千葉大学、気象衛星「ひまわり8号」を通じて植物の乾燥状態を検出する手法を開発

千葉大学環境リモートセンシング研究センターらの国際研究グループが、気象衛星ひまわり8号で観測した地表面温度の日変化情報を基に、従来手法よりも詳細に植物の乾燥状態を検出できる手法を開発した。

分光植生指標では判別できない乾燥シグナルを検知


現在、日本では極軌道衛星で観測した分光植生指標(EVI)を基に、植生環境のモニタリングを行っている。しかし、高温や乾燥による環境ストレスを受けた状態を検出することは困難である。また、南極と北極の付近を周回する極軌道衛星では、同一地域の分光植生指標を観測できる実質の頻度は数日に1回であり、急速な環境変化をとらえることができないという課題を抱えていた。

一方、気象衛星「ひまわり8号」は高頻度観測を得意とする衛星であり、晴天日の地表面温度を10分毎に観測できる。

「地表面が乾燥すると温度変化が起きやすくなり、日変化のピークが早まる」、「植物は乾燥によるストレスを受けると、蒸散速度を下げるため、さらに温度が上昇しやすくなる」という2つの関係に着目して、地表面温度の日変化情報を活用できれば、分光植生指標とは異なる新たな視点でのモニタリングが期待できるとしていた。

研究では、2018年夏の日本周辺の猛暑を対象に、気象衛星ひまわり8号で観測した地表面温度を基にした日周温度サイクルである「DTCモデル」を活用して、乾燥状態の検出に有用な日変化情報を調査した。これにより、日較差と日最高温度を用いれば、従来では判別できなかったレベルの乾燥シグナル(大規模な枯渇や変色には至っていないけれど、乾燥化が起きている状態)を検知できることがわかったという。

また、気候条件の異なる地域に今回の手法を拡張したところ、特に半乾燥地域において、日最高温度と日較差の増大に応じて光合成量が低下する傾向も確認された。

気象衛星ひまわり8号による植物の乾燥化検出の概略図

日較差・日最高温度・土壌水分量・分光植生指標(EVI)の偏差

千葉大学環境リモートセンシング研究センターらは、今回の研究成果を通じ、植物の水分不足のサインをとらえる新たな技術を確立したい考えだ。


千葉大学環境リモートセンシング研究センター
https://ceres.chiba-u.jp/
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  1. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  2. 槇 紗加
    槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  3. 沖貴雄
    沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  5. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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