「なす」のおいしい保存方法 どんな料理にもマッチする夏の万能食材

炒めてよし、カレーなどの煮込み料理に入れても、煮びたしにしてもよし! のおいしい「なす」。加熱後のとろとろな舌ざわりが大好きだという方も多いでしょう。

どんな料理にもなじむ万能な食材ということもあり、お手ごろな価格で売られていたらついつい買ってしまいますが、いざ使おうと思ったらしなしなの姿で発見……なんてことが多いのがつらいところです。


そんな旬の食材である「なす」を、鮮度をキープしつつ保存する方法を紹介していきます!


なすの基本の選び方


「なす」の旬は、5~10月ごろ。旬のシーズンは夏から秋にかけてとなりますが、出荷量のピークは8月ごろで、一番お手ごろな価格で手に入るのは夏となります。

9月頃に収穫されるなすは「秋なす」と呼ばれ、夏のなすに比べて実がしまっているのが特徴。といっても、ハウス栽培されているため、通年手に入りやすい食材の一つです。

それでは、おいしい「なす」の選び方を紹介していきましょう。


まず、一番に注目していただきたいのが「ハリと光沢」です。皮にハリがあり、濃い黒紫色をしているものを選んでください。また、表面に大きな傷や色むらなどがないかも要チェックですよ!

次に注目していただきたいのが、「ガクの下の色が白いか」ということ。ガクの下の色が白いほど新鮮な証となります。

また、トゲがある品種の場合はトゲがとがっているものを選ぶようにしましょう。そしてヘタの切り口がみずみずしいか、というのもなすの鮮度を見極めるポイントの一つです。

おいしく新鮮ななすをいただくためにも、ぜひ紹介したポイントを忘れずチェックするようにしてくださいね! さらに、とろりとした食感が病みつきになる「なす」には、おいしいだけでなく栄養もたっぷり含まれています。

なすに含まれている代表的な栄養である「カリウム」は、余分なナトリウムを身体から排出してくれる効果が。塩分量を調整する利尿作用もあり、むくみ対策に効果的です。そして、女性の方に特に注目していただきたいのが「葉酸」。赤血球を作るために欠かせない栄養素の一つで、妊娠初期には特に欠かせない栄養素のひとつです。

黒紫色の皮には「ポリフェノール」がたっぷりと含まれています。ポリフェノールは抗酸化作用を持ち、アンチエイジングなど美肌作りに欠かせない栄養素といわれています。紫外線が気になる夏は、特に摂取していきたいですね!


なすの保存方法と保存期間


夏から秋まで、さまざまな料理で楽しめる「なす」ですが、新鮮な状態で保存することは難しいと感じる方も多いのでは?

「なす」の原産地はインド。暑さや湿度には強いのですが、寒さや乾燥には弱いという特徴が……。なすにとっての最適温度は8~12℃となっており、冷蔵庫で保存したいという場合には野菜室での保管がオススメです。

冷蔵庫は基本5℃以下に設定されているため、「低温障害」を起こし、シワシワになってしまうので注意しましょう。


【なすの保存方法1】 冷蔵保存


1. なすについている水気をふき取る


2. ラップで1本ずつ包む
水分量が多いなすは、水分を逃さないようにするのが大切。ラップでぴったりと密閉し、水分の蒸発を防ぎましょう。


3. 保存袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で保存
ナスの保存に適している温度は8~12℃です。大体3~4日ほどで使い切るようにしてください。


【なすの保存方法2】 下準備をしてから冷凍保存


1. なすを適当な大きさにカットする
乱切りや輪切りなど、使いやすいサイズにカットしましょう。


2. なすを水にさらしてあく抜きをし、水気をふき取る
変色を防ぐため、水に5~10分ほどさらしてあく抜きをしましょう。保存袋に入れる前にはしっかりと水気を切ることも大切です。


3. 冷凍用の保存袋に入れて保存する
保存袋に入れる際、なすが重ならないようにするとなす同士がくっつかず、調理がしやすくなります。冷凍したなすは、解凍せずに調理に使用できます。


なすの種類


なすといえば「長なす」が主流です。しかし、日本国内だけでもその土地で古くから育てられてきた伝統品種があり、さまざまな種類や品種があることはご存知でしょうか?

