【令和8年版】トマト農業の現状と課題|施設栽培とスマート農業で安定出荷へ

トマトは、家庭用の青果売場から外食、総菜、加工向けまで、幅広い用途で使われる野菜です。初夏から夏は、家庭用・業務用ともに引き合いが高まりやすい時期ですが、生産現場では、高温、急な降雨、裂果や病害への対応に加え、燃料費・資材費の上昇、人手不足など、複数の課題が重なっています。

近年では、「良いトマトを作る」だけでなく、品質を維持しながら必要な量を継続して出荷することが、これまで以上に求められるようになっています。

今回は、国産トマトの生産構造をはじめ、施設栽培が果たす役割、流通するトマトの種類、コスト削減や作業効率化に向けた取り組みについて取り上げます。



国産トマトは施設栽培が中心


国内のトマトは露地でも栽培されていますが、トマトは乾燥気味の環境を好む作物とされ、露地栽培が中心だった頃は夏の収穫が主体でした。ただ、年間を通じて品質と出荷量を一定に保つうえで、ハウスなどを利用した施設栽培が大きな役割を担っています。農林水産省広報誌「aff」でも、「現在はハウス栽培の普及によって周年出荷が可能になり、冬春トマトと夏秋トマトに大きく分けられる」とされています。

施設での栽培は、雨や気温変化の影響を抑えながら、温度、湿度、かん水、施肥、換気、CO2などの環境条件を調整しやすくなります。ただし、施設管理で重視されるポイントは季節によって変わります。冬場は加温や保温による低温への備えが中心ですが、5月以降の初夏から夏にかけては、雨よけ、裂果対策、病害抑制、高温への備えなどの比重が大きくなります。

特に、梅雨前後は湿度が高まりやすく、夏場はハウス内の温度も上昇しやすくなります。その結果、裂果や病害、着果不良、品質低下などが発生しやすくなり、樹勢の乱れによって収量や出荷量が不安定になる場面もあります。この時期は、換気や遮光、かん水の調整を組み合わせながら、ハウス内環境と樹勢を一定に保つ必要があります。

2025年(令和7年)産の農林水産省統計では、トマト全体の作付面積は1万200ha、10a当たり収量は6,270kg、収穫量は63万9,900t、出荷量は58万3,000tでした。前年産比では、作付面積、収穫量、出荷量はいずれも96%、10a当たり収量は100%となっています。単収の大幅な低下というより、作付面積の減少が全体の生産量に影響したと考えられます。

こうした中で、限られた面積でも収量と品質を維持しやすい施設栽培への期待は、今後さらに高まっていくでしょう。施設を導入すること自体が目的ではなく、季節ごとにどのリスクをおさえ、どの品質で出荷するかを見据えることが、継続的な出荷を支える視点になります。


大玉・ミニトマトの違い


トマトには、大玉、中玉、ミニなどがあり、大玉トマトは100g以上、中玉トマトは30〜60g程度、ミニトマトは10〜30g程度が目安とされています。

大玉トマトは、家庭用の青果売場や業務用で広く使われる一般的なタイプです。スライスしてサラダに使うほか、加熱調理や加工にも向きやすく、幅広い用途に対応できます。中玉トマトは、大玉より扱いやすく、ミニトマトより食べ応えがあるため、サラダ用や直売所向け、少量パックなどで食味や見た目を打ち出しやすい品目です。

ミニトマトは、切らずに食べられる手軽さや見た目のかわいらしさから、弁当の彩りやサラダ用などにも使われてきました。黄色やオレンジ、緑色など、色の違いを生かしたカラートマトもあり、彩りや食べやすさを訴求した売り場提案、小分け商品の展開とも相性が良い品目です。

農林水産省の令和6年施設園芸調査では、施設野菜の栽培延べ面積でトマト全体が最多の6,074haを占めており、中でもミニトマトは施設園芸の中でも重要な品目の一つとなっています。

大玉トマトとミニトマトでは、栽培上の段取りや出荷作業の組み立て方が異なります。ミニトマトは収穫回数が多く、選果やパック詰めにも手間がかかりやすい品目です。そのため、販売先や作業体制を考える際は、大玉トマトと同じ前提でとらえず、別の作型として位置づけておくことが求められます。



収量だけでなく、コスト管理と省力化も重要になる


トマトは年間を通じて引き合いがある品目ですが、出荷時期や産地の切り替わり、天候の影響によって価格が動きやすい側面を持ちます。気温や日照、病害、着果状況の変化は収量や品質に影響し、出荷量の増減を通じて価格にも反映されます。

