メロン生産全国3位のつがる市、水耕栽培とIoTによるハウスメロンの実証結果を公表

青森県、つがる市、地元生産団体らで構成する「つがるブランド推進会議」は、ガラス温室に設置した最新の水耕栽培設備とNTT東日本が提供するIoT機器を使用してメロンの通年栽培を目指す実証実験の検証結果を公表した。


経験や勘に頼らないメロン生産を実現


つがる市は、市町村別で全国3位(約26億円)産出額を誇る国内有数のメロン産地として知られているが、農業人口の減少や高齢化、担い手不足等の課題を背景に生産量が減少傾向にあるという。

今回の実証実験では、「最新の水耕栽培技術である町田式新農法」、「温度・湿度・日射量・水温・二酸化炭素濃度等を測定するIoT機器」、「ガラス温室に隣接する温泉施設の温泉熱」の3つを利用した吊り下げ式の高設栽培を実施。

スマートフォンやパソコンを使用してガラス温室内の栽培データを遠隔から収集・管理することで、熟練農業者の経験や勘に頼らないメロン生産を実現していく。

実証実験で使用している温室ハウス。地面に温泉の配管が通る。

温室ハウス内に設置された栽培槽

温室ハウス内の温度・湿度・日射量等を測定するIoTセンサー

スマートフォンやパソコンを使用して温室ハウス内の環境を確認

検証結果の内容と今後の展望は以下の通りだ。

検証結果の内容
・試験栽培(2020年度)
年3回の収穫を目標にした試験栽培を実施した結果、1株当たり夏20個・冬15個の収穫量を達成。(通常の土耕栽培の場合、1株当たり約4個)将来的には、施設内の作付環境を改善して1株当たり30個の収穫量を目指す。

・栽培方法の改良・品種による比較(2021年度)
つがる市の課題である冬場の日照不足を解決するため、蛍光灯、LED、メタルハライドランプの3つを使用して補光効果を検証した結果、LEDを使用した場合の方が、生育状況やコスト面においてプラスの効果があることが判明。

糖度については、季節・条件に関係なく平均15度を維持できたが、玉の大きさにバラツキが見られた。
2022年度は、過去4回の試験栽培で蓄積したデータを基に「地元主力品種の冬期栽培試験」と「光合成促進剤による生育比較試験」を実施して、品種ごとの生育状況や収穫量の違いを検証する。

今後の展望
・約30坪(4槽の栽培槽)の栽培面積を約120坪(22槽の栽培槽)に増やして、より詳細な試験データを蓄積・分析する。
・継続的な出荷体制を維持できる2つの栽培系統を構築して、2022年度900玉程度、2023年度1900玉程度の出荷を目指す。
・実証試験の結果を基に栽培方法のマニュアルを作成して、冬期間の所得向上と新規就農の機会創出を図る。
・つがる市が東京都新宿区で運営しているアンテナショップ「果房メロンとロマン」を通じて、つがる市産メロンの知名度向上を図る。


つがるブランド推進会議
http://www.tsugarubrand.jp/sphone/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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