実は私たちが普段スーパーなどで見かけるのは「千両なす」という品種です。今回は主に日本で栽培されているなすの種類を中心にご紹介していきます。

丸茄子(丸なす)


日本では野球ボールほどのサイズのものが多い「丸なす」。ヘタや皮の色は、千両なすと同様に濃い紫色となっています。しかし、肉質は千両なすよりも固めのものが多く、煮崩れしにくいのが特徴です。スライスして両面を焼いて、田楽や揚げびたし、ステーキなどにするのがオススメです。


■加茂なす
京の伝統野菜である「加茂なす」は、京都の北区上加茂で古くから栽培されてきました。風で葉が触れるだけで傷がつきやすく、よりよい色つやを出すためにはかん水や排水などのタイミングや摘葉も欠かせない……などなど、非常に手間をかけて栽培されます。加熱調理をしても身崩れせず、甘みのある味わいと歯ごたえの良さから、加熱調理に向いているとされています。

■大和丸なす
奈良県郡山市や奈良市などで古くからつくられてきた「大和丸なす」。奈良県の伝統野菜として「大和野菜」に認定されています。収穫するまでに時間がかかり、一株の収穫量は一般的な千両なすの5分の1程度と少ないという高級品です。実がしまっているため、天ぷらにしても油を吸い過ぎることなく軽い味わいに。煮物や焼き田楽などにもぴったりです。

■吉川なす
福井県鯖江市の伝統野菜である「吉川なす」は、加茂なすのルーツと言われています。生産者が少なく、1本の苗からの収穫量が多くないことから一度生産が途絶えかけましたが、農家の有志が2009年に鯖江市伝統野菜等栽培研究会を結成し再興に挑戦。2022年には4万5000個の出荷が叶うほどに盛り返しました。


小茄子(子なす)


長さ8cmほどで重さ30gほどの小さななすは、その名の通り、「小なす」と呼ばれています。さらに“丸小なす”と呼ばれる丸なす系のものと、卵型のタイプのものと分類でき、品種や栽培地域によってさまざまな種類があります。


■薄皮丸小なす
山形県置賜(おいたま)地域で栽培されてきたのが、一口大のサイズの丸なす。皮が薄いため、浅漬けにぴったりの品種です。

■十市(とおち)なす
高知県で栽培されている卵型の「十市なす」。京都の料亭などでもよく使われるほど、形や色つやがよい品種として知られています。皮も果肉もしっかりとしているため、加熱しても煮崩れなどすることがありません。漬物にしても、色が綺麗に仕上がりますよ。

■下田なす
滋賀県の伝統野菜である「下田なす」は、湖南市下田地区(こなんし・しもだ)で明治時代以前から作られています。地場野菜となっており、他の地域で栽培しても小なすとして収穫できないそうで、一般の市場に出回ることはありません。みずみずしく、甘みのある味わいが特徴で、ぬか漬けなどの漬物にぴったりだそうです。また、水分が多いことから、素揚げににしても外はサクッと、中はジューシーに仕上がるのだとか。


米茄子(べいなす)


べいなすはアメリカの「ブラックビューティー」という品種が日本で改良されたものといわれています。現在ではさまざまな品種が登場しており、ヘタが緑で表皮が濃い紫色の大きななすの総称として用いられています(ちなみに、丸なすなどのヘタは基本的に黒や紫色です)。

皮が厚いべいなすは、加熱調理にぴったり! 煮崩れしにくいので、田楽やグラタンにするとおいしく味わえます。



まとめ:焼いても煮てもおいしい「なす」! 新鮮な味わいをキープしよう


くせがなく、とろりとした食感がどんな料理にもマッチする「なす」。漬物にしてもよし、カレーなどの煮込み料理にもぴったりと、とても万能な夏野菜の一つです。また、カリウムや葉酸などの栄養もたっぷりと、体調を崩しやすい夏に積極的に食べていきたい要素もたくさんありますよね。

しなびさせてしまうことも多いなすですが、正しく保存するだけでおいしさを長くキープすることができます! 冷蔵保存にするか、冷凍保存にするか……その都度、保存したい期間や作りたい料理に合わせて保存方法を選んでくださいね。


参考・参照元
「なす」の旬はいつ?おいしい時期とおすすめの選び方を管理栄養士が解説! - トクバイニュース
https://tokubai.co.jp/news/articles/4160
なすの保存方法|長持ちのコツ|水分を逃がさない | クラシル
https://www.kurashiru.com/articles/55288ae0-40e1-43bd-a0bb-b1dbb1d0abe4
ナス(茄子/なす)の種類一覧:旬の野菜百科
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/nasu-varie.htm
吉川ナス – めがねのまちさばえ 鯖江市
https://www.city.sabae.fukui.jp/oishii/oishii_nakama/oishi-yoshikawanasu.html
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
パックごはん定期便