いま次々と登場する新しいブランド米、増えた理由とは?

スーパーやネットショップなどで、よく知らない名前のお米を目にしたことはありませんか? もしかしたらそれは「新ブランド米」かもしれません。

日本には「コシヒカリ」や「ササニシキ」などの聞き慣れた名前のお米の他にもさまざまなブランド米が存在し、その種類は年々増加しています。この記事では、新たなブランド米が登場している背景や理由について整理します!


新ブランド米は年にどれくらい増えている?

日本ではどのくらいのペースで新ブランド米が登場しているのでしょうか。詳しい話に入る前に、まずはブランド米の定義について確認しておきましょう。

ブランド米の定義とは


ブランド米という言葉には2つの意味合いがあります。

第一に、認知度が高く生産量も多い「品種」を示す場合。「コシヒカリ」や「あきたこまち」「ササニシキ」などがこれにあたります。

第二に、特定産地名とそこで栽培するのに適した特定品種名がひも付く「産地品種銘柄米」を示す場合。有名な「新潟県魚沼産コシヒカリ」の他にも、「佐賀県産さがびより」「熊本県北産森のくまさん」のような全国的にはマイナーでも実は高品質な銘柄米が多数あります。

この記事では、両方の視点をもってブランド米事情をひもといていきます。

稲の品種登録数は年間17品種前後


まずは第一の視点から。日本国内の稲の「新品種」はどのくらいあるのでしょうか。

「農林水産省品種登録データベース」で検索してみると、2020年に登録された新品種の稲(学名 Oryza sativa L.)は16種類。2018年から2020年までの3年間でみると52種類で、近年は年平均17種類程度が新品種として認められているようです。

ただし、これらの新品種の中には酒米や米粉用、飼料用など、さまざまな用途向けに開発された稲が混在しています。また、新品種を開発するだけで即ブランド米となるわけでもありません。

「食味ランキング」には毎年数銘柄が追加されている


そこで、第二の視点「産地品種銘柄米」に「食味ランキング」を加えて見てみましょう。

「食味ランキング」とは日本穀物検定協会が実施する産地品種銘柄米の食味試験です。対象となるには、その銘柄が道府県の奨励品種であることや作付面積が基準以上であることが条件となっているので、より生産実態に近いデータといえるでしょう。

2020年11月2日に公表された令和2年産米の食味試験対象産地品種は155銘柄。その中で、今回から新たに対象となったのは「富山県産富富富」「長崎県産なつほのか」の2銘柄でした。同じく、令和元年産米は156銘柄中1銘柄が、平成30年産米では155銘柄中5銘柄が新たに対象となっていました。

したがって、年ごとに差はありますが、年に数銘柄が新ブランド米またはその候補として登場していると考えて良いでしょう。

新ブランド米って必要なの?

年々少しずつブランド米が増えていく現状がわかりました。しかし、こんな疑問が浮かんできませんか?

「新ブランド米って本当に必要なの? コシヒカリがあれば良いんじゃない?」

日本には「コシヒカリ」に代表されるおいしいお米がすでにたくさんあるのに、なぜわざわざ新品種を作る必要があるのでしょうか。その理由を探るため、ひとまず半世紀ほど歴史を遡ってみましょう。

半世紀にわたるコシヒカリ時代


筆者の場合、身近にあるスーパーで新ブランド米を見た記憶がありません。実際には店頭に並んでいるのかもしれませんが、思い出せるのは「コシヒカリ」「ひとめぼれ」などのメジャーな品種名ばかり。

品種別の作付け実績を見てみても、令和元年産米作付面積はコシヒカリが全体の3分の1を占めており、その他の上位4品種はどれもコシヒカリの子や孫にあたる品種です。

令和元年産米の品種別作付動向(上位5品種)
上位5品種のうち、最新品種は主に北海道で生産されている「ななつぼし」で、それ以外は20世紀に誕生した品種です。現代の日本の米生産量は何十年も前に作られた品種に支えられていることがわかります。

