全国の土壌の種類や分布を示した「デジタル土壌図」が土づくりの実践に役立つ新機能と新たなデータを追加

農研機構はウェブサイト「日本土壌インベントリー」にて公開する日本全国の土壌の種類や分布を示した「デジタル土壌図」に、新機能となる「土壌有機物管理ツール」と、全国の土壌温度や水分の推定値、土壌の断面データ等を示した3つのデータベースを追加した。

新機能と3つのデータベースは、これまで15万件を超えるアクセスがあった「デジタル土壌図」の利便性をより高めるため追加された。同機構は、「機能の追加や新たな土壌データを公開することで土壌情報の利用促進につなげたい」としている。


「日本土壌インベントリー」は、土壌分類の解説や土壌温度などの情報を提供するウェブサイト。日本全国の土壌の種類や分布を示した「デジタル土壌図」を公開する。

「デジタル土壌図」は、日本全国の土壌の種類や分布を示したオープンデータ。日本の国土全域を網羅した「縮尺20万分の1相当」と農耕地のみを抽出した「縮尺5万分の1相当」の2つのデータがある。公開されているデータは、農作物の施肥管理や水管理など農業分野のほか、土壌ごとに異なる化学物質の動態把握など環境に関する行政施策にも活用されている。

農林水産省では、堆肥の標準的な施用量について、土壌中にある有機物含量の維持すべき目標値や堆肥の種類、地目等を土壌分類ごとにを定めてきた。

これを受け、農研機構では「土壌のCO2吸収量見える化サイト」 を通じ、農耕地への有機物施用量から土壌中の炭素量の増減を計算して土壌の二酸化炭素 (CO2) 吸収量を公開してきたが、土壌の物理性改善や養分保持等と関係する土壌有機物含量の増減量については示していなかったという。

土づくりの指標となる有機含有量を計算する新機能を追加


「土壌有機物管理ツール」は、土づくりの指標となる土壌中の有機物含量が堆肥の施用によって、どの程度変化するか計算できるツール。

デジタル土壌図上で地点を選択して、栽培する作物・堆肥等の施用量・緑肥作物などの情報を入力すれば、土壌有機物含量の年間増減量を計算することができるそうだ。また、土づくりの副次的な効果として土壌中への二酸化炭素の吸収量も計算できることから、地球温暖化の緩和に向けた活用も期待されている。

「土壌有機物管理ツール」参考画面 出典:農研機構

土壌の温度・水分・特性を示した3つの新データを追加


追加されたデータベースは、「全国約200地点の土壌温度・水分の日々推定値」、「全国約3500地点の土壌断面調査データベース」、「国際土壌分類方法に準拠した全国デジタル土壌図」の3つ。

全国約200地点の土壌温度・水分の日々推定値
全国約200地点における4深度(1cm・5cm・10cm・20cm)と1日ごとの土壌温度や土壌水分の平年推定値を公開したもの。同機構では、「緩効性肥料や施用有機物の肥料成分の溶出パターン把握などへの活用が期待できる」としている。

「土壌温度・水分の日々推進値」の閲覧ページ 出典:農研機構
全国約3500地点の土壌断面調査データベース
深さ約1mまでの土壌層位の土壌特性値等を公開したもの。
データは約25~60年前に行った断面調査の分析値であることから多少の変化は見込まれるが、礫含量や粒径組成、塩基置換容量(CEC)、リン酸吸収係数などの土壌特性値は、土壌管理による変化が少ないため現状の近似値として使用できるとのことで、施肥設計や栽培管理等への活用が期待されている。

「土壌断面調査データベース」の閲覧ページ 出典:農研機構
国際土壌分類方法に準拠した全国デジタル土壌図
国連食糧農業機関が作成した「世界土壌資源照合基準(国際的な土壌分類方法)」に準拠したデジタル土壌図(縮尺20万分の1相当)。日本の「デジタル土壌図」と並べて表示させることで、土壌分類名の国際対比ができるそうだ。

「国際土壌分類方法に準拠した全国デジタル土壌図」の閲覧ページ 出典:農研機構
「全国デジタル土壌図」を公開するウェブサイト「日本土壌インベントリー」では、デジタル土壌図の活用事例をまとめたマニュアルほか、アプリ版である「e-土壌図II」の使用方法も公開している。

同機構では今後、デジタル土壌図の更新体制の構築を行うと共に、広域での土壌温度・水分量のリアル・タイム予測システムの開発などを進めていきたい考えを示した。


日本土壌インベントリー
https://soil-inventory.dc.affrc.go.jp/
農研機構
https://www.naro.affrc.go.jp/index.html
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  1. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 田中克樹
    田中克樹(たなかかつき)。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  3. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
  4. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  5. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
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