柑橘農家の人手不足対策|収穫要員を増やす前に見直したい「仕事が詰まる場所」

柑橘の収穫シーズンは、収穫だけでなく、運搬、選果、箱詰め、発送まで作業が重なります。「あと1人いれば楽になる」と思ってアルバイトを増やしても、収穫量が増えた分だけ選果待ちの果実がたまり、結局夜まで作業——ということもあります。

こうした失敗が起きないようにするためには、作業工程を分解し、何が最も負荷になるか、といった分析ができればいいのですが、収穫・出荷の繁忙期にはそんなゆとりも持てないのが現実です。

たしかに、単純に人数を補えば解決できることはたくさんありますが、人材不足の中で考えるべきは、農園の作業のどこで仕事が詰まっているかをはっきりさせるということです。

繁忙期の作業がうまく進まない理由は、「手数不足」「判断者不足」「時間不足」の3つに分けられます。原因に合わせて外部人材や外注を使えば、少ない人数でも仕事を回しやすくなります。

そこで今回の記事では、繁忙期の柑橘の収穫・出荷シーズンをうまく回すため、先人の知恵を借りてすぐに実践できる方法を、農業マネジメントという観点から考えてみたいと思います。



課題は「何人足りないか」ではなく「どこで止まるか」


前述した作業が進まない理由は、いずれも何かが足りない、うまく回せていない、という点は共通しています。

より具体的にみていくと、「手数不足」というのは、収穫や運搬など、作業量に対して単純に手が足りていない状態です。人数×作業時間のどちらかが足りなくても、目標とする日程に間に合わせることはできません。

「判断者不足」というのは、人はいても「これは出荷できるか」「どの規格にするか」といった最終判断が特定の人に集中している状態。最終判断する人間を増やさない限り、ここがボトルネックになってしまいます。

そして「時間不足」は、収穫、選果、発送などが同じ日に集中し、それぞれはできても1日の作業時間の中に収まらない状態です。例えば選果が追いついていないのに収穫要員だけ増やしても、選果待ちが増えて作業が止まってしまいます。

自身の繁忙期の1日を振り返り、まずは「誰のところで仕事が止まっているか」「時間と人数を確保すべきポイントはどこか」を探してみることで、余計なコストや時間を減らすこともできるでしょう。

では、それぞれの「不足」に対してどのように対処すればいいのでしょうか。ひとつずつ解決していきましょう。


手数不足|外注するなら「作業」より、取り戻せる時間を見る


収穫シーズンの作業の中で、コンテナ運びや箱づくりなど、単純作業を人に任せること自体は珍しくありません。

ただ、外注相手を選ぶときに、「簡単な仕事から渡す」のではなく、「その仕事を手放すと、誰の時間が空くのか」ということを考えてみましょう。

例えば、経営者が毎日1時間、コンテナ運搬をしているとしたら、それを外部人材に任せれば、その1時間を収穫や品質判断など、経験が必要な人間の仕事に使えます。

つまり見直すべきなのは、

外注する仕事の“時給”

ではなく、

外注によって取り戻せる“熟練者の時間”

です。

同じ1時間を任せるなら、「自分でやるにはもったいない仕事」から探す方が、繁忙期のの効果は大きくなります。

簡単な作業を外部に任せ、複雑かつ判断が必要な作業を経営者・農家自身で行うだけで、作業の効率は大幅に改善できます。


判断者不足|選果は「任せる」より「判断回数を減らす」


選果に関しては、外部の選果場を利用できる場合もありますが、直販用などでは自家選果が必要になります。むしろ、そういった作業の時ほど、ある程度経験のある人手が欲しいところですが、期待するような人材がいるとは限りません。

そこで、選果そのものを外注するのではなく、熟練者が判断する果実を減らすと考えてみましょう。

例えば、販売用の柑橘の選果基準を、

  1. 明らかに出荷できる…傷やしみなどが一切見当たらないもの
  2. 明らかに外す…傷や破損、黒点など、商品として何らかの欠陥があるもの
  3. 判断が必要…傷やしみなどの程度によって判断が難しいもの

