三菱マヒンドラ農機、プラスチックを使用しない「水稲用ペースト一発肥料」の有効性を実証

三菱マヒンドラ農機株式会社は、「みどりの食料システム戦略」の認定事業に選定されているペースト施肥対応の田植機を使用した実証試験の結果を公表した。

水稲ペースト一発肥料対応の施肥機を搭載できる田植機。
4条から10条までの9機種をラインナップ。
(LE4A・LE50・LE60・LE50AD・LE60AD・LE70AD・LE80AD・LR103D・LKE60AD)

水稲ペースト一発肥料を入れる様子。
粒状の肥料とは違い雨の日の作業も可能。

現在、日本の農業現場では、プラスチック被覆殻で覆われた粒状一発肥料を使用した水稲栽培が多く行われているが、マイクロプラスチックによる土壌汚染や水質汚染の問題から、プラスチックを使用しない肥料への転換が求められるようになってきているという。

平均を上回る収穫量を確保

同社が開発したペースト施肥対応の田植機は、本体に取り付けた2つのノズルから、ペースト一発肥料を上・下に施肥する二段施肥を採用した製品。

ペースト一発肥料とは、窒素、リン酸、加里などの原料を粉砕しペースト状に加工した肥料で、粒状一発肥料の課題であるプラスチック被覆殻の流出を防げるとして多くの注目を集めている。

肥料成分が土中に留まりやすいため、追肥を行う必要性が低く、慣行栽培と比較して肥料の使用量を約3割程度削減できることがわかっている。

ペースト二段施肥のイメージ

苗を植えながら土の中に施肥する。

今回の実証実験では、新潟県長岡市、岡山県岡山市、栃木県矢板市にある3つの圃場を利用して、ペースト施肥対応の田植機を使用した田植えを実施。

その結果、「ペースト一発施肥による田植えは、粒状一発肥料の課題であるプラスチック被覆殻の流出を防ぐだけではなく、各県の平均を上回る収穫量を確保することが可能」とのデータが示されたとのこと。

2022年6月に岡山県で実施されたペースト二段施肥による田植えの様子

実証実験のデータ


1)圃場のデータ

新潟県長岡市(30アール)

田植日:2022年5月16日
収穫日:2022年9月16日
栽培品種 :コシヒカリ
植付条件:条間30cm・株間30cm/37株
使用肥料:マム水稲用9号(N成分施肥量=全量5.4kg/10a※施肥深さ5cm)
岡山県岡山市(30アール)
田植日:2022年6月21日
収穫日:2022年11月5日
栽培品種:あけぼの
植付条件:条間30cm・株間30cm/37株
使用肥料:てまいらずペースト488(N成分施肥量=全量5.3kg/10a ※上段2.7kg 施肥深さ 5cm・下段2.7kg 施肥深さ9cm)
栃木県矢板市(30アール)
田植日:2022年5月12日
収穫日:2022年9月14日
栽培品種:コシヒカリ
植付条件:条間30cm・株間30cm/37株
使用肥料:マム水稲用9号(N成分施肥量=全量5.6kg/10a※上段2.8kg 施肥深さ 5cm、下段2.8kg 施肥深さ15cm)

2)収穫量のデータ

令和4年度の各県平均に対し収穫量が11~24%増加。
食味も良好で80以上のスコアが示されたという。


三菱マヒンドラ農機株式会社
https://www.mam.co.jp/
みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業実施計画(三菱マヒンドラ農機)
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/attach/pdf/221101-1.pdf
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  1. よないつかさ
    1994年生まれ、神奈川県横浜市出身。恵泉女学園大学では主に有機栽培について学び、生活園芸士の資格を持つ。農協に窓口担当として5年勤め、夫の転勤を機に退職。アメリカで第一子を出産し、シカゴ生活を綴るブログを運営。一番好きな野菜はトマト(アイコ)。
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    1994年生まれ、山形県出身、東京農業大学卒業。大学卒業後は関東で数年間修業。現在はUターン就農。通常の栽培よりも農薬を減らして栽培する特別栽培に取り組み、圃場の生産管理を行っている。農業の魅力を伝えるべく、兼業ライターとしても活動中。
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    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
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    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
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    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。