはなんだったんでしょうか?

お世話になっているみちのく銀行の方から教えていただいたのがきっかけです。逆説的なのですが、スマート農業は避けては通れない世界だから、早い方がいいと思ったんです。

そもそも2000年代にインターネットが生まれて物理的な距離がなくなったことで、黒石市の街の商店街とかも大打撃を受けて、多くの方が仕事をなくされました。そういう状況を見た時に、農業生産の距離もなくなる時代が来ると思いました。

ーー農業生産の距離?

「地球にいながら月を耕したい」というのが、僕の夢です。たとえば、僕が黒石市にいながらブラジルの畑を耕す、みたいなことができるようになる。青森県にいながらアメリカとかヨーロッパの畑も耕せる。

ーー想像がつかないくらいのスケールです……。でも、たしかに未来ではスペースコロニーで野菜が栽培されているかもしれませんね。

真面目な話として、物理的な距離が関係ない農業生産が始まると思ったんです。それが地域のためでもあり、自分のためでもあります。


病害虫検知のためのドローンは自動で飛行&撮影

ーーでは、アグリーンハートで具体的に取り組まれているスマート農業について教えてください。

まずは、オプティムさんのピンポイント農薬散布テクノロジーと、雑草検知システムを導入しています。それから、NTTドコモの「PaddyWatch」という田んぼの水位、水温、気温などを遠隔地で確認できるシステムを試験中です。あとは、生産工程管理システムの「アグリノート」というアプリ、井関農機の直進アシスト付き田植え機などです。

ピンポイント農薬散布テクノロジーを利用しているのは10haくらい。「PaddyWatch」は実証実験中なので、1枚の田んぼだけです。アプリは水稲と野菜のいずれでも導入しています。

NTTドコモとベジタリアが協力して提供している「PaddyWatch」のセンサー

ーー中でもピンポイント農薬散布テクノロジーについては、今年はどこまで実施されたのでしょうか?

ドローンの操縦については、弊社の社員が行っています。といっても、ドローン自体がボタンひとつで自動操縦できるように設定されているので、飛行自体は非常に簡単です。その自動操縦で撮影した画像をオプティムさんに送ると、AIによって対策が必要な箇所が指定されます。

農薬散布自体は、今年は導入初年度でもあり検証中でもあるので、オプティムさんにお願いしています。


ドローンによって減農薬、有機農業が進む

ーーもうひとつ、雑草検知の技術についてはいかがですか?

ピンポイント農薬散布と一緒で、空撮した画像から雑草の分布や種類などを検出して、ここから有効な農薬を選んだり散布するというもので、こちらはまだ実証中です。

ーー実際に雑草検知という技術のメリットはどんなふうに感じてらっしゃいますか?

やっぱり使用する農薬の量がめちゃめちゃ少なくて済むのと、散布の時間や労力も減るんですよね。

僕は黒石市の中で川の上流の方に住んでいるのですが、下流の方に行けば行くほど農薬とか肥料とかが混ざった水になってしまうんです。なので、下流の方の田んぼではどうしても有機農業は難しいのが実情です。今後そういうところでも特別栽培や減農薬栽培を行いたいと考えた時に、こういう減農薬の技術は非常に有効だと思うんです。

ーー佐藤さんは有機JAS認証を取得されたり、自然栽培でも米を作っておられて、有機栽培や特別栽培へのこだわりもあると思います。その一方で、収量や経営を考えれば慣行栽培も必要ですよね。そのあたりのジレンマとかはないのでしょうか?

そこはあまり気にならないタチですね(笑)。自然栽培を求める人、有機野菜を求める人、特に気にされていない人がいて、そういう消費者に合わせた生産方法でいいんじゃないかという考えです。僕は自然栽培が好きで、やっていても楽しいし、本当はそういう食材だけ提供していきたいんですが、ビジネスベースで考えています。

ネットとかで、ドローンで農薬を散布すること自体を否定するような方もおられますけど、そもそもドローンを使うことで農薬の使用量を10分の1とかに減らそうとしているわけですから。

「まっしぐら」の圃場をドローンで撮影している様子

ーースマート農業に取り組む企業の中で、オプティムの強みはどこだと思われますか?

スマート農業ってどうしてもロボットトラクターとか田植え機のイメージがあるのですが、そういう専業農家とか大規模農家に必要な技術よりは、日本の農家の6割を占める兼業農家の方たちが取り入れられる、低コスト化を目的としたスマート農業の方が重要だと僕は思っています。

そういう意味で、ドローンによる散布などを気軽に依頼できる「ドローンコネクト」とか、コストをかけずに実施できる「スマート農業アライアンス」という仕組み自体が、農家にとって本当に必要なものなんじゃないかと思うんです。

ドローンも過渡期で、免許が必要だったり、購入するにも色々とお金がかかるなど、まだ不透明な部分もあります。しかし、スマート農業アライアンスの「スマートアグリフードプロジェクト」に参画すればドローンも借りられますし、市場価格で全量買い取ってくれるというのもすごくいいビジネスモデルだなと思います。

農業を採算ベースに乗せようと考えると、生産することよりも販売する方の話が重要です。今年はまだ青森県の米の値段がわからないんですが、経営的にはPDCA(「Plan=計画」「Do=実行」「Check=評価」「Action=改善」の略)の「P」がふわふわな状態なんです。

4月から半年以上、米の栽培にコストをかけてきたのに、刈り取る1週間前になってもまだいくらで売れるのか、どれだけ取れるのかもわからない。

それよりも、「いくらで売れる」という部分が保証された状態で生産できれば、経営としても安定が図れますから、スマート農業アライアンスの「全量買取」という仕組みによって一定の収入が確保できるというのはすごくいいなと思います。

ーーオプティムにこれから望みたい技術などはありますか?

やっぱりAI除草機ですかね。有機農業ではドローンで空撮して雑草があっても農薬は使えませんから、なにか別の手立てをしていかなければいけませんよね。

例えば、オプティムさんがいま実験されている「ドローン直播」という技術がありますけど、あれはドローンで直接種を植え付けて条を作るというものです。もしその条間が均等間隔になるのであれば、除草機が入っていける。その除草機がAIで自動走行できるのなら、そこでもスマート農業が大活躍するわけですよね。

50歳でバンドをやるまでに、「有機農業をどれだけスマート農業でやるか」という目標を立てています。地域や国そのものでも今後は有機農業がより広がっていくんじゃないでしょうか。

株式会社オプティムの菅谷社長も「有機農業」を推し進めたいとおっしゃっています。ピンポイント農薬散布テクノロジーにも環境を守る意味はありますし、もっともっとオプティムさんには有機農業を進めていただきたいです。


株式会社アグリーンハート
SMART AGRI オプティム「スマート農業アライアンス」
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WRITER LIST

  1. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
  2. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  3. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  4. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  5. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。