日本の農産物の 「美味しさ」 と 「知財」 を世界へ、 日本農業が資金調達を発表

株式会社日本農業が、株式会社デンソー、オイシックス・ラ・大地株式会社らを引受先とする、第三者割当増資および複数の金融機関からの融資等による総額約8億円の資金調達を発表した。




株式会社日本農業とは?

日本農業は、日本の農産物の輸出や品種の保護などを主なビジネスとするスタートアップ企業で、タイやインドネシア、フィリピン、香港、台湾など東南アジアを中心に農産物を輸出している。


当社ブランド「ESSENCE」
特に、インドネシア、タイ、フィリピンの3カ国においては、同社のブランドリンゴである 「エッセンス」 が、日本産リンゴの中で市場シェアトップを誇る。
農産物の輸出コンサルティング事業も行っており、海外市場調査や事業計画立案の支援、マーケティング戦略立案や貿易に関する書類作成など、輸出を検討している生産者を総合的かつ多方面から支援しているという。

世界中の人々に日本の農作物の美味しさを届けることを目指しており、日本の優良品種の不正流出や無断栽培の防止を目的とした活動にも意欲的だ。

タイのスーパーにおける日本産リンゴのサンプリング日本産リンゴのサンプリング(タイのスーパー)

調達資金の使途


今回の調達で得た資金は、タイにおける日本品質の青果の生産実証のほか、品種の知財保護策立案や国内農園への出資、東南アジアにおけるマーケティング費用や採用費用に充当していく方針だ。調達先企業のコメントは以下の通り。

■資金調達先のコメント


株式会社デンソー AgTech推進部長 加藤 治彦氏(かとう はるひこ)
日本農業は、日本の豊かな食文化をグローバルに広げるため、生産から販売までさまざまな取り組みを実践しています。当社はその取り組みに共感し、今後直面するであろう課題に対し、可能な限りの支援を実施していきます。

オイシックス・ラ・大地株式会社 取締役 経営企画本部 本部長 松本 浩平氏(まつもと こうへい)
日本農業は、輸出を増やすという視点から、日本の農業の未来を考えています。今後の人口減少を考え、日本で農業を頑張っても売り先が無いという問題の解決につながるため、当社の取引先の農家もとても興味を持っております。当社では、得意とする商品供給での支援など、できる限り実施することで、成長の支援を実施してまいります。

日本農業が目指す世界


日本の農業は、限られた土地の中で品質向上に努めてきた農家の存在により、高品質な農産物を作ることにおいて世界でもトップクラスの技術を有するといわれている。

一方で、販売先は主に国内市場が中心であり、コスト面で優位性のある海外産品目の流入による競争の激化や人口減少に伴う需要減など、危機的局面を迎えているのも事実だ。

さらに近年では、日本の優良品種に目を付けた海外の業者が、知財を国外へ持ち出し無断で栽培・販売するなど、日本の農家に入るはずの利益が国外へ流出している可能性も指摘されているという。

同社では 「日本農業が目指す世界」 として、以下3つの目標を掲げている。

  1. 海外の輸出販路を開拓し、付加価値のある商品が作った分だけ適切な価格で販売できる環境を創る
  2. 優良なメイドインジャパンの品種を保護し、それらを栽培したいと思う海外農家を開拓
  3. 農産物のライセンスビジネスを推進することにより、日本の農業を「儲かる産業」へ転換

今後は東南アジア以外の事業展開も推進し、政府が掲げる農林水産物・食品の輸出額1兆円達成の牽引役として邁進していく考えだ。

<参考リンク>
株式会社 日本農業
株式会社デンソー
オイシックス・ラ・大地株式会社
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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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