【SMART AGRI×AGRI PICK連携企画】月々1000円から導入できる営農管理サービス 3選

農作業や経営状況の「見える化」が「稼げる農業」の第一歩

スマート農業」はドローン、AI、IoTといったさまざまな技術を用いた農業だ。そのため、農作業を便利にする農機具やセンサーといった機器をイメージする人が多いだろう。

しかし、スマート農業にはもうひとつ、データを蓄積して作業時間や収益を振り返るための「営農管理」という分野がある。自分たちの作業を記録したり、社員やアルバイトの作業内容と時間を管理すれば、より効率的な働き方改革もできるし、作業時間やコストを分析して収益を上げるための施策につなげることもできる。

特に最近は、近隣農家の離農や引退により1軒の農家が担う農地自体は増え続けている。繁忙期以外でも社員やアルバイトを雇用することも今後は増えていくだろう。さらに、ASIAGAPやグローバルGAP、有機JASなどの認証を得ようとすれば、日々の営農記録をつけ、自分たちの作業、コスト、生育状況を見える化することは、すべての農家にとって必須作業となる。

そこで今回は、気軽に導入できて作業内容なども管理しやすい、営農管理サービスをご紹介する。いずれもスマホから作業内容を簡単に入力でき、PCなどで内容を参照できるので、従業員はスマホで、農家側はPCでといったかたちでの管理も可能だ。

選択肢を選ぶだけの簡単操作「Agrion農業日誌」

出典:TrexEdge

2017年4月からサービスがスタートした「Agrion」は、栽培工程や圃場の移動、営業など、いつどこで誰が何をしたのかを記録し、農業経営を支援するスマートフォンアプリだ。

最初に、圃場の場所、具体的な作業内容、栽培している作物、農薬や肥料などの資材、そして農機といった自分の環境を登録してしまえば、日々の作業はこれらを選択するだけでいい。


入力作業もいたってシンプル。作業を行う前に作業する圃場を選び、行う作業を選択し、作業者の名前を選ぶといった感じで、アイコンをタップしていく。あとは作業を行って、終わったら終了させることでその時間を記録できる。

インターフェースはアイコン中心で、選択肢を選ぶだけなので、年齢問わず誰もが触れやすい点も農家にとってはうれしいところだ。

管理者側は、誰がいつどんな作業をしたかを閲覧できるほか、その作業に対してコメントや写真を追加してアドバイスなどを入れることもできる。この機能もスマホで利用できるが、画面が大きいPCであればより多くの情報を確認可能になる。さらに、グラフ形式で作業時間やコストを集計してひと目で確認することもできる。

また、登録した台帳データをCSV形式でダウンロードしたり、作業期間や圃場を指定してレポート出力する機能もある(有料機能)。

料金は2019年10月1日より改定となる予定で、圃場の規模や記録を記入する人数=アカウント数、利用できる機能に応じて月額980円/1980円/2980円の3つのプランを用意(いずれも税別)。もちろん、個人農家向けに機能を絞った無料版(5アカウントまで、20圃場まで、スマホアプリ版のみ)もあるので、気軽に試せる。

ちなみに、作業を記録/参照する「Agrion農業日誌」のほか、伝票作成や注文・売上管理などを会計ソフトと連動できる「Agrion販売管理」、1本ずつの果樹の管理に特化した「Agrion果樹」、販路支援までIT化できる「Agrion産直市場」といったサービスも用意されている。



JGAP/ASIAGAP認証の取得を支援「アグリノート」

出典:ウォーターセル

「アグリノート」は、一般社団法人日本GAP協会からJGAP/ASIAGAPの認証取得を行うための推奨システムに認定されている、営農管理サービスだ。

操作自体は、スマホやタブレット、PCなどで航空写真をベースとした圃場マップから自分の圃場を選択して、作業内容を記録していくだけ。スマホやタブレットに内蔵のカメラを使って現場の写真などもアップロードできるので、状況の把握や振り返りにも活用できる。


