千葉大学ら研究チーム、肥料として利用できるプラスチックの機能化に成功

千葉大学大学院工学研究院、東京工業大学物質理工学院応用化学系、東京大学大学院農学生命科学研究科らで構成する研究チームは、肥料への変換を可能にするプラスチックの機能化に成功した。


現在日本では、循環型農業の実現を目的に、廃棄された植物由来のプラスチックを肥料に変換する研究が進められている。しかし、肥料への変換を可能にするプラスチックを製造するためには、安定性と分解性の相反する2つの特性を考慮した分子設計が必要だといわれている。

これを受け、千葉大学大学院工学研究院らの研究チームは、優れた安定性を持つ一方でアンモニアに反応し、尿素へと変換する作用を持つカーボネート結合に着目。先行研究では、この有機反応をポリイソソルビドと呼ばれる糖由来のポリマー(PIC)へと適用し、得られる分解生成物が肥料として利用できることを明らかにした。

しかし、PICはそのままでは脆く、材料として利用するために機能化手法の開発が求められていた。

共重合体を用いた分解生成物を利用


今回の研究では、PICの課題である物性の調整や新たな機能の付与などの効果を有した共重合体を用いて分解生成物を生成。


その後、生成した分解生成物を利用してシロイヌナズナの生育実験を行ったところ、肥料としての機能を果たす十分な根拠が示されたという。


今回合成されたポリカーボネートの共重合体は、再生可能な植物由来の糖を原料としており、バイオエンジニアリングプラスチックとして今後利用されることが期待できる。

研究チームは、ここで提案する高分子材料設計が、「プラスチックの廃棄問題」と「人口増加による食料問題」を同時に解決する、革新的なシステムへと昇華されることを期待している。


千葉大学大学院工学研究院
https://www.f-eng.chiba-u.jp/
東京工業大学物質理工学院応用化学系
https://educ.titech.ac.jp/cap/
東京大学大学院農学生命科学研究科
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
パックごはん定期便