鹿追町のタマネギ生産におけるロボット化の意義と課題【特集・北の大地の挑戦 第3回】

北海道の十勝地方でいまタマネギの生産が拡大している。作付面積は2013年に406haだったのが、2018年には685haに達した。

背景にあるのは業務・加工用の需要の拡大。それに応えるため、今後も増産していくにはやはり人手の不足が課題になる。

9月に鹿追町で開催された実証試験ではタマネギのロボットも披露された。単に無人化するだけではなく、人手を省くために作業体系も変える狙いがある。

オニオンピッカーとトラクターを無人化

十勝地方でのタマネギの生産におけるロボット化の意義と課題を理解するために、まずは機械収穫の行程を抑えておきたい。

最初に、根切り機で根を切断する。これをしないと玉が変形したり外皮が薄くなったりするからだ。そのまま玉を2週間ほど畑に放置した後、乗用型のオニオンピッカーで拾い上げていく。

オニオンピッカーでは、茎葉の処理から選別、鉄製コンテナ(以下、鉄コン)への収納までをこれ1台で行う。オニオンピッカーには操縦席に一人のオペレーターがいるほか、拾い上げた玉が搬送されてくる後部の作業場に玉を選別するため 4人の補助員が乗るようになっている。


今回の事業では、以上の作業のうち、オニオンピッカーに加えて、それと伴走するトラクターの無人化を目指している。通常だとオニオンピッカーは単独で走るわけで、なぜトラクターを伴走させるかは後述する。

9月半ばに開催された実証試験の現場となったのは、大規模な畑の中の小さな片隅。注目したのはオニオンピッカーが人と同じように仕事を正確にこなせるかどうかだ。

オニオンピッカーは「ダーッ」という音を鳴らして、無人のままゆっくり走りながらタマネギを拾い上げていく。それとほぼ同時に、向かって左隣のロボットトラクターもまた、操縦席に人が乗っていないまま伴走を始める。その後部には台車を装着していて、空の鉄コンをいくつも積み重ねている。

オニオンピッカーは複数のカメラで畑にある玉の位置を検出すると同時に傷の有無を確認。商品となりうる玉だけを拾い上げ、残りは畑に残していく。結果、作業台の補助員による選別を不要にする。


選別した玉はベルトコンベアーの搬送部を通じて、トラクターの台車に載った鉄コンに入り込んでいく。ただ、作業を始めて数分で止まってしまった。

現場を案内した立命館大学の学生や十勝地方の農業改良普及センターの職員の話によると、搬送部にタマネギの茎葉が詰まったという。今回は直播をした畑だった上、7月の天候不順で生育が遅れており、茎葉が枯れ切っていなかったそうだ。そのため搬送部に絡まったのではないかという。もちろんこれは、今回の研究開発の問題ではないことを言い添えておきたい。

ちなみに、直播にしているのは加工・業務用だから。これらの用途では海外産に押されており、国産が市場を奪還するためには低価格化が求められているのだ。


狙うは収穫から搬出までの無人化

ところで先ほど述べた通り、既存の作業体系ではトラクターが伴走することはない。オニオンピッカーには鉄コンが搭載されており、補助員が選別して問題ないとされた玉だけがそこに自動的に入るようになっているからだ。鉄コンは満杯になるたびに畑に放置されていく。北海道の畑作地帯を回ると、一枚の畑にいくつもの鉄コンが規則なく並んでいる様子をあちこちで目にする。

では、今回の事業ではなぜ、無人のトラクターを伴走させながら鉄コンを運ぶ役割を担わせるのか。答えは「人手を省くこと」にある。

既存の作業体系の通り畑に鉄コンを放置しておくと、後でトラクターが回収に向かわなければいけない。無人のトラクターが無作為に置かれた鉄コンを探し出し、拾い上げ、畑の外に持ってくるのは現在の技術では難しい。

代わって今まで通りに人が操縦できればいいが、本連載で何度も述べたように十勝地方はとにかく人手が足りないし、今後さらにそれが深刻になる。そこで本事業では、収穫と同時にトラクターで鉄コンを畑の外まで搬出してしまおうとしている。


さて、気になっていた作業の精度はどうだったかといえば、改良の余地があるようだった。というのも腐った玉まで拾い上げ、鉄コンに入れていたからだ。農業改良普及センターの職員によると、「腐った玉の中には外観だけでは識別できず、さわってみないとわからないものがある。人であればさわればすぐに気づくが、カメラはそこまで判別できていないのだろう」という。


数分でセッティングが完了するドローン

実証試験ではこのほか、株式会社エンルートが改良版のドローンを披露した。注目は「飛ばすまでの準備にかかる時間を、従来機が10分だったのに対し、1〜2分に短縮できるようにしたこと」(同社)。

改良点のひとつはプロペラ。従来機はわざわざプロペラを取り付けなければいけなかったのに対し、最新版は折り畳み式にしたことで組み立てや格納をしやすくなった。これによりコンパクトに収納できるので、軽トラックの荷台にも容易に積載できる。

改良点のふたつ目は液剤タンク。まず蓋の脱着を簡易にした。加えて薬剤の補充や洗浄がしやすいように口周りの大きさを1.3倍にした。

改良点のみっつ目はバッテリー交換の簡易化。

このほか離着陸を簡単にするため、ボタンを押すだけで

「離陸するときと着陸は運転でいうとアクセルの踏み加減が難しい。強風の日などは離陸着陸で事故が起きやすい。たとえば機体が横転したりとか、垂直に降りられず、斜めに着陸したりとか。スロットルというアクセルの力加減で変わってしまう。一方、最新型はボタン一つで離着陸を安定してできる。安全に自動で離着陸ができる」

実証試験では従来機と2台を用意して、準備にかかる時間の違いを披露した。改良版は確かに2、3分で済んでいた。

以上、鹿追町での加工・業務用向け野菜に関するロボットの実証試験の様子を2回にわたって紹介した。総じていずれのロボットも完成度はかなり高いように受け止めた。とはいえ人が選別する場合と比べて、どうしても傷物や腐敗物が混ざるのが課題と受け止めた。

気になるのは産地や実需がそのことをどう感じたのか、だ。ひいては国産野菜の振興という目的に向けて、産地と実需が新たな協議を重ねることが要求されているように思う。次回はそのことを考えていきたい。


【特集】北の大地の挑戦~スマート農業の先進地にみる可能性と課題
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WRITER LIST

  1. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  2. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX(現在登記準備中)を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  3. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  4. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  5. 藤本一志
    ふじもとかずし。大学・大学院の6年間を通して地域づくりと農業の活動に関わる。1年間のサラリーマン生活の後、学生時代から活動していた地域に移住し、2拠点居住を開始する。移住支援を通じた地域づくり活動に取り組む傍ら、兼業農家として稲作に取り組む。