生産者と消費者を結ぶ直販サイト「OWNERS」、「お取り寄せ」市場に拡大

生産者から消費者に直送するD2C(Direct to Consumer)プラットフォーム「OWNERS」を運営する株式会社ukkaが、ベンチャーキャピタル3社、メルカリ小泉氏を含む個人投資家計3名を引受先とする第三者割当増資を実施。総額1億2000万円の資金調達を実施し、「OWNERS」をファンやお得意様といった消費者の特別感を販売に結びつける「お取り寄せ」市場にも拡大させる。

撮影:水津 惣一郎

生産者と消費者のニーズを直接マッチングする「OWNERS」

OWNERS は、小規模でも強いこだわりを持って作られる食材を、ストーリーとともに、最も旬の時期に生産者から直送する仕組みを提供する直販サービス。この仕組みは、生産者側のキャッシュフローが悪い、価格決定権がなく売価が安い、規格外品が流通しない、食べる人の顔が見えない、といった生産者側の課題を解決すると同時に、消費者側の「特別なものを食べたい」「最も美味しい時期に新鮮なものを食べたい」「食の裏側を知りたい」といったニーズをマッチングする。


2019年5月時点では、全国100以上の農業・水産・加工品の生産者と連携し、生産者によっては年数百万の売上げを確保するなど、新たな直販手段としても機能している。昨年からは三菱地所グループや地方自治体との連携を実施し、都内マンションやレストランにおいても利用機会の創出と拡大を進めていく。

今回の資金調達により「オーナー制度」の仕組みをより高付加価値なものにしつつ、同時に日常使いの単発購入や、お気に入り生産者・食材のサブスクリプションなど、ニーズに合わせての販売形態の多様化を実施。 今後は、全国の生産者のストーリーを可視化し、こだわりを持って生産したものを様々な形で直接販売できる「一次産業のD2Cプラットフォーム」として、生産者直販サービスのスタンダードを確立していきたいとしている。

1兆3000億円の「お取り寄せ」市場を再定義

OWNERSがアップデートするのは、「お取り寄せ」の領域。その市場規模は1兆3000億円(※)を超えるにもかかわらず、過去20年ほど販売形態に変化はなかった。ukkaは、効率を追求した工業的な食が増加すればするほど、その逆の、旬やストーリーを重視する食、共感型・参加型の購入スタイルに対するニーズが益々高まっていくと考えている。

収穫直前まで完熟させ皮ごと食べられるAOKI FARMの「樹上完熟イチジク」
従来の「お取り寄せ」は、ランキングやメディア掲載、価格、色/重さ/形といった情報を基準として選択せざるを得なかった。一方で、OWNERSが目指す「お取り寄せ」は、作り手の背景を知り、直接つながりを持ちながら持続的に購入していくことができる仕組み。

瞬間的な欲求を満たす消費ではなく、「ファンだからこそ買える」「お得意様」といった特別感、参加感や体験までを含めた価値を創出することにより、「お取り寄せ」をアップデートしていくとしている。

(※)矢野経済研究所「2018年版 食品の通信販売市場」チャネル別市場規模構成比参照

投資家(一部)コメント

W ventures 代表パートナー 東氏
「日本の一次産業が抱えている課題は大変大きく、テクノロジーによる解決が期待される分野が多くあると認識しています。ukkaは元Aiming CTO小林氏をはじめとした、日本でも稀に見る、テクノロジーに強みを持ったアグリテックベンチャーです。「100年後に続く食と農のあるべき形を創る」という熱い思いと、最先端のテクノロジーをかけあわせて、生産者と生活者の新しい関係を作り、日本の一次産業を変えてくれていってくれると信じています。ukkaが変える日本の一次産業の未来を大変楽しみにしています」

KVP 代表パートナー 長野氏
「OWNERSはただのコマースではなく、生産者の想いを最大化させるプラットフォームを志向しており、そのビジョンは素晴らしいと感じました。OWNERSが目指すオーナー制度は日本の一次産業に変革をもたらす可能性がありますが、新しい概念なので困難も多いかと思います。ただ、谷川さん、小林さんはじめとしたこの素晴らしいメンバーであればやりきれると感じ、KVPとしてぜひ投資させて頂きたい思いました」

小泉文明(株式会社 メルカリ 取締役社長兼COO)
「OWNERSは難しく言えば「今までの仕組みを変える新しい食のプラットフォーム」であり、簡単にいえば「めちゃくちゃ美味しい食べ物が買える最高なサービス」である。是非OWNERSでぽちっと買い物を楽しんでもらいたい。家に最高の食材が届くことをお約束するし、届くまでが楽しみで仕方ない。OWNERSで働くチームもモチベーションが高く、今後の成長が楽しみな会社であり、株主として応援していきたい」

西川 順(株式会社エウレカ 共同創業者)
「今までの一次産業の流通の仕組みでは、生産者側の課題と、消費者側のニーズどちらも解決しきれていませんでした。しかし、OWNERSは、それらの解決策になり得ると同時に、私たち消費者に新たな価値と体験を提供してくれる素晴らしいプラットフォームです。日本だけではなく、海外にもマーケットチャンスがあるOWNERSのチャレンジを可能な限りサポートさせていただきたいと思っています」

<参考URL>
ukka会社
OWNERSウェブサイト

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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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