▼コシヒカリについてはこちらの記事もおすすめ
「コシヒカリ」ってどんなお米? 特徴や産地のおすすめは?【お米の銘柄紹介】

時代と共に変化した米の価値観


1956年に誕生した「コシヒカリ」が日本の米の頂点に立ったのは、高度経済成長期を過ぎた1979年のこと。この前後の時期は日本の米を語る上でも重大な転換期となりました。

1960年代までの日本では、米の自給を目標として国が米の生産と流通を管理し、安定して多くの収穫量を得られる品種が優先して栽培されていました。ところが、1967年に米の自給を達成すると状況は一変。1970年代には過剰米の対策が必要になり、減反による生産調整や自主流通米制度が始まりました。

米の需給が逆転し、市場が米を選ぶことができるようになると、以前は安定・多収が良しとされてきた米の価値観は、品質・食味優先に変化していきました。1979年、前年まで9年連続で作付面積1位だった多収品種「日本晴」が2位に転落。王座を奪った「コシヒカリ」は、以来40年以上もの間順位を譲らず、今や「おいしいお米」の基準となるほどの一時代を築いています。


コシヒカリばかりではいけない理由

近年の日本の米の歴史を少し知るだけでも、「コシヒカリ」という品種のすごさを感じることができますね。それと共に、「こんなに優れた品種があるのに新ブランドって必要なの?」という疑問は強くなったかもしれません。

しかし、コシヒカリばかりではいけない理由は明確にあります。それは、40年前に「日本晴」から「コシヒカリ」への転換が起きた理由と同じく、「米あまり」の結果作られた品質・食味重視の買い手市場にあります。

解決しない「米あまり」


1970年代から現代まで、日本では「米あまり」が続いています。むしろ現代の方が、パン食や健康志向の食生活や少子化の影響を受けて「米あまり」に拍車がかかっているともいえます。

市場はますます買い手優位になり、高品質・良食味があたりまえに求められるようになりました。産地間競争は激化。同じ品種ならより有名な産地のものが選ばれ、知名度で劣る銘柄米は価格下落を免れません。そうした競争を生き抜くために、各産地が独自ブランドを開発する必要性が増しているのです。

つまり、新ブランド米登場の背景には「米あまり」があります。もちろんその他の理由もあり、下記に説明しますが、それらの根本には「買い手優位の市場で各産地が競争を生き抜くため」という前提があるのです。

気候変動リスク分散


新ブランド米を育成する目的として次に大きなものが、気候変動への対策です。

近年は全国的に記録的猛暑となる年が続き、米が熟す時期の高温で米の品質が悪化することが問題となっています。また、局地的にはゲリラ豪雨や台風被害なども問題となっています。

「コシヒカリ」などの何十年も前の気候に適した品種だけを作っていては、気候変動の影響による品質低下で産地間競争に負けるばかりか、産地全滅ということにもなりかねません。そこで多くの産地が、高温に強かったり、倒伏しにくかったりという特徴を持ち、かつコシヒカリ並においしい品種の開発に取り組んでいます。

栽培を効率化し生産コストを下げる


栽培の効率化も新ブランド米育成の理由になります。

農業の担い手は年々減少を続けています。農林水産省が発表した「2020年農林業センサス結果の概要」によると、令和2年2月1日現在の農業を主な仕事とする「基幹的農業従事者」は136万1000人、平均年齢は67.8歳となっており、これまでよりも手間をかけずに栽培・収穫ができる品種の重要性は年々増していると考えられます。

病虫害に強く農薬散布作業を少なくできる品種や、従来品種と田植えや収穫時期をずらすことで作業を分散できる品種、田植えの要らない直播品種なども育成されています。

また、日本のお米は内需が大きい一方で、国際的にみると生産コストが高く、価格競争力が低いといわれています。栽培が効率化されなおかつ日本米のおいしさを兼ね備えた新品種が生まれることは、国産米の輸出増にもつながるのです。


新ブランド米を応援したい

「お米の新ブランド登場」というようなニュースを見たとき、以前の私は、それをお菓子やスマホの新商品リリース情報と同じようにとらえていました。しかし、新ブランド米登場の背景を追ってみた今は、お米の新ブランドには商業的な話題作り以上の大義があると考えています。

私たちの主食であるお米は日本にとって最重要の食糧であり、新品種開発には長い年月がかかります。半世紀以上前に生まれた「コシヒカリ」が現代の食を支えていることを考えると、新ブランド米開発には10年先、いや、30年先の未来を見据えた視点が必要なのだと思います。

今度、もしもお米売り場で新ブランド米を見かけたら、1袋買って食べてみてはいかがでしょう。それは、私たちの未来の食をつくる育成者を応援することにつながるはずです。

どんなブランド米があるの?