2026年(令和8年)5月の農林水産省の価格見通しでは、熊本県、栃木県、愛知県などの主産地で生育はおおむね順調とされ、出荷数量・価格とも平年並みで推移する見込みとされました。

2025年(令和7年)夏は、高温の影響がトマトの出荷にも表れました。農林水産省が同年8月に公表した価格見通しでは、主産地で高温による生育不良等が見られ、出荷数量は平年を下回り、価格はやや平年を上回るとされていました。夏野菜の代表格であるトマトでも、高温が続けば出荷量や価格に影響が出ることがうかがえます。

価格が上がっても、高温によって出荷量そのものが減れば、経営全体では収入増につながらない場合もあります。品質低下や規格外の増加によって、販売できる数量そのものが減るためです。


スマート農業は作業と判断の「見える化」から始める


こうした状況への対処として、さまざまなスマート農業技術も開発されています。しかし、最初から大きな設備を入れる必要はありません。まずは、ハウス内環境や作業時間、収量、品質のばらつきを数値で把握することが出発点になります。

温度、湿度、日射量、CO2濃度、かん水量、培地水分、養液濃度など、把握すべき項目をセンサーや環境モニタリング機器で記録できると、「どの時間帯に高温になりやすいか」「湿度が抜けにくい場所はどこか」「かん水後の変化はどうか」といった判断材料が増えます。

農林水産省のスマート農業技術カタログでも施設園芸向けに、経営データ記録、栽培データ活用、環境制御、センシング・モニタリング、作業軽減などの技術が整理されています。作業記録や収量、出荷販売実績を蓄積することで、収支分析や作付計画の立案を支える技術も紹介されています。

農研機構は、環境条件と品種特性からトマトの生育状況を数値化し、収量を予測するツールを開発しています。収量の見通しが早めに立てば、作業員の配置や出荷・営業スケジュールの立案にも使いやすくなります。

画像解析やAIも、施設トマトと相性のよい技術です。農研機構は、トマトなどの施設栽培で、AIを使って果実の位置や熟度を判別し、日ごとの収穫データを予測する着果モニタリング技術を開発しています。収穫量の見通しが早めに立てば、繁忙期の人員配置、選果・箱詰め、出荷先との調整に役立ちます。

省力化の面では、収穫台車、自動搬送機、作業記録アプリ、遠隔指導ツール、選果支援機器などがあります。

AI収穫ロボットも開発が進んでいます。農研機構などの資料では、カメラ画像からAIでトマト果実や主茎、果梗を認識し、茎などを避けながら収穫するロボットの開発事例が紹介されています。

ただし、現時点では大規模施設園芸向けとして開発が進んでおり、すべての収穫作業を代替するものではありません。夜間や高温時でも稼働できる点から、収穫ピーク時の負担を部分的にならす技術としてとらえるのが現実的です。ただし、導入コストや施設条件によって適性は異なります。

燃料費への対応も、施設トマトでは欠かせないスマート化の一つです。農林水産省の施設園芸省エネルギー生産管理マニュアルでは、燃油コストの割合が高い施設園芸において、省エネルギーの取組は生産コスト低減と温室効果ガス排出削減の両面で求められるとされています。まずは現在の暖房方法に無駄なエネルギー使用がないかを点検し、そのうえで省エネ設備や技術を取り入れていくことが望ましいとされています。


トマト経営は「管理して届ける」段階へ


2026年(令和8年)のトマト農業では、施設栽培を中心に、品質と出荷量を一定に保つための取り組みがより強く求められています。作付面積が縮小する中で、限られた人員と設備をどう生かし、継続して出荷を続けるかが経営上の課題となっています。

トマトは、季節や販路によって求められる段取りが変わる作物です。初夏から夏は高温や降雨への備え、冬場は低温期の生育確保や燃料費への対応が必要になります。さらに、大玉トマト、ミニトマト、青果向け、業務用などによって、求められる品質や作業内容も変わります。

環境制御やデータ記録・活用、自動化・省力化技術は、こうした課題を整理したうえで選びたい手段です。収量、品質、作業負担、販売先を照らし合わせながら、自分の経営に合った体制を築いていくことが、継続的に出荷を続けるための土台になっていきそうです。


参考資料
農林水産省「令和7年産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量および出荷量」
農林水産省「園芸用施設の設置等の状況(令和6年)」
農林水産省広報誌「aff」
農林水産省「野菜の生育状況および価格見通し(令和8年5月)について」
農林水産省「野菜の生育状況および価格見通し(令和7年8月)について」
農林水産省「スマート農業技術カタログ(施設園芸)」


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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