【令和8年版】 レタス農業の現状と課題|品質を守る栽培管理と省力化の考え方
レタスは、サッと洗ってちぎるだけで食物繊維を手軽に摂れる野菜の一つとして、日常的に食卓で利用されています。しかし、葉のしおれや変色が目立ちやすいという特徴から、品質の変化が流通や販売に影響しやすい作物です。
青果、カット野菜、外食、中食など用途は広く、産地では「いつ、どれだけ出荷できるか」を早めに見通すことが経営上の基本になります。
本記事では、国産レタスの供給体制、露地栽培・水耕栽培・植物工場の位置づけ、レタス産地で進むスマート農業の事例を取り上げます。

国産レタスは、季節ごとに産地を切り替えながら供給されています。農畜産業振興機構(ALIC)の資料では、東京都中央卸売市場への月別入荷は、5〜9月に長野産を中心として群馬産も入り、10月以降は茨城産が増加。12月から翌2月は静岡産のほか、長崎産や香川産なども入荷し、3〜4月は再び近郊の茨城産が増え、徐々に長野産・群馬産へ移る流れが示されています。
2025年(令和7年)産のデータを見ると、春レタスより夏秋レタスの方が作付面積・出荷量ともに大きくなっています。農林水産省が令和8年4月28日に公表した「令和7年産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量」によると、春レタスは作付面積3,690ha、収穫量10万3,800t、出荷量9万7,500t。夏秋レタスは作付面積8,000ha、収穫量25万4,800t、出荷量24万5,100tでした。夏秋レタスの出荷量は春レタスの約2.5倍で、夏秋期の供給規模の大きさが数字からも読み取れます。
産地リレーは、気温の影響を年間を通じて受けます。農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和7年12月)」では、東京都中央卸売市場に出荷される野菜について、主産地や卸売会社などからの聞き取りに基づき、生育状況と価格見通しが公表されました。レタスでは、茨城県産が9月以降の気温高により生育前進となり、出荷の終了時期が早まる(切り上がり)見込みとされ、12月の出荷数量はやや平年を下回り、価格はやや平年を上回る見通しでした。
このことから、レタスの出荷量が不安定になりやすい時期は、夏場だけではないことがわかります。高温によって前の産地の出荷が早く終わると、次の産地へ切り替わる局面の供給量にも影響します。通年で出荷量を読むには、夏秋産地だけでなく、秋冬産地への切り替わりまで視野に入れておく必要があります。
近年は、春先や秋冬も含めて気温が高い年が増え、レタスの出荷スケジュールに影響が出やすくなっています。レタスは冷涼な気候を好むため、気温が高い状態が続くと生育が前進し、収穫が集中します。結球の乱れや抽苔、品質低下につながる場合もあり、出荷できる数量が読みづらくなる点が課題です。
農林水産省は夏季高温への対応として、遮光資材や細霧冷房、耐暑性品種の導入などを高温対策の事例に挙げています。レタスでは、こうした対策を「収量を増やすため」だけでなく、出荷の前倒しや収穫の集中をおさえるための手段としてとらえる必要があります。

レタスには、ヘッドレタス、リーフレタス、ロメインレタスなど複数の種類があります。国内で主流なのは、スーパーの青果売場で1玉販売されることの多いクリスプ型のヘッドレタス、いわゆる玉レタスです。リーフレタスやロメインレタスは、サラダ、外食、カット野菜、加工用途で使われています。
水耕栽培や植物工場の代表的な作物として、レタスを思い浮かべる人も少なくありません。実際に、農研機構では人工光型植物工場で栽培したリーフレタス品種の研究成果が示されており、植物工場九州実証拠点でも、完全人工光型施設でリーフレタスやスプラウト類の生産効率向上を目指す取り組みが紹介されています。
ただし、国産レタスの供給全体では、露地栽培が中心的な役割を担っています。特に玉レタスは、産地リレーの中で青果向けや業務用向けにまとまった数量を出荷しやすい品目です。
露地栽培は広い面積で作付けしやすい反面、気温、降雨、日照の影響を受けやすく、圃場ごとの生育差や作業時期の調整が経営に影響しやすい栽培体系です。
そのため、露地栽培を続ける場合でも、品種選定、定植時期、遮光や灌水など、気象条件に応じた管理判断が欠かせません。水耕栽培や植物工場は、露地栽培をそのまま置き換えるものではなく、リーフレタスなど特定の品目や販路で力を発揮しやすい選択肢と言えます。
レタスは収穫適期が限られるため、出荷のズレが需給や価格に響きやすい品目です。圃場ごとの生育状況を早めに把握し、出荷量の見通しを立てることが、経営上の課題になります。
