たったこれだけ!おいしくごはんを炊くコツ4つ【年間400種のお米を楽しむライター柏木の「お米沼にようこそ」 第5回】

お米ライターの柏木智帆です。

これまでお米の炊き方についてさまざまな発信をしてきましたが、手順が細かいと「なんだか面倒だな」と思われてしまうだろうなと思っていました。

そこで、今回は意を決し、さまざまな情報を切り捨て、最低限「これだけは!」というポイントに絞っておすすめの炊飯方法をお伝えします。

「必ずこうすべき」ではなく、「こうすればより美味しく」という提案ですので、現状の炊飯で満足している方はその炊飯を貫いていただき、「どうもおいしく炊けない」「もっと別の炊き方はないか」と思っている方は参考にしていただけたらうれしいです。

お米の冷蔵保管はおいしいごはんの大前提


これだけはやってほしい・その1「保管」


炊飯の前提は「お米が新鮮であること」。そのためには、お米の「冷蔵保管」と「適量購入」が大切です。

具体的には、「お米を購入したら密閉容器に入れて冷蔵庫へ入れること」と「2週間ほどで食べ切れる量を買うこと」をおすすめします。お米を密閉する理由は「匂い移り」「乾燥」「水濡れ」の防止で、冷蔵庫に入れる理由は「酸化」「劣化」の防止のためです。

ジッパー付きビニール袋やパスタケースなどで冷蔵庫にお米を保管している様子
白米の場合、お米の脂質や、精米時にお米の表面に付着した糠の脂質が空気に触れることで、酸化が進みます。保管温度が高いと酸化は顕著です。

玄米の場合は生きていますから、保管温度が高いと呼吸が活発になり、お米のデンプンが分解され、劣化が進みます。また、冷蔵庫で保管していても保管期間が長期にわたると、糠に含まれる脂質が酸化していきます。

酸化が進むと、いわゆる「古米臭」が発生したり、ツヤや粘りが薄くなったりします。

お米は水分含有量が15%ほどに乾燥されているので「乾物」と思われがちですが、こうして見ると、実は「生鮮食品」……とまではいかずとも、「半・生鮮食品」と言えそうですよね。

お米に水を吸わせる一手間が味わいを変える


これだけはやってほしい・その2「吸水」


炊飯前にお米に水を吸わせる工程も、ごはんの炊き上がりを大きく左右します。

おすすめは、冷水でお米を洗った後に冷蔵庫の中でお米に水を吸わせてから、土鍋などのガス炊飯道具か、炊飯器「早炊きモード」で炊く方法です。

冷蔵庫でお米に吸水させている様子
ここで大切なのは、水が冷たいことです。

お米を洗ったり吸水させたりするときに温かい水を使うと、お米の表面が損壊しやすく、お米によっては炊き上がりがベタつきやすくなります。また、温水に浸したお米は加熱時に沸騰までの時間が短くなりやすいこともあり、炊き上がったごはんは甘味が出やすいものの、冷めると粘りが薄くて硬く、ぼそぼそとした食感になりがちです。

お米に吸水させる時間は、真冬の水道水や冷蔵庫に入れた水など10度以下の冷水なら6時間以上、15度ほどの冷水では最低でも2時間以上は必要です。真夏に水道水の温度が20度を超える場合は、お米の洗い始めと吸水(炊飯)に使う水を冷蔵庫で冷やしておくと良いでしょう。

冷蔵庫でお米に吸水させるメリットは、「温度を一定の低さに保てること」「お米のすみずみまで水が行き渡ること」「沸騰までの時間が長いこと」です。

吸水速度は短時間で見ると、冷水よりも温水のほうが早いですが、長時間で見ると、冷水のほうが吸水量は多くなり、お米の細胞のすみずみに水が行き渡ります。すると、水は熱伝導の役割があるため、お米の芯まで熱が入り、ふっくらと炊き上げることができるのです。

吸水させずに炊いてしまうと、加熱中の吸水と熱伝導が不十分になって炊き上がりが硬くなり、粘りや味などお米本来のポテンシャルを出し切ることができなくなってしまいます。

沸騰までの時間を長く確保する理由は、加熱後にお米に水が浸透しないうちに沸騰してしまうと炊き上がりが硬くなってしまうから。逆に、沸騰までの時間が長すぎて沸騰前にお米が水をほぼ吸ってしまうと、水がなくなって沸騰できないため、いわゆる「めっこめし」(東北地方などの方言で「芯が残ったようなべちゃっとしたごはん」)になってしまいます。

土鍋などガス炊飯をする際、最初は強火〜中強火で、沸騰までの時間が8〜9分ほどになる火力に調整するとベストです。

炊飯器の場合、「普通炊飯モード(白米モード)」で炊くと温度を上げて吸水させるところから始まりますが、冷蔵庫ですでに吸水は完了しているので「早炊きモード」を選びます。

夕食のお米は朝の外出前に洗って冷蔵庫へ、明日の朝食のお米は就寝前に洗って冷蔵庫へ、といった日々の“炊飯リズム”ができれば意外と簡単です。炊飯器の機種や炊飯量にもよりますが、たとえば朝のうちに冷蔵庫で吸水しておけば、帰宅後すぐに早炊きモードを使って30分程度で炊き上がるので便利です。

冷蔵庫にスペースがない! という場合は、平たいタッパーなどなるべく場所をとらない容器を使うのはいかがでしょうか。

「蒸らし」からの「飯切り」も味を左右する


これだけはやってほしい・その3「蒸らし」


ガス炊飯で消火したら、あるいは、炊飯器の早炊きモードで炊飯終了の合図が鳴ったら、すぐにふたを開けずにそのまま10分ほど蒸らします。普通炊飯モードは蒸らし時間も含まれていますが、早炊きモードには含まれていないからです。

蒸らし前、お米はまだ芯がある状態です。蒸らしによって、お米に仕上げの熱が入り、お米の表面に残った水も吸われます。そのため、蒸らしを行わないと、水っぽく、ツヤや粘りが薄く、芯が残ったようなごはんになってしまいます。

これだけはやってほしい・その4「飯切り」


「飯切り」も大切な工程です。蒸らしが終わったらすぐにふたを開け、しゃもじで釜の側面からごはんをぐるりと剥がし、天地返しをしながら、空気に触れさせるようにごはんをほぐしていきます。ごはんには多かれ少なかれ炊きムラが出ますが、これをすることで、余分な水分を飛ばしつつ炊きムラをなくします。

蒸らし後にそのまま放っておくと、ごはん粒同士がくっついてしまったり、べたついたりするなど食感を損なってしまいますので大切な工程です。


以上、「保管」「吸水」「蒸らし」「飯切り」に絞ってお伝えしましたが、いかがでしょうか。

これでもまだ「ちょっと面倒だわ!」と思われるかもしれませんが、ほんの少しの手間でごはんが美味しく炊ける喜びをみなさまと共有できたらうれしいです。

柏木智帆
米・食味鑑定士/ごはんソムリエ/お米ライター
神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。

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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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