の3つに分けます。

経験の浅い人には①②の2つを振り分けてもらい、迷ったものだけを③として別にして、最後に熟練者が確認します。

この時、初心者にすべての選果基準を覚えてもらう必要はありません。高度なマニュアルや指示をしても、簡単には覚えられないこともあります。

それよりも、「迷ったら保留」というルールを作り、熟練者が全部を見る状態をなくすことの方が効果がすぐに現れます。

農研機構のスマート農業実証でも、温州みかんのプレ選果システムによって家庭選果の労働時間を削減した事例があります。機械を導入しなくても、「本当に人の判断が必要なものだけ絞る」という考え方は応用できます。



時間不足|人を増やせないなら「ピークをずらす」


計算上は、人数が多くなれば作業時間自体も分散して早く作業を終えられます。ですが、注文から発送までの時間が限られているといった純粋な時間不足が原因なら、1日の作業量そのものを分散できないかを考えてみましょう。

特に直販では、注文をいただいたら1日でも早くお届けしたい、という気持ちになりがちです。しかし、日々の農作業も行いながら発送作業も上乗せされるといったケースでは、いくら人数が多くても絶対的な時間が足りません。

そのような場合は、あらかじめ受注から発送までの期間を定めて告知しておくことで、誠実な対応と時間不足の解決もできます。

例えば、

  • 発送日を週数回にまとめる
  • 注文時に発送日の幅を持たせる
  • 1日の発送件数に上限を設ける
  • 繁忙期は注文締切を早める

といった方法があります。

品種や設備などの条件が合えば、予措・貯蔵によって出荷時期を調整する方法もあります。農研機構では、温州みかんの貯蔵環境を管理しながら出荷調整する実証も行われています。

重要なのは設備そのものではなく、「今日収穫したものを、今日すべて次工程へ流す必要があるのか」を見直すことです。

直販のように自分で作業工程を調整できる場合は、忙しいピークに人を合わせるだけでなく、動かせる仕事を別の日へ回すという方法も有効です。無理をしすぎると必ずどこかにひずみが生じてしまいます。


「来年も来てもらえる人」を増やす


ここまでの3つの「不足」の解決策は、いずれも農家自身で工夫できることで、作業する人を選ばず実践できるものばかりです。

ですが、短期アルバイトなどを利用している場合、毎年違う人では、収穫方法や園地、出荷手順などをその都度教える必要も出てきてしまいます。

そこでもうひとつ考えたいのが、採用人数だけでなく、翌年も来てもらえる常連の助っ人を何人つくれるか、ということです。

愛媛県のJAにしうわでは、温州みかんの収穫期に110戸以上の受け入れ農家に対して、全国から400名以上の季節アルバイターを受け入れており、毎年応募してくれる常連がいます。リピーターになってくれるかどうかは、受け入れ農家の対応次第。リピーターの紹介による新たな参加もあり、数年にわたり働きに来る人が増えているとされています。

JAのような大規模な仕組みを個々の農家がそのまままねることはできませんが、繁忙期の人材を「その年だけの人数」と考えず、関係性を維持するアプローチは参考になります。

一度経験した人であれば、翌年は説明時間も減り、任せられる作業も増やしやすくなります。



繁忙期の1日を3つの質問で振り返ってみよう


収穫シーズンの作業の外注を考えるとき、最初から「収穫を外注する」「選果を任せる」と大きな工程を任せようと構える必要はありません。

まずは、過去の繁忙期で特に忙しかった1日を思い出し、

  • どこで果実がたまったか
  • 誰の判断待ちが起きたか
  • 翌日に回せる仕事はなかったか

この3つを振り返ってみましょう。

「手数不足」なら人を増やす、「判断者不足」なら判断回数を減らす、「時間不足」ならピークをずらすと考えれば、外注に対する苦手意識も薄くなるはずです

そのうえで、外注を頼むことによって一番重視したい人の時間はどこかを考えると、自分の農園で本当に任せるべき仕事、必要な作業人員の人数が見えやすくなるでしょう。


急な人手不足に、まずは相談から!
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まずはどんな作業が依頼できるか、相談してみてはいかがでしょうか。
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参考資料
農研機構「果H09 JAながさき西海させぼ広域かんきつ部会(長崎県佐世保地区)|スマート農業実証プロジェクト」
農林水産省 中国四国農政局/JAにしうわ「産地間連携を軸とした県外アルバイター等労働力確保について」

【特集】果樹栽培のノウハウ集
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。