長野県御代田町の有限会社トップリバーでは、農研機構のスマート農業実証プロジェクトとして、レタスを含む大規模露地野菜経営での取り組みが行われました。導入技術には、計画作成支援、作業実績・生育状況管理、受発注管理・需給調整などが含まれます。農研機構の資料では、出荷予測や栽培管理システムを使って、品質や反収を維持しながら作付面積を拡大し、出荷金額を6割向上させた事例として紹介されています。
さらに、農林水産技術会議の成果では、レタスやこんにゃくを対象に、ドローン空撮画像や圃場設置型気象データセンサーを活用した生育診断技術が紹介されています。ドローン空撮画像による生育状況の推定、生育予測モデルによる収穫日・収量の予測、それらに基づく生育診断システムの開発に取り組んだものです。
こうした技術は、省力化だけでなく、収穫や出荷の見通しを早めに立てるための判断材料としても活用されています。出荷先への連絡、作業人員の確保、出荷量の調整につなげるためにも、生育状況の早期把握が重要性を増しています。
スマート農業を導入する際は、どの作業を機械化するかだけでなく、どの情報を見える化すれば出荷計画に役立つかを考えることが求められます。
令和8年時点のレタス農業では、収穫量を伸ばすだけでなく、出荷できる品質と数量を着実に確保することが経営課題です。夏秋レタスの供給規模が大きい一方、秋以降の気温高が産地の生育前進や切り上がりに波及するケースも起きており、出荷の流れは春先から秋冬まで年間を通じて読む必要があります。
露地栽培、水耕栽培、施設栽培、出荷予測、生育診断は、それぞれ役割が異なります。自社の圃場条件、労働力、販売先、契約条件に合わせて、どの方法をどう組み合わせ、年間を通じて出荷を維持していくか。その整理が、これからのレタス経営における核心となるでしょう。
参考資料
農林水産省「野菜における夏季の高温対策」
農畜産業振興機構(ALIC)「レタスの需給動向」
農林水産省「令和7年産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量」
農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和7年12月)」
農林水産省「園芸用施設の設置等の状況」
農研機構「植物工場 九州実証拠点」
農研機構「人工光型植物工場で栽培した低硝酸リーフレタス品種『L-120』の根部特性」
農研機構「スマート農業実証プロジェクト|露C05 有限会社トップリバー」
農林水産技術会議「画像センシングによる露地生育診断技術」
青果、カット野菜、外食、中食など用途は広く、産地では「いつ、どれだけ出荷できるか」を早めに見通すことが経営上の基本になります。
本記事では、国産レタスの供給体制、露地栽培・水耕栽培・植物工場の位置づけ、レタス産地で進むスマート農業の事例を取り上げます。

国産レタスは産地リレーで支えられている
国産レタスは、季節ごとに産地を切り替えながら供給されています。農畜産業振興機構(ALIC)の資料では、東京都中央卸売市場への月別入荷は、5〜9月に長野産を中心として群馬産も入り、10月以降は茨城産が増加。12月から翌2月は静岡産のほか、長崎産や香川産なども入荷し、3〜4月は再び近郊の茨城産が増え、徐々に長野産・群馬産へ移る流れが示されています。
2025年(令和7年)産のデータを見ると、春レタスより夏秋レタスの方が作付面積・出荷量ともに大きくなっています。農林水産省が令和8年4月28日に公表した「令和7年産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量」によると、春レタスは作付面積3,690ha、収穫量10万3,800t、出荷量9万7,500t。夏秋レタスは作付面積8,000ha、収穫量25万4,800t、出荷量24万5,100tでした。夏秋レタスの出荷量は春レタスの約2.5倍で、夏秋期の供給規模の大きさが数字からも読み取れます。
産地リレーは、気温の影響を年間を通じて受けます。農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和7年12月)」では、東京都中央卸売市場に出荷される野菜について、主産地や卸売会社などからの聞き取りに基づき、生育状況と価格見通しが公表されました。レタスでは、茨城県産が9月以降の気温高により生育前進となり、出荷の終了時期が早まる(切り上がり)見込みとされ、12月の出荷数量はやや平年を下回り、価格はやや平年を上回る見通しでした。
このことから、レタスの出荷量が不安定になりやすい時期は、夏場だけではないことがわかります。高温によって前の産地の出荷が早く終わると、次の産地へ切り替わる局面の供給量にも影響します。通年で出荷量を読むには、夏秋産地だけでなく、秋冬産地への切り替わりまで視野に入れておく必要があります。
