天地人が衛星データ活用し、鳥取砂丘にて高品質アスパラガスの現地栽培実証を開始

株式会社天地人は、2023年度より鳥取県で行われている衛星データ活用サービスの実証事業を2024年度も継続すると発表した。今後、衛星データを活用して導き出した適切な栽培管理方法をもとに、鳥取砂丘での高品質なアスパラガス栽培を目指して現地栽培実証に取り組む。


衛星データ活用し鳥取砂丘でアスパラガス栽培を


株式会社天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルティングを行う企業。宇宙ビッグデータを活用し、農業や地域開発に貢献するプロジェクトも推進している。

鳥取県は、宇宙産業の創出を目指しており、衛星データの活用や、鳥取砂丘の月面化プロジェクト、宇宙産業による地域おこしなどに注力している。天地人は2023年度にこの事業に採択され、農業プロジェクトである「月面アスパラガス」で培った知見を活かし、農地環境を分析してアスパラガス栽培における最適な栽培管理方法を検討してきた。

2024年度は、前年度の知見をもとに鳥取砂丘の農地で栽培実証を行う。その土地に合った適切な栽培管理を施すことにより、本来産地ではなかった土地でも、美味しく高品質なアスパラガスを栽培することを目指していく。

4月22日には、鳥取砂丘栽培実証の圃場にアスパラガスの苗を定植し、栽培が開始された。「天地人コンパス」を活用し、実証圃場やアスパラガス産地の土地環境データ・過去の気象データ等を参照して得た栽培管理プランの有用性を検証していく。実証期間は、2025年3月までの約1年間の予定だ。

アスパラガス苗

アスパラガス苗定植の様子

アスパラガス苗定植の様子

現地栽培実証には、鳥取砂丘の農地の特徴を活かし、白ねぎ・ミニトマト・サツマイモ・アスパラガスなどの生産を行っているCamelプランテージ合同会社が協力する。

実際に農産物生産に使用している農地の一部を同事業の実証圃場として提供し、日常的な巡回や栽培管理についての協力を行うとしている。

写真左:天地人 岡田和樹氏、中央:Camelプランテージ 川原篤史氏 、右:天地人 木村俊太氏


Camelプランテージ 川原氏のコメント
鳥取砂丘の農地は、砂質で水はけがよく、塩分も多く含んでいるなど他とは異なる特徴的な環境です。私たちはその特徴的な環境をうまく活用して、美味しい野菜を生産できるよう工夫しています。例えばミニトマトは、塩分を含む土で育てたからこそ味が凝縮された、甘いトマトを栽培できています。またアスパラガスでも、砂地の特性上、必要最低限の肥料成分でアスパラガスが生育することにより、柔らかく、生でも食べられるアスパラガスが収穫できています。今回の取り組みを通して、ふつうの農地とは異なる環境でも、その違いを逆手にとって、美味しいものを栽培できるように活用する、という技術が発展していけばと思います。

「天地人FARM」が栽培した「月面アスパラガス」


「月面アスパラガス」の栽培は、「宇宙ビッグデータ米」の経験を活かして行われる新しい取り組みだ。宇宙ビッグデータ米は、人工衛星から送られてくる気象情報などのビッグデータを元に、水田の水を適切に管理して栽培されたお米を指す。月面アスパラガスは、2023年春にも出荷実績があり、今年は2度目の出荷となる。

アスパラガスは、栄養ドリンクに含まれる「アスパラギン酸」や強力な抗酸化物質「ルチン」が豊富に含まれる。宇宙では、生活習慣病を抑える働きをしている抗酸化物質の量が低下する可能性が報告されており、アスパラガスは、月面で生活する人類の健康の維持に貢献できると考えられている。

月面アスパラガスは、宇宙飛行士が宇宙に近い環境に段階的に移行して訓練するのと同様に、月面でのアスパラガス栽培を最終目標として、段階的な研究開発を進めている。

Phase1:通常の畑で美味しいアスパラガスを栽培する
Phase2:耕作放棄地で美味しいアスパラガスを栽培する
Phase3:過酷な環境もしくは限られた資源で美味しいアスパラガスを栽培する
Phase4:月面で美味しいアスパラガスを栽培する

2023年は、Phase1として、明治大学の野菜園芸学研究室を中心に、サナテックシード株式会社と東京都多摩市ほか2市による共同開発で誕生した「採りっきり栽培」を参考に栽培を開始した。

2024年はPhase2 にステップアップする前段階として、前回とは異なった環境でのアスパラガス栽培を行う。これにより、環境が異なる2地点での栽培ノウハウを蓄積し、さらなる厳しい環境でのアスパラガス栽培に取り組んでいくとしている。


株式会社 天地人
https://tenchijin.co.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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