各種GAP認証を取得するためには、かなり細かな情報も入力していく必要があるが、そもそもそれらが工夫されている仕組みなので、あとから書類を作ったりコンサルタントに入ってもらうよりもかなり割安になるはず。同時に、きちんと入力さえしていれば、コスト管理や収支管理などを行う際にも役立てられる。

しかも、運営元の社内にはJGAP指導員が常駐しているので、どのように記録すれば効率よく認証を取得できるか理解している点も強みだ。

料金は、1アカウントあたり年額6000円、月額に直すと500円ほどとかなりリーズナブル(税別)。1アカウント追加するごとに追加で500円がかかる。現在は2カ月間、無料お試し期間もあるので、まずは実際に触ってみてほしい。

ちなみに、アグリノート自体を操作する(記録する)人がひとりだけであれば、アカウントも1名ぶんだけでOK。ただし、社員ごとに作業内容を把握したいといったケースでは、個別にアカウントを持たせた方がいいだろう。


同じような農家と情報交換「畑らく日記」

出典:イーエスケイ

「畑らく日記」は、専業の農家や農業法人から、家庭菜園でガーデニングを楽しむ人たちまで、土いじりを楽しむあらゆる人に向けた栽培記録サービス。全国で5000名以上の営農者が利用している。

利用者情報や圃場、作物、作業内容、単位などを登録し、日々の作業はスマホなどでその場から登録可能。栽培履歴一覧からは過去の状態も参照できる。

そして、なんといってもスマホアプリならではの機能が、「みんなの日記」だ。「畑らく日記」ユーザー同士で作業内容などを共有できるというもので、同じような時期や環境で作物を育てている人同士での交流なども生まれる。一方的な配信だけでなく、コミュニティの活性化にも使えるかもしれない。

料金プランは、個人利用、つまりひとつのIDだけで使用する場合については、すべての機能を無償で利用できる。iPhone/Android両方のアプリが提供されており、日時や圃場、作物ごとの作業内容の登録、写真記録、音声アシストによる入力といった基本的な記録機能のほか、「みんなの日記」での共有機能、Twitter/Facebookとの連携なども可能だ。

また、アプリでIDを登録するとPC側からも利用可能になり、PCでは栽培履歴の追加/削除や履歴参照、圃場や作物、作業内容などの辞書編集、栽培履歴のCSV形式でのダウンロード(PCのみ)、4年カレンダー機能、気象データ付与といった機能を利用できる。すべて無料とは思えない充実ぶりだ。

さらに、農業法人などで利用する場合には、社員それぞれがIDを作成し、それらのID情報をひとつの法人でまとめて管理できる法人向けの有料プラン「畑らく日記Pro」も設定している。こちらは1ユーザーあたり月額200円で、最小5ユーザー=月額1000円の申し込みが必要となる(税別。支払いは年額を一括払い)。Pro版については今後、出荷業務やトレーサビリティ管理などの機能も追加される予定だという。


まとめ

少し前までの営農管理アプリというと、多機能すぎて記録すること自体が難しかったり、入力の手間がかかるなど、農家が必要とする機能や使いやすさを考えた入力方法が実現されていなかった面も大きい。

その点、今回紹介した3つのサービスは、いずれも農家と共同開発したり、農家の声を聞きながら開発してきたサービス。過去にパソコンのソフトとして営農支援サービスを導入してうまくいかなかった人でも、スマホの気軽さと入力の簡単さを一度体験すれば、その便利さを感じていただけるだろう。

これを機会に、肩肘張らずに簡単に、農業経営をあらためて見直すきっかけにしていただければ幸いだ。

<参考URL>
Agrion(アグリオン)- クラウドで農業経営をサポート -
アグリノート | ITの力で農業経営やJGAPなどGAP認証の取得を支援します
無料で使える農業スマホアプリ「畑らく日記(はたらくにっき)」

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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