近年は、春先や秋冬も含めて気温が高い年が増え、レタスの出荷スケジュールに影響が出やすくなっています。レタスは冷涼な気候を好むため、気温が高い状態が続くと生育が前進し、収穫が集中します。結球の乱れや抽苔、品質低下につながる場合もあり、出荷できる数量が読みづらくなる点が課題です。
農林水産省は夏季高温への対応として、遮光資材や細霧冷房、耐暑性品種の導入などを高温対策の事例に挙げています。レタスでは、こうした対策を「収量を増やすため」だけでなく、出荷の前倒しや収穫の集中をおさえるための手段としてとらえる必要があります。

露地栽培を軸に、水耕栽培と植物工場をどう見るか
レタスには、ヘッドレタス、リーフレタス、ロメインレタスなど複数の種類があります。国内で主流なのは、スーパーの青果売場で1玉販売されることの多いクリスプ型のヘッドレタス、いわゆる玉レタスです。リーフレタスやロメインレタスは、サラダ、外食、カット野菜、加工用途で使われています。
水耕栽培や植物工場の代表的な作物として、レタスを思い浮かべる人も少なくありません。実際に、農研機構では人工光型植物工場で栽培したリーフレタス品種の研究成果が示されており、植物工場九州実証拠点でも、完全人工光型施設でリーフレタスやスプラウト類の生産効率向上を目指す取り組みが紹介されています。
ただし、国産レタスの供給全体では、露地栽培が中心的な役割を担っています。特に玉レタスは、産地リレーの中で青果向けや業務用向けにまとまった数量を出荷しやすい品目です。
露地栽培は広い面積で作付けしやすい反面、気温、降雨、日照の影響を受けやすく、圃場ごとの生育差や作業時期の調整が経営に影響しやすい栽培体系です。
そのため、露地栽培を続ける場合でも、品種選定、定植時期、遮光や灌水など、気象条件に応じた管理判断が欠かせません。水耕栽培や植物工場は、露地栽培をそのまま置き換えるものではなく、リーフレタスなど特定の品目や販路で力を発揮しやすい選択肢と言えます。
レタス産地で進む出荷予測と生育診断
レタスは収穫適期が限られるため、出荷のズレが需給や価格に響きやすい品目です。圃場ごとの生育状況を早めに把握し、出荷量の見通しを立てることが、経営上の課題になります。
長野県御代田町の有限会社トップリバーでは、農研機構のスマート農業実証プロジェクトとして、レタスを含む大規模露地野菜経営での取り組みが行われました。導入技術には、計画作成支援、作業実績・生育状況管理、受発注管理・需給調整などが含まれます。農研機構の資料では、出荷予測や栽培管理システムを使って、品質や反収を維持しながら作付面積を拡大し、出荷金額を6割向上させた事例として紹介されています。
さらに、農林水産技術会議の成果では、レタスやこんにゃくを対象に、ドローン空撮画像や圃場設置型気象データセンサーを活用した生育診断技術が紹介されています。ドローン空撮画像による生育状況の推定、生育予測モデルによる収穫日・収量の予測、それらに基づく生育診断システムの開発に取り組んだものです。
こうした技術は、省力化だけでなく、収穫や出荷の見通しを早めに立てるための判断材料としても活用されています。出荷先への連絡、作業人員の確保、出荷量の調整につなげるためにも、生育状況の早期把握が重要性を増しています。
スマート農業を導入する際は、どの作業を機械化するかだけでなく、どの情報を見える化すれば出荷計画に役立つかを考えることが求められます。
安定供給は「組み合わせ方」で考える
令和8年時点のレタス農業では、収穫量を伸ばすだけでなく、出荷できる品質と数量を着実に確保することが経営課題です。夏秋レタスの供給規模が大きい一方、秋以降の気温高が産地の生育前進や切り上がりに波及するケースも起きており、出荷の流れは春先から秋冬まで年間を通じて読む必要があります。
露地栽培、水耕栽培、施設栽培、出荷予測、生育診断は、それぞれ役割が異なります。自社の圃場条件、労働力、販売先、契約条件に合わせて、どの方法をどう組み合わせ、年間を通じて出荷を維持していくか。その整理が、これからのレタス経営における核心となるでしょう。
参考資料
農林水産省「野菜における夏季の高温対策」
農畜産業振興機構(ALIC)「レタスの需給動向」
農林水産省「令和7年産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量」
農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和7年12月)」
農林水産省「園芸用施設の設置等の状況」
農研機構「植物工場 九州実証拠点」
農研機構「人工光型植物工場で栽培した低硝酸リーフレタス品種『L-120』の根部特性」
農研機構「スマート農業実証プロジェクト|露C05 有限会社トップリバー」
農林水産技術会議「画像センシングによる露地生育診断技術」
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