最後に、一例としてブランド米をいくつかご紹介します。気になるお米があったら、ぜひ食べてみてくださいね。

●新潟県産 こしいぶき


新潟県で「コシヒカリ」以外の品種をつくるために開発された「こしいぶき」。高温や冷害にも強く、安定した収量を確保できるので、生産者にとってもうれしい品種です。

「コシヒカリ」のおいしさを受け継ぎながらも、あっさりとしている食味が人気です。

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●福島県産 天のつぶ


福島県で、食味が良好な品種を目指して15年かけて開発されました。稲が倒れにくい、病気に強い、収量が多いなど、生産者が作りやすい特徴も持っています。

「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」の系譜で、同等のおいしさをもっています。

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●青森県産 まっしぐら


「青天の霹靂」や「つがるロマン」など有名なブランド米が多くある青森県。その中でも、県内での作付面積が最多のお米が「まっしぐら」です。青森県の気候に合わせて、県内全域で栽培できるように開発されました。

粘り気が少なくあっさりとした味わいで、しっかりめの粒感と適度な弾力も楽しめます。

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●青森県産 つがるロマン


「つがるロマン」は、青森県で高品質なお米の安定生産を目指して誕生しました。農薬や化学肥料の使用を抑えたお米を栽培する「青森クリーンライス」としても栽培され、農薬節減米や特別栽培米が登場しています。

味や粘りのバランスが良く、あっさりとした食べやすいお米です。

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●石川県産 ひゃくまん穀


石川県で9年かけて開発されたお米です。「コシヒカリ」よりゆっくり育つ晩生品種のため、農家にとっては農作業が分散できるなどうれしい面も。

「コシヒカリ」と比べて米の粒が大きく、食べ応えがあります。

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●宮城県産 ひとめぼれ


宮城県で耐冷性をもつ品種を目指して開発されたお米です。栽培のしやすさから、品種別国内生産量は「コシヒカリ」に次ぐ第2位となり、全国で作付けされています。

甘みや粘り、香り、つやなど、すべてのバランスが良く、どんな料理にも合うオールマイティーなお米です。

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●にじのきらめき


国の研究機関である農研機構が開発したお米です。稲が倒伏しにくく病気にも強いためニーズが上がっており、各地で産地品種銘柄への申請が進んでいます。

「コシヒカリ」と同等のおいしさで、名前の通りツヤのある美しい炊きあがりも魅力です。

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●ミルキークイーン


粘りが強く、もちもちとした食感が特徴の“低アミロース米”の代表格です。多様化した消費者ニーズに対応すべく、農林水産省が新しいお米の開発を目指して行った「スーパーライス計画」で誕生しました。

他の品種にはない、もち米のような強い粘り気があり、一度食べると虜になる人が多い品種です。

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農林水産省品種登録データベース
http://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM110.aspx?MOSS=1
令和元年産 水稲の品種別作付動向について
https://www.komenet.jp/pdf/R01sakutuke.pdf
2020年農林業センサス結果の概要
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/attach/pdf/index-1.pdf


■各地のブランド米も選べる! 安心・おいしい「スマート米」

全国各地のこだわりの農家さんと、スマート農業でお米づくりをしている「スマート米」は、先進のIT技術を利用し、農薬や肥料の使用量を最小限に抑えて育てたお米です。

特別栽培米や残留農薬不検出のお米も。各地のおいしい銘柄をラインナップしています。

白米と同じように手軽に炊ける「無洗米玄米」もあります。

お求めはスマート米オンラインショップ SMART AGRI FOOD  からどうぞ。

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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。