太陽光発電を有機農業の運営日に 「有機農業支援型ソーラーシェアリング事業」スタート

再生可能エネルギー事業を展開するみんな電力株式会社と株式会社グリーンシステムコーポレーションは、営農型太陽光発電所で発電した電力を活用して有機農業の運営を支援する「有機農業支援型ソーラーシェアリング事業」を2020年8月19日に開始した。

同事業では、みんな電力が契約する法人が必要とする電力の需要量とグリーンシステムコーポレーションが所有する営農型太陽光発電所で発電された電力量をマッチングして電力の提供を行う。事業の根幹となる電力量のマッチングにはブロックチェーン技術を活用した電力取引・トレーサビリティシステムが用いられる。

営農型太陽光発電所とは、支柱を立てた農地の上部空間で発電を行う太陽光発電設備を指す。

みんな電力株式会社


みんな電力は、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー事業を中心に事業を展開する企業。同社が提供する「顔の見える電力(TM)」は、発電者と生活者をつなぐ電力の小売りサービス。電力の生産者である発電者の顔やストーリーなどの情報が公開されているのが特徴だという。


同社が独自に開発したブロックチェーン技術による電力取引・トレーサビリティシステムは、電力取引の追跡可能性を実現したシステムで、「電力取引履歴生成システム」などを名称に3件の特許を有する。

同社の電力事業における再生可能エネルギーの利用率は68.67%で、年間300MWh以上の低圧電灯を供給する小売電気事業者153社の中でも上位に位置するとのこと。

現在は、個人や事業者など150カ所以上の再生可能エネルギー発電所と契約して電力の供給を進めるほか、電気料金の内訳を1円単位で通知するサービス「超明細」を提供する。

株式会社グリーンシステムコーポレーション


グリーンシステムコーポレーションは、ソーラパネルの提供など個人や事業者を対象に太陽光発電に向けた事業を展開する企業だ。個人住宅への設計・施工(約6000件)ほか、休耕地や空き地などへの設置実績を持つ。(約540か所※合計出力75Mwに相当)

同社が所有する栃木県宇都宮市の営農型太陽光発電施設では、同社のグループ会社である株式会社グリーンウィンドが小麦の栽培に取り組んでいる。2014年には宇都宮市の10a当たりの平均収穫量である300kgを上回る368kgの平均収穫量を達成したそうだ。

同社では、営農型太陽光発電施設を活用した畜産業への取り組みも進めるほか、太陽光発電と有機農業を融合した「農業6次産業化プロジェクトと持続可能なSDGs」も推進している。

ソーラパネルの下で営まれる畜産の様子

農業人口の減少による耕作放棄地の利活用に向けて


日本の農業人口の減少は深刻な社会課題であり、10年前には約268万人いたとされる農業者の数は約168万人まで減少している。平均年齢も67.0歳と高齢化も同時進行している状況で、2015年には国内の農地面積の内およそ10%を占める42.3万haが耕作放棄地として報告された。

耕作放棄地面積の推移 出典: 「荒廃農地の現状と対策について」 2020年4月農林水産省
農地を一時的に転用して農業と発電事業を同時に行うソーラーシェアリングは、農業者の高齢化や減少、耕作放棄地の増加、FTI(固定価格買取制度)の導入等で注目を集め、2018年8月末時点の許可件数は1347件を数える。

現在、関東1都6県には約58万haの農地があり、その10%にあたる約5.8万haの農地にソーラーシェアリングを導入できれば、約1300万世帯分の年間使用量が発電できるそうだ。

一般社団法人太陽光発電協会の発表によれば、2050年には太陽光発電の想定導入量の内、4分の1を占める116GW分が耕作放棄地を含めた農地で行われると想定されている。

農林水産省でも、「ソーラーシェアリングが農業経営を支える」として、年間200万円の売電収入を得る農業事業者の事例等を紹介している。


電力量をマッチングして有機農業の運営費へ


今回の事業は、みんな電力が契約する法人が必要とする電力の需要量と、グリーンシステムコーポレーションが所有する営農型太陽光発電所で発電された電力量を、30分ごとにマッチングして電力の提供を進めるものという。

グリーンシステムコーポレーションが所有する栃木県宇都宮市にある営農型太陽光発電所を、「阿久津さんの有機小麦太陽光発電所」として、利用者が使用した電気料金を有機農業の運営費に充てられる仕組みを構築していく。

2020年度中には、「有機農業支援型ソーラーシェアリング事業」を3件導入(約4,000平方メートル相当)して、競合他社へのモデル展開ほか非FIT発電所との取り組みにも注力するとのこと。

同発電所で収穫された小麦は、食パンへと加工されグリーンシステムコーポレーションが運営する食パン専門店「風弥」での販売ほか、再生可能エネルギーのみを活用して生産された物品を扱うECサイト「Green Dept」での販売が予定されている。


今後は、この事業をモデルケースに、発電した電力を「顔の見える電力(TM)」として売電しながら、みんな電力のネットワークを活用して「有機農業の販売経路の拡大も実現したい」としている。

みんな電力は、ブロックチェーン技術を用いた電力トレーサビリティシステムのノウハウを活用することで、農作物の品種や作付日、出荷日など農作物のトレーサビリティ情報と電力のトラッキングサービスを両立した次世代型のソーラーシェアリング事業を実現したい考えだ。


みんな電力株式会社
https://minden.co.jp/
株式会社グリーンシステムコーポレーション
https://green-system.jp/
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WRITER LIST

  1. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  2. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  3. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  4. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  5. 藤本一志
    ふじもとかずし。大学・大学院の6年間を通して地域づくりと農業の活動に関わる。1年間のサラリーマン生活の後、学生時代から活動していた地域に移住し、2拠点居住を開始する。移住支援を通じた地域づくり活動に取り組む傍ら、兼業農家として稲作に取り組む。