新型コロナ下における食や農業への消費者意識を調査、流通経済研究所がレポートを複数公開

公益財団法人流通経済研究所の農業・地域振興研究開発室は、食や農業、流通における新型コロナウイルス問題への対策に役立つ消費者調査に基づいた対策レポートを複数公開した。

同レポートは新型コロナウイルス問題下における農水産業と流通業の課題を示したもので、アンケート調査結果を分析し、トピックス別に報告している。


流通経済研究所は、 1963年3月に任意団体として発足した流通経済研究所が母体となって設立した、流通・マーケティング分野の研究・調査を行う公益財団法人。

今回のレポートにて引用されるアンケートは、新型コロナウイルス問題下における食と暮らし・買い物への影響をWeb上にて調査したもので、全国各年代の消費者1,876人(男性917人・女性959人)から回答を得たという。

消費行動にも外出自粛の影響が顕著に


新型コロナ下における消費者意識調査として、下記3つのレポートが発表された。

  • 新型コロナウイルス問題下における応援消費の獲得方法の提案
  • 新型コロナウイルス問題の中、消費者が求める商品
  • 新型コロナウイルス問題下における米のマーケティング施策


若い世代の意識が高い「応援消費」


「新型コロナウイルス問題下における応援消費の獲得方法の提案」についての調査結果では、「新型コロナウイルス問題発生後に、農水産業の生産者に応援消費を行った」と回答した消費者は10.8%に及んだという結果を示している。

「高齢女性と若年男性の方が他の性年代と比べて農水産業の生産者に応援消費を行っている人が多い」という結果から、高齢女性向けの小容量商品や買物の負荷を減らす定期宅配サービスなど、「該当する性年代を意識した商品やサービスの開発が有効だ」という。

また応援消費を行う理由について行ったアンケート調査にも触れており、「 生産者が困っていると思うだけではなく商品・サービスの価値を認めたり、 生産者の理念に共感したい」との回答から、特に20~39歳の若年層で、関係性に基づく消費への意識が高い傾向がみられたとも報告された。



消費者の求める商品にも外出自粛要請の影響が


「新型コロナウイルス問題の中、 消費者が求める商品」をテーマにしたアンケート調査では、「冷凍できる商品や賞味期限・消費期限が長い商品、簡単に調理できる商品の購入を増やしたい」と答えた消費者が全体の60%を超えるなど、外出自粛要請に伴う影響がうかがえたそうだ。


また、新型コロナ問題下における消費者の自炊について調査したアンケート結果も示されている。
レポートには、女性は年齢が上がるほど料理をする人の割合が高いという傾向のほか、「事業者は新型コロナウイルスによる生活スタイルの変化に対応した商品開発が重要」との見解が示された。


米の消費行動にも意識の変化が


さらに「新型コロナウイルス問題下における米のマーケティング施策」に関する調査結果が報告されている。
レポートには、「消費者は米の購入時に、価格が安いこと、安全性に関する情報、鮮度が良いこと、商品の容量・サイズが大きいことを重視するようになった」との調査結果のほか、特に20~39歳の若年層が「価格が安いこと」や「商品の容量・サイズが大きいこと」を重視する傾向にあることが記されている。



今回のレポートでは、「テレワークや学校のオンライン授業が続けば、 商品やサービスの重視点の変化も継続すると考えられる」とも述べられており、調査を行った流通経済研究所は「今後事業者は、新型コロナウイルスの影響で変化した生活様式を加味し、中長期的な視点での事業経営が望まれる」とコメントした。

調査概要


調査名: 新型コロナウイルス問題の食と暮らし・買い物への影響調査
調査対象: 全国の消費者
調査期間: 2020年4月22日
調査方法: Webアンケート調査
対象者:全体1,876人
男女比:男性(917人)48.9% 女性(959人)51.1%
20代(258人)13.8%
30代(283人)15.1%
40代(310人)16.5%
50代(326人)17.4%
60代(352人)18.8%
70代以上(347人)18.5%


新型コロナウイルス問題下における応援消費の獲得方法の提案
https://dei-amr.jp/wp/wp-content/uploads/2020/05/e3e3dbbdfbbf9de1b14c3071c16c291a.pdf

新型コロナウイルス問題の中、消費者が求める商品
https://dei-amr.jp/wp/wp-content/uploads/2020/05/c9c28b1f338abb095516e71482c53dc7.pdf
新型コロナウイルス問題下における米のマーケティング施策
https://dei-amr.jp/wp/wp-content/uploads/2020/05/mainpoint.pdf
公益財団法人流通経済研究所
https://www.